滋賀県

時代を越えて、人と琵琶湖をつなぐミシガン

2023.05.10

日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介するコーナー。今回は、滋賀県地域ナビゲーター・松岡人代さんの「100年先に残したいもの」。ご紹介するのは、滋賀県・琵琶湖を船上から楽しむ「ミシガンクルーズ」です。

船上から眺める琵琶湖と、特別な日常

写真提供/琵琶湖汽船株式会社
写真提供/琵琶湖汽船株式会社

滋賀県の面積の約6分の1を占める琵琶湖。湖の幸以外にも、湖水浴や釣り、ウォータースポーツなど、さまざまな楽しみ方がありますが、船上から眺める琵琶湖と滋賀の風景もまた格別です。

はじめまして。ふるさとLOVERS 近畿ナビゲーターの松岡です。滋賀県の中で琵琶湖に面していない甲賀市出身の私にとって、琵琶湖は近くて遠い特別な存在。だからこそ、子どもの頃に初めて乗船した遊覧船「ミシガン」の印象は、大人になった今も強く残っています。
 
ミシガンは、全長59.0m、幅11.7m、旅客定員787名。こんなに大きな船が、琵琶湖を遊覧していることをご存知ですか?今回は「100年先に残したいもの」として、2022年に就航40周年を迎えたミシガンでの船旅、ミシガンクルーズを紹介します。

琵琶湖に“外国”がやってきた!

写真提供/琵琶湖汽船株式会社
写真提供/琵琶湖汽船株式会社

1982(昭和57)年4月29日に就航した遊覧船「ミシガン」。この名前は、滋賀県の友好姉妹都市である、アメリカ・ミシガン州との国際親善を祈念し名付けられました。
 
私が子どもの頃に母と一緒に初めて乗ったミシガンの印象は、まさに“外国”でした。足を踏み入れた船内には、きらびやかなシャンデリアと、ふかふかの赤い絨毯(じゅうたん)。そして、生演奏の音楽、船上から眺めるキラキラと輝く琵琶湖!令和の今に比べ、外国がとても遠い存在だったあの頃に、ワクワクする気持ちを与えてくれたミシガンは、私にとって特別な存在です。

写真提供/琵琶湖汽船株式会社
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ミシガンクルーズの魅力をさらにお伝えするため、運航会社である琵琶湖汽船船舶営業部の高橋佐智子さんにお話を聞きました。ちなみに高橋さんお気に入りのミシガンクルーズのシーズンは「空と琵琶湖の青、山の緑の美しさを満喫できる夏」だそうです。

食事・音楽・サービスが魅力のミシガンクルーズ

写真提供/琵琶湖汽船株式会社
写真提供/琵琶湖汽船株式会社

ミシガンクルーズを運航する、琵琶湖汽船。2022(令和4)年には、開業135周年を迎えた歴史ある会社です。その起源は、1882(明治15)年に大津~長浜を結ぶ日本最初の鉄道連絡船を運航した太湖汽船と、1887(明治20)年に大津〜草津の航路で営業を開始した湖南汽船会社にあります。

1951(昭和26)年に就航し、長らく琵琶湖の”女王”として活躍した観光船「玻璃(はり)丸」の後継船として、ミシガンが登場。当時の社長が提唱した「観光とは異環境の創出である」との考えのもと、外国の雰囲気を船内に創造することを決めました。

写真提供/琵琶湖汽船株式会社
写真提供/琵琶湖汽船株式会社

ミシガンは後部パドル(外輪)だけで実際に航行するめずらしい船です。湖底の攪拌が少ないため、琵琶湖の環境保全に配慮できる点も、採用の決め手になりました。ミシガン2階後方の「パドルウォーク」からは、水飛沫を上げて動く、迫力のあるパドルの姿を眺めることができます。

勢いよく動くパドルですが、大型船のミシガンに乗船してみると、ゆったりと進み、ほぼ揺れを感じることがありません。船内も移動しやすく、全てのフロアを満喫できます。

写真提供/琵琶湖汽船株式会社
写真提供/琵琶湖汽船株式会社

就航当初から続くミシガンの基本方針「おいしい食事・素敵な音楽・行き届いたサービス」が示すように、ミシガンクルーズでは、船内で食事や軽食を楽しむことができます。要予約のブッフェでは、滋賀県の地元の食材を使った料理やミシガンオリジナルカレー、さらに季節限定メニューも並びます。昨年、県外の友人家族と一緒にミシガンクルーズ90分コースを選択し、ランチブッフェを堪能しました。

写真提供/琵琶湖汽船株式会社
写真提供/琵琶湖汽船株式会社

さらに船旅を盛り上げてくれるのが、ミシガン専属エンターテイナー「ミシガンパーサー」です。3階のステージにて、誰もが一度は耳にしたことのある歌、ダンスやトークで本格的なショータイムを提供してくれます。お客様も手拍子をしながら、一緒に盛り上がっている姿が印象的でした。
 
また、就航当時から2007(平成19)年まで、日米国際交流の一環として行われていたのが「ミシガン国際交流研修プログラム」です。ミシガン州ランシング市から来日した国際交流研修生が、船内のレストランで接遇サービスを行なっていました。さらに2011(平成23)年から6年間は、形を変え「ミシガン・インターンシッププログラム」を実施。プログラムへの参加を機に、海外から滋賀県に移住した元研修生の方もいるそうです。

乗船800万人を突破したミシガンの未来

写真提供/琵琶湖汽船株式会社
写真提供/琵琶湖汽船株式会社

就航当時、絨毯やシャンデリア、ドアノブにいたるまで、本物志向の重厚で豪華なインテリアで統一された船内。手を加えられた部分はあるものの、1階の「ミシガンダイニング」を彩るシャンデリアや壁に飾られた信楽焼の陶板絵画は、就航当時の姿を残しています。

ミシガンは、初めて乗船しても、久しぶりに乗船しても、ぬくもりや温かさを感じさせてくれる船です。おそらく船内の手すりやデッキの多くに木が使われていることも、理由のひとつでしょう。船内は、子どもにとっては非日常の冒険の場所。大人になった私にとっては、過去を懐かしく感じる感慨深い場所です。

私が初めてミシガンに乗ったのは、小学校低学年の頃です。好奇心旺盛というよりは、見知らぬ場所を怖がるような子どもでしたが、ミシガンクルーズは別でした。乗船ゲートに並んでいるときから、すでにワクワク。乗船後は、靴を履いたまま絨毯の上を歩くことにドキドキしました。

中でも印象に残っているのは、2階のデッキ部分です。当時置かれていた白い椅子に座り、浴びた湖上の風の気持ちよさと、船上から眺める湖の大きさに圧倒された気持ちは、今もよく覚えています。

写真提供/琵琶湖汽船株式会社
写真提供/琵琶湖汽船株式会社

ミシガンは、就航当時からのコンセプトを大切にしながらも未来を見据え、定期的にリニューアルを遂げています。2005(平成17)年には、4階にスカイデッキが新設。さらに2011(平成23)年にはエレベーターの新設が行われ、3階までのバリアフリーにも対応しました。「2014(平成26)年には、船舶初の『恋人の聖地』に認定されました。琵琶湖には、ミシガンがあると認識してくださっている方も多いです。皆様にとっての琵琶湖のシンボルとして、これからもミシガンの運航を続け、活躍できればと思っています」と高橋さん。

2014(平成26)年には、乗船800万人を突破し、今も親子3世代に渡り乗船する人も多いミシガン。初めて乗船した子どもの頃にも「周りの大人も楽しそう」と感じていましたが、今回改めて乗船し、いくつになっても、誰と乗っても楽しめるのがミシガンだと感じました。今度は、私も母と一緒に乗船したいです。そして、ミシガンクルーズを楽しみながら、思い出話に花を咲かせたいと思います。こんな風に誰もが幸せな時間を過ごせるよう、100年先も、美しい琵琶湖と非日常を楽しめるミシガンが残っていることを願います。

施設情報はこちら

施設名
琵琶湖汽船株式会社
 
住所
滋賀県大津市浜大津5丁目1番1号
 
電話番号(琵琶湖汽船予約センター)
0570-052-105
077-524-5000
 
営業時間(琵琶湖汽船予約センター)
9:00〜17:00

乗船料
ミシガン60 大人(中学生以上)2400円、小学生1200円、ミシガン90 大人(中学生以上)3000円、小学生 1500円 ほかプランにより異なる

休業日
なし 

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

松岡 人代

近畿支部 地域ナビゲーター
松岡 人代

滋賀県甲賀市在住。高知県・四万十農協広報勤務を経て、滋賀県へUターンしたフリーランスのライター。猫と旅とおいしいものが好き!その土地で暮らす人々の生活や魅力をそっと切り取り、地元民ならではの視点でご紹介します。