長野県松本市

黄金色に彩られる秋の上高地を歩く旅

2022.08.23

秋、カラマツが黄金色に染まり、壮大な自然の造形美を見せてくれるのが長野県松本市の上高地です。「特別名勝」と「特別天然記念物」という2つの称号を持つ、まさに日本の宝。雪を頂く秀峰・穂高(ほたか)連峰と清冽な梓(あずさ)川、錦に染まる木々たちの共演は一度見たら忘れられない風景です。秋真っ盛りの上高地を、ふるさとLOVERナビゲーターの斎藤がご案内します。

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1日目

  10:00 標高1500m、手付かずの自然が残る山岳リゾートを歩く

写真提供 / 松本市
写真提供 / 松本市

上高地は長野県西部に位置する、標高1500mの山岳リゾート地。手付かずの自然が数多く残る大自然の宝庫には、年間約120万人が訪れます。例年は10月中旬から下旬が紅葉のピークで、とくにカラマツの黄葉は上高地ならではの絶景です。

旅は長野自動車道松本ICから国道158号を進んで約1時間、上高地の玄関口である沢渡(さわんど)駐車場からスタートです。上高地は自然保護を目的にマイカー規制が通年行われているため、ここからバスに乗り換え。山あいにある駐車場周辺の木々もほんのり色づき、上高地の紅葉に期待が高まります。

今回は「大正池(たいしょういけ)バス停」で下車。約4km先にある河童橋まで散策路を歩きます。バス停から徒歩1分、雪化粧をした穂高連峰が目の前にそびえ、大正池がその勇姿をくっきりと水面に映します。上高地の代名詞ともいえる大正池は、焼岳(やけだけ)の噴火により梓川がせき止められ、一夜にして姿を現したそうです。立ち枯れた木々や山々を映す水鏡の美しさに思わず感嘆の声がもれます。

大正池から梓川の清流を眺めつつ、歩くこと25分。今回、どうしても訪れたかった「田代池(たしろいけ)」に到着しました。田代池も大正池と同様、堆積物などの影響で年々小さくなり、現在は「池」というよりちょっと広い浅瀬といった感じです。

池の中にある小さな島で黄葉する木々、澄んだ水が映し出す空や木々、田代池を見下ろすようにそびえる穂高連峰…光を浴びて輝く風景はまさに一幅の絵画。派手さや力強さではない、繊細で包み込むような穏やかさを持つ田代池を愛していたのは、上高地を世界に広めた日本近代登山の父、ウォルター・ウェストン。上高地を離れる日の最後にも訪れていたそうです。

もし、晩秋に上高地を訪れるのであれば午前9時少し前がおすすめです。日の出前、木々は霧氷に包まれ、静寂な世界が広がっていますが、東側の山あいから光が射し込んだ途端、霧氷が溶け木々が一斉にキラキラと輝きはじめます。瞬きするのも惜しいほど、一瞬で変化する風景。まるで生命が生まれる瞬間に出会ったような、心を震わせる光景です。

田代池を出発し、穂高連峰や紅葉を眺めながら梓川に沿って河童橋を目指します。雄大な景色はもちろんですが、上高地の大きな魅力の一つが抜群の透明度を誇る梓川です。川底の藻や石がはっきり見えるだけでなく…なんと!イワナが悠々と泳いでいるのを発見。途中、サルの大群に遭遇するなど、大自然の懐の深さに驚きの連続です。

写真提供 / 松本市
写真提供 / 松本市

田代池から1時間ほどで河童橋に到着です。木製の吊り橋、河童橋は上高地のシンボル。橋の上は、雪を被った穂高連峰を眺めることができる、とっておきのビュースポットです。

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スポット名

上高地

住所

長野県松本市安曇上高地

URL

https://www.kamikochi.or.jp/

  13:00 五千尺キッチンで松本名物「山賊定食」のランチ

写真提供 / 五千尺キッチン
写真提供 / 五千尺キッチン

ランチは河童橋と穂高連峰を望む絶好のロケーションにある五千尺キッチンで、松本名物「山賊定食」を注文。特製の秘伝ダレに漬け込んだ鶏肉をじっくりと揚げた後にオーブンで焼くという手間をかけた一品です。

想像以上にボリュームたっぷりの鶏肉は、外側がカリっとしていながら中身は柔らかくてジューシー。あっという間に完食です。カウンター席からの眺めも絶景で、心もお腹も満たされました。

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施設名

五千尺キッチン

住所

長野県松本市安曇上高地4468

電話番号

0263-95-2111

営業時間

11:00〜15:00

休業日

無休(上高地閉山中は休み)

  15:00 散策後、トワサンクでアップルパイを購入

河童橋を拠点に、さらに1時間ほどの明神池(みょうじんいけ)へ散策するもよし、周辺でお土産探しをするもよし。お店やホテルが集まる河童橋は、楽しみ方もさまざま。今回は河童橋すぐのカフェテリア「トワサンク」で上高地名物「アップルパイ」を購入しました。

信州産のふじりんご100%使用したアップルパイは見た目も味もインパクト抜群です。「りんごそのものの美味しさを味わっていただきたいので、クリームやカスタードなど余計なものは一切入れていません」と話すのは、同店の藤原崇宏(ふじわらたかひろ)専務。その言葉通り、まるでりんごを丸ごと食べているような味と香りです。アップルパイをテラス席でいただくのもおすすめ。澄んだ空気の中で味わうアップルパイは格別です。

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施設名

トワサンク上高地店

住所

長野県松本市安曇上高地4468

電話番号

0263-95-2221

営業時間

9:00〜16:00

休業日

無休(上高地閉山中は休み)

  17:00 松本城内にある「松本丸の内ホテル」に宿泊

大自然をたっぷり満喫した後は、松本市街地へ向かいます。それまでの景色とは一変、凛とした佇まいで圧倒的な存在感を誇る松本のシンボル、松本城が見えてきました。今回、宿泊するのは全国でも珍しい、松本城内にある「松本丸の内ホテル」。松本城本丸の正門から徒歩2分、大名通り沿いにある石目地の外壁が目を引く洋館がホテルのウェディング・レストラン棟です。

写真提供 / 松本丸の内ホテル
写真提供 / 松本丸の内ホテル

このウェディング・レストラン棟は、1937年に旧第一勧業銀行ビルとして建設され、現在は登録有形文化財になっている歴史ある建物。うれしいことに、ここが宿泊者の朝食会場になっています。高さ9mのアーチ型の窓や豪華なシャンデリアが配された豪華な会場で、長野名物「おやき」や信州味噌、地元養鶏場の卵など、信州の食材を多用したビュッフェ形式(季節によって変動あり)の朝食をいただき、元気をチャージします。

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施設名

松本丸の内ホテル

住所

長野県松本市大手3-5-15

電話

0263-35-4500

2日目

  11:00 天然醸造にこだわる「石井味噌」で蔵を見学

ホテルを出発し、「長野県といえば信州味噌が有名!」ということで散策がてら味噌蔵が見学できる「石井味噌」へ。天然醸造法で昔ながらに作られた信州味噌を製造している石井味噌は、1868年(慶應4年)創業という長い歴史を持つ味噌蔵です。早速、蔵元6代目の石井康介(いしいこうすけ)さんに味噌蔵を案内していただきました。

「この桶につく酵母が私たちの財産です」と石井さんが見せてくれたのは、味噌蔵にずらりと並ぶ杉桶。“桶付き酵母”が増殖して発酵し、味噌本来の深い味と香りを醸してくれるとのこと。「じっくり熟成させた本物の信州味噌を味わってもらいたい。だから私たちは3年味噌にこだわるんです」と石井さん。

実際に味噌汁を試食させていただくと…見た目は濃い色なのに、しょっぱくなくてまろやかな味わいにびっくり。石井味噌では直売所も併設しているほか、お味噌汁の試飲、ランチも提供。味噌の魅力をたっぷり味わうことができました。

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施設名

石井味噌

住所

長野県松本市埋橋1-8-1

電話番号

0263-32-0534

営業時間

9:00〜17:00

休業日

年末年始

 

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

上高地の大きな魅力の一つは、表情の豊かさにあります。雪をまとう穂高連峰の威容、一つひとつ色が異なる木々の葉。そして、なんといっても梓川です。大正池から河童橋までの梓川の表情は、驚くほど変わります。木々を水面に映しながらそよそよと流れたり、水しぶきを立てて豪快に流れたり…。目を見張るほどの透明度を持つ梓川が、自然の営みの素晴らしさを教えてくれることでしょう。

地域ナビゲーター

斎藤 里香

関東支部 ふるさとLOVERSナビゲーター
斎藤 里香

群馬県在住。北関東と埼玉を中心に取材・執筆活動をしています。いろいろな「コト」や「モノ」に携わっている人々の“代弁者”として、頑張っている姿や魅力、人々の思いなどを少しでも多くの人たちに伝えられたら嬉しいです。