千葉県浦安市

庶民の生活を支え続ける元町の個人商店

2023.05.10

日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介するコーナー。今回は、地域ナビゲーター「千葉県密着フリーペーパー『ちいき新聞』編集部」に、元町の個人商店をおすすめいただきました。

魅力的な老舗が残る「元町エリア」

千葉県の北西部に位置する浦安市。大型テーマパークを有し、国内外問わず多くの人が訪れることで有名ですが、海と川に囲まれた浦安市はかつて漁業の町として栄えていました。昭和46(1971)年の漁業権全面放棄を契機に急速に開発が進み、現在は都心のベッドタウンとして発展を続けています。

そんな浦安市で「ちいき新聞」編集部がおすすめするのが、「元町の個人商店」。浦安市は、元町・中町・新町・工業ゾーン・アーバンリゾートゾーンという5つのエリアに分けられ、それぞれ異なる表情を持っています。魚市場が存在していた漁師町の面影を色濃く残す元町は、海苔や佃煮などを扱う老舗が多く見られるエリアです。

「開発が進み、まちが大きく変化する中でも、代々浦安の文化を守り続けている元町の個人商店にはこれからも頑張ってほしい」と同編集部。中でも「うちだけのサービスを提供しよう」と店を守り続け、人情味あふれる経営で地元の人に愛されている「スーパー木田屋」をぜひ知ってほしいとのこと。早速スーパー木田屋を訪ねました。

江戸時代から代々つないできた歴史

東京メトロ東西線・浦安駅から歩いて5分ほど、閑静な住宅街の中にある木田屋商店は、元町エリアの中心あたりに位置します。元町は、埋め立てによって市域が拡大し高層マンションが建ち並ぶ前からあった浦安の「もともとの町」。そのため、佃煮屋や海苔屋など、漁師町だったころからの個人商店が今も多数残っているのです。木田屋商店の店頭には新鮮な野菜が並び、中に入るとお買い得品を示すポップが賑やかに迎えてくれます。

10代目の木田幸太さんに、木田屋の歴史を伺いました。なんと、木田屋の創業は天明元(1781)年。江戸時代から東京都江東区で米問屋を営み、いわゆる「大店(おおだな)」として、たくさんの奉公人を抱えていたといいます。7代目までは襲名制で、代々「木田喜之助」を名乗ってきました。

写真提供/株式会社木田屋商店
写真提供/株式会社木田屋商店

しかし、第二次世界大戦中の空襲で店は全焼。親戚を頼って浦安へ逃れた8代目は、戦後すぐにトタン1枚で店を開きました。当時は上野まで自転車で仕入れに行き、野菜などを売っていたのだそう。

以来、木田屋は浦安の地で地元住民の生活を支え続けてきました。

優しさでお腹を満たす「250円弁当」

そんな伝統ある木田屋ですが、提供するサービスは常にユニークでチャレンジング。例えば、ボリューム満点の「250円弁当」は木田屋名物の一つです。

「250円弁当を始めた15年前は、会社員のお小遣いが1日あたり500円と言われていました。お昼代はその半分くらいでないと、コーヒーも買えないでしょう?」と木田さん。働き盛りの会社員のために、ご飯の量もたっぷりです。消費税引き上げ時に税込み250円から税抜き250円になったものの、今後も続けられる限り「にこまる」の250円にこだわっていくと話してくれました。

250円弁当だけじゃなく、ずらりと並ぶお惣菜は、目移りしてしまうほど種類豊富。お店の奥の厨房で毎日手作りしているとあって、家庭的な温かさも感じます。どれもお財布に優しい価格なので、ついあれもこれもと手が伸びてしまいそうです。

ふかふかのコッペパンにお惣菜がぎっしり挟まった「木田幸(コ)ッペ」も大人気商品。こちらはなんと税込みで108円!一口頬張れば、なんだか懐かしい味わいが広がります。

毎日「宝物」に出合えるワクワクを

「宝島」は、破格のお買い得品が並ぶコーナー。何があるかはその日にならないと分かりません。というのも、もともとはフードロス対策として始まったもの。ホテルやレストランで予約キャンセルが出た食品や、観光地で在庫が余っているお土産物などを買い取って販売しているのです。

「製造している者にとって一番辛いのは廃棄すること。だから、誰かに食べてもらえるチャンスがあることがうれしい。全国のそういう思いが集まってくるんです」。そう話す木田さんは、「コーナー名の通り、宝探しの気持ちで楽しんでください」と笑いました。

浦安から世界へ。続く木田屋の挑戦

木田屋が追求するのは「安さ」ばかりではありません。これからも歴史をつないでいくために、環境への取り組みや新たな挑戦も行っています。2022年には、二酸化炭素を30%削減するべく店舗を改装しリニューアルオープン。フロン類を使用しない省エネ型の冷凍冷蔵ショーケースやLEDライトを取り入れました。今後の夢は「海外に木田屋をつくること」。木田屋では外国人従業員も就業しているため、「彼らが母国に帰った後もここでの経験を生かして活躍できる場をつくり、日本の食を世界に広めたい」と語ってくれました。

「新しいまちづくりの中で、老舗個人商店が見てきた浦安元町の歴史は語り継がねばならないと思います」と同編集部。240年以上もの間、しなやかに時代の変化に対応してきた木田屋は、この先100年も、スーパーの既成概念にとらわれることなく、人々の暮らしに寄り添い続けていくのでしょう。

施設情報はこちら

施設名
スーパー木田屋

住所
千葉県浦安市北栄3-31-3

電話番号
047-352-4911

営業時間
9:30~20:00

休業日
無休(年末年始等除く)

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

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