沖縄県南城市

訪れる人を彩りでもてなすブルーシロップ

2022.01.10

この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。今回スポットをご紹介いただいたのは、沖縄県南城市に佇む独立型ラグジュアリーホテル「百名伽藍」副支配人の西向信枝さんです。

沖縄の原風景が残る南城市

ざわわと揺らめくさとうきび畑に壮大な木々と海、昔ながらの赤瓦や白瓦の家が点在する沖縄県南城市。東海岸をぐるりと囲むように位置するこの地域には、沖縄らしい原風景が残り、豊かな自然が守られています。

南城市百名に佇む「百名伽藍」

そんな南城市でもひときわ閑静な地・百名に佇む独立型ラグジュアリーホテル「百名伽藍(ひゃくながらん)」。自然を第一に考えて設計された百名伽藍は、全室オーシャンフロントの客室や、海を眼下にくつろげる露天風呂、沖縄の歴史を象徴するアートなど、訪れる人々を癒すおもてなしで溢れています。

お客さんを笑顔にする商品

南城市の自然を慈しみながら、日々お客さんを迎える百名伽藍の副支配人・西向信枝(にしむかいのぶえ)さんに「100年先に残したいもの」を伺うと、農業法人 株式会社 仲善が製造する「バタフライピーシロップ」を教えてくれました。

「バタフライピー(和名:チョウ豆。青い花をつけるマメ科の植物)のドリンクは、レモンを絞ると青から紫に色が変わるんです。その彩りと美容効果の高さから、おもにハーブティーとして親しまれてきました。これまでバタフライピー商品は茶葉や粉末だけでしたが、仲善さんがシロップを開発してくれたんです。分量や煮出す時間を計らずに、気軽にドリンクとしてお客様に提供できるのがうれしいです」

1968年創業。南城市の恵みを世の中に広めたい

さっそくバタフライピーシロップ開発秘話を伺うべく、農業法人 株式会社 仲善(以下:仲善)に訪れました。1968年に創業した仲善は、健康食品の製造販売からスタートした会社。南城市で多く育つ薬用植物を”生活の知恵”に留めずに、世の中に広めたいと思ったことからはじまったのだそう。創業者がご自身のご病気を機に、薬用植物の魅力に気付いたことがきっかけだったといいます。

敷地内には2001年よりアジアン・ハーブレストラン「カフェ くるくま」も併設。テラス席から一望できる絶景と、敷地内で育てた薬草やハーブを使ったタイ料理が絶品と、週末は順番待ちになるほどの人気店です。ちなみにテラス席からは百名伽藍が見えますよ。

西向さんにご紹介いただいたバタフライピーシロップ(商品名「オキナワブルーハワイシロップ」)について教えてくれるのは、写真左から、営業部の仙波晃さん、工場部兼品質管理部・次長の舟久保勝さん、企画・制作部の下地敬大さんです。

仙波さんいわく、フードイベントにも多く出店する仲善は、お客さんと直接会話することも多いのだそう。もともとバタフライピーの茶葉を製造していましたが、お客さんの声がきっかけでシロップ開発を行ったのだといいます。早速、開発秘話をシロップづくりの工程から教えていただきました!

気候に寄り添い、課題に立ち向かう仲善の製品づくり

まず訪れたのは、敷地内にあるビニールハウス。バタフライピーは15度以上の気温で育つため、沖縄ではほぼ通年育ちますが15度を下回る日も栽培を止めないために、ビニールハウスで育てているそうです。

こちらの写真がバタフライピーのお花。ぴかぴかの太陽に照らされながら、ぷっくりとした姿がなんとも愛らしく咲いています。バタフライピーは沖縄の気候風土にあっているため、あまり手をかけずともすくすくと育ってくれるのだとか。ちなみに、製品づくりに使用するバタフライピーはすべて無農薬です。

お花を収穫したあとは、すぐに人の手で洗います。バタフライピーはデリケートなので、機械で洗浄しないこともこだわりです。県内の農家さん数件からも仕入れており、毎日大量のバタフライピーをスタッフが丁寧に洗い上げます。

洗い上がったバタフライピーは、素早く乾燥機に入れられます。実はバタフライピーは、スピーディーに乾燥しないとすぐにしなってしまう上に乾燥の加減が難しく、水分が残りすぎるとカビが生え、乾燥しすぎるときれいな青色が出ないそう。「育てるまでは簡単でも、製品にするまでが難しい」と栽培をやめてしまう農家さんも多いのだといいます。

そこで仲善は、54年の研究の蓄積を活かして研究し、仲善でしかたどり着けない作業環境の構築に見事成功!その環境を利用して地域の農家さんも巻き込みながら、バタフライピーの製品づくりを担っています。

乾燥し、茶葉へと加工したバタフライピーは最後、南城市の障がい者就労支援施設に持ち込まれ、シロップの製造が行われます。このように地域の農家さんや施設と連携しながら製造をすることも、仲善のこだわりです。

かつて「ハーブのまち」ともいわれた南城市の魅力をあらためて知ってもらいたい、そして南城市で暮らす人々が豊かになるような商品製造をしたい。そんな想いが「オキナワブルーハワイシロップ」を作り出したのです。

そうして完成したシロップは水や炭酸水を入れるだけで簡単に好みの味に仕上がる手軽が人気の商品。隠し味のパッションフルