
山梨県富士河口湖町
2022.01.02
この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。今回は長沼ファームの森崎睦博さんより、「100年先に残したいもの」として、北海道長沼町の「馬追(まおい)丘陵」を推薦いただきました。
石狩平野の南東部に位置する北海道長沼町。千歳川と夕張川の良質で豊富な水と太平洋から日本海へ抜ける風と温暖な気候により、農業や酪農、養鶏が盛んなまちです。面積の約70%を田畑や牧場が占める食料基地です。近年では札幌市や千歳市など都市部に近い利点を活かして、農家に泊まる農業体験「グリーン・ツーリズム」にも力を入れています。
長沼町の歴史は、明治20年に岩手県出身の吉川鉄之助が未開原野に足を踏み入れたことから始まりました。明治時代から昭和初期にかけて綿羊が主産業で、町には約4500頭もの羊が飼われていましたが、現在は農業が中心で、さまざまな作物が栽培されています。
そんな長沼町で、馬追和牛の肥育を行っている「長沼ファーム」の森崎睦博(もりさきむつひろ)さんが、この町で「100年先に残したいもの」と思いを寄せるのが「馬追(まおい)丘陵」です。
馬追丘陵では畑作や酪農が営まれており、森崎さんは二代目の牧場主として約1200頭もの和牛を育てています。親から受け継いだ牧場を次の世代に繋げるために「馬追丘陵の自然を100年先に残していきたい」と語ります。
馬追丘陵は長沼町の東部に横たわる丘。名前はアイヌ語の「マウ・オ・イ(ハマナスの実があるところ)」に由来しており、全長約50km、幅5~8km、北高南低のなだらかなシルエットが特徴です。石狩平野に向かってまっすぐに伸びる道路、どこまでも高い空など、北海道らしいスケールの大きさを感じずにはいられません。
丘陵の一部である標高254mの長官山(ちょうかんざん)から石狩平野を一望すると、天気が良い日には、札幌市街や遠く日高山脈も見渡せます。また、多くの動植物が生息し、これまで202種類の野鳥の生息が確認されています。遊歩道が整備されているので、バードウオッチング好きには嬉しい限りです。
多くの幸が育まれる馬追丘陵にあって、いろんな幸に出会えたり、丘陵の壮大な風景を楽しめたりするのが、道の駅「マオイの丘公園」。観光客が集う馬追丘陵の人気スポットは、サイロのようなレンガ造りの建物が目印です。
長沼は夕張川・千歳川がもたらす肥沃な農業地帯。道の駅の展望台から見渡せば、視界を遮るものはありません。丘一面に田畑や牧場が点在し、丘陵全体が食料供給地であることがわかるでしょう。日本有数の生産量を誇る大豆をはじめ、多種多様な農作物を栽培しています。酪農や養鶏も行われ、「ないものを探すのが難しい」と言っても過言ではありません。
公園内には地元農家が営む直売所が軒を連ね、新鮮食材を求める人たちでにぎわっています。また、館内では、長沼産食材を使った加工食品のほか、長沼産米を100%使用した吟醸酒、町内のワイナリーで作られた果実酒、2005年に特区に認定され、米農家が自家製米で製造したどぶろくなど酒類の種類が豊富です。酒もつまみも地産地消が叶いますよ。
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施設名
道の駅「マオイの丘公園」
住所
北海道夕張郡長沼町東10線南7番地
電話番号
0123-84-2120
営業時間
9:00~18:00(4月~11月) 9:00~17:00(12月~3月)
休業日
年末年始(12月31日~1月3日)
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
このまちに思い入れのある方にお話を伺おうと会いに行ったのが、長沼町観光協会の森下伸会長です。老舗菓子店「森下松風庵」のオーナーでもあり、長沼産の材料を使ったスイーツを製造・販売しています。
森下会長に長沼町の魅力を尋ねると、「特産品が季節ごとにたくさんあるんです。この長沼町の四季折々の食をお菓子に取り入れることで、長沼町の豊かさを伝えていきたいです」と語ってくれました。新鮮な食材に囲まれて生活できる環境がうらやましくなりました。
「馬追丘陵は季節をたっぷりと感じることができますそして、空いっぱいを埋める夕景は息を飲む美しさなのですよ」と森下会長。まっすぐと伸びる道や大きな空と広い大地。その風景は、先人が築き上げた自然と人の共生の証。丘陵に立ち、ゆったりと風を受けるとそれだけで心を揺さぶられます。
取材と通して、父親から牧場を継いだ森崎さんが、この風景を次の世代に残したかった気持ちがわかりました。観光客誘致のための開発ではなく、本来の姿を保存する活動が行われている長沼町。「このままがいいんだよ」という馬追丘陵の声が聞こえた気がしました。
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施設名
馬追丘陵
住所
北海道夕張郡長沼町
北海道支部 地域ナビゲーター
吉田 匡和
札幌市出身、在住。社会福祉士の資格と経験を持つ異色の「おでかけ系ライター」。2016年にフリーライターに転向し、2017年に個人事業所「ブーレオルカ」を設立しました。「楽しさが伝わる」、「すべての人に有益である」、「記憶に残る」の3つを信条に執筆しています。