愛媛県大洲市

大洲で受け継ぐ“本物”に触れる旅

2020.10.20

愛媛県南西部にある大洲市は、松山の中心地から車で1時間ほどでたどり着く城下町です。 今回は、豊かな表情をつくる“古きもの”を大切に受け継いでいる、大洲ならではのショート トリップ決定版をご案内します。「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で星一つ獲得 したうつくしい山荘、“本物”ぞろいの心地いい古民家、一流シェフも認める醤油蔵、大洲人 に愛される飲食店へ。どうぞ、お付き合いください!

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10:00財と時間をかけた山荘は故郷への贈り物

まず訪れたのは、旅のはじまりにふさわしい、肱川沿いに建つ「臥龍山荘」(がりゅうさんそう)。1kmの距離にある「大洲城」と並ぶ有名な景勝地で、江戸時代の町割と家並みが残る「おはなはん通り」を通り、ほんの少し坂を登った先にあります。設計士、大工、庭師が それぞれの腕をふるいながら、1897(明治30)年から10年の歳月をかけてつくった建物です。

こちらは、門をくぐって最初にある、完成に4年かかった茅葺き平屋建の「臥龍院」。繊細な欄間の「透し彫り」やいろんな種類の引手など、細やかな意匠にグッときます。

美しい緑の苔の間にある飛び石を渡り歩いた先に見えてくるのが、肱川の絶壁に立つ「不老庵」です。一枚の網代(あじろ)で覆う天井には、川面に浮かぶ月の光が映るという設計。月や太陽の光を生かす仕掛けは、この山荘の一つの特徴です。自然を愛でることにかける匠たちの熱情がひしひしと伝わってきます。

膨大な時間とお金をつぎ込んで作られた山荘は、大洲出身の貿易商・河内寅次郎(こうち とらじろう)が「余生を故郷で過ごしたい」と願い、築いたもの。ところが、当の本人は完 成から2年後に、この世を後にしました。今となっては、大洲の宝になっている臥龍山荘。 寅次郎が故郷へ捧げた最高のギフトといえるかもしれませんね。

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施設名

臥龍山荘

住所

愛媛県大洲市大洲411-2

電話番号

0893-24-3759

営業時間

9:00〜17:00 (16:30に札止め)

休業日

無休

 

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

12:00大洲人に愛される、わが家心地のレストラン

さてさて、ゆっくり散策したあとは、空腹を抱えて、臥龍山荘から車で約10分の「ビストロ サンマルシェ」へ。世代を超えて地元に愛される洋食レストランです。

名物は、こんもりと盛られたミートソーススパゲティです。レシピは、松山の名物洋食店と同じもの。オーナーの奥田広司さんがこの老舗の味に惚れ込み、30代で修業に飛び込んだのです。体力と気力を使い切って1年半、手に入れたのがこのミートソースの作り方でした。玉ねぎのローストから始まり、仕込むこと4日間。素材が出す甘さ、凝縮されたうま味とコクの産物は無二の味わいです。

地元農家とコラボした「杵つき餅カレー」も名物料理。お餅とカレーの意外な組み合わせもぜひご賞味あれ。

大洲の中心地は、「平成30年7月豪雨」で肱川が氾濫し、水害に見舞われました。サンマルシェも床上まで水が浸かり、機材は全滅。「泥だらけの店を見たときは本当にショックでした。でも、従業員のためにも、このまちのためにも、一日でも早く再開しようと腹をくくりました」。宣言通り、どこよりも早く営業したサンマルシェには、地元のお客さんが駆けつけて喜んだといいます。「造りはファミリーレストラン、味は専門店を目指しています。お客さんのためにも長く、続けていきたいですね」。アットホームな雰囲気の中で絶品スパゲッティをいただきながら、奥田さんの言葉を噛み締めました。

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施設名

ビストロ サンマルシェ

住所

愛媛県大洲市東大洲1048-3

電話番号

0893-25-0881

営業時間

11:00〜15:00(L.O.14:30) 15:30〜21:00(L.O.20:30)

休業日

毎週火曜・第1水曜定休

 

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

14:00杉桶仕込みの蔵で、料理の最高の引き立て役を手に入れる

城下町・大洲は、“本物”の食に出会えるまちでもあります。次に伺ったのはその“本丸”。サンマルシェから車で7分、全国にファンがいる醤油蔵「梶田商店」さんです。愛媛産大豆、小麦だけを使い、酵母を添加しない天然醸造。保存料を使わず、無添加の「巽(たつみ)醤油」は、全国各地の一流シェフも唸らせる日本代表の醤油です。

梶田商店が醤油醸造業に専念してから6代目にあたる梶田泰嗣(かじたやすつぐ)さんに、蔵の中を案内してもらいました。

奥には、高さ2メートル以上の巨大な杉桶が両脇にずらり。「うお〜〜」と声が漏れるほどの圧巻の眺めです。熟成した香りに「いい香りですね」とわたしが言えば、「これはまだいい香りとは言えません」と返ってきました(笑)。代々引き継ぐのは製法だけでなく、作り手として大事な、味覚や嗅覚。気候や素材に左右される醤油を、その鋭い五感で捉え、必要な手を講じていきます。

この場所から生まれる醤油は、香り、風味とも上品。どんな料理にも合ってしまう最高の“引き立て役”なのです。「ぼくたちの仕事は、お客さんの命に関わっています。後世にきちんと残せるような、真っ当なものをつくっていきたい」と泰嗣さん。世界に誇る「soysauce」の作り手の言葉には、ずっしりとした重みがあります。もちろん、お醤油もたくさん買い込んで、買い物袋もずっしり。

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施設名

梶田商店

住所

愛媛県大洲市中村559

電話番号

0893-24-2021

営業時間

8:00〜17:00

休業日

毎週土日祝日定休

 

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

16:00極上の古民家で本物のモノ・コトに触れる

大洲ショート旅もいよいよクライマックスです。最後に訪れたのは、2020年にオープンした「商舗・廊村上邸」。築170年の、豪商・村上一族の旧邸宅です。“邸守”の磯野百会(いそのひゃくえ)さんは、この古民家の佇まいに惚れ込み、オーナーの代わりに建物を守っています。

1、2階合わせて広さ70坪の空間は、50年間ほど空き家になっていたとは思えないほど状態がすばらしいのです。家主さんが丁寧に手入れをしてきたことがよくわかります。中庭を望む一階の和室は、喫茶スペース。ここで過ごす時間は、言葉で表現できないぐらいに気持ちがいいのです。

提供されるメニューの一つが、オリジナルぜんざいです。硬めに炊いた餡、コーヒーゼリー、白玉は自家製。これにココナッツミルクと豆乳を混ぜたソースをかけていただきます。和と中の融合が醸すオリエンタルな味わいに、思わずグッと目を見開きました。丁寧に作られたものって、口に入れた瞬間に多幸感に包まれますよね。

砥部焼作家の杉浦綾さん(写真)の器をはじめ、独自にチョイスした愛媛の“いいもの”も販売しています。それにしても、村上邸のセレクトは、置かれている什器や照明器具、箱物道具もすべて、まちがいのないものばかり。いろんなものに目移りしてしまいます。

「ここはかつて人がたくさん出入りした空間です。この建物がきっと喜んでいるので、何時間でも遠慮なくお過ごしてくださいね」と磯野さん。そういえば、磯野さんの肩書きは「店主」ではなく「邸守」。「この建物を守っていく」という信念が込められているのだそう。この場にあるもの、訪れた人に提供するすべてが、この建物のため。だからこそ全体が調和して、極上の空間に仕上がっているのですね。

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施設名

商舗・廊 村上邸

住所

愛媛県大洲市大洲450

営業時間

12:00〜18:00

休業日

毎週月曜・火曜定休

電話番号

0893-57-9771

 

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域の人たちが後世につなごうと守ってきたもの、生み出しているもの。偶然にも、そんな 共通項があるスポットをめぐった今回の大洲ショートトリップ。積み上げてきた時間と空間 まるごと大切にする大洲の人たちの心意気も、旅のおみやげになりました。

地域ナビゲーター

ハタノエリ

四国支部 ライター・エディター
ハタノエリ

宮崎県の海のそばで生まれ育ち、高校卒業後は大学、仕事、夫の転勤を理由に
全国各地10カ所以上で暮らしました。2017年、愛媛県松山市に移住。現在は、ライター、エディター、コピーライターとして、取材対象の言外からあふれるものを拾いながら、ひと・もの・ことを、ことばで表現しています。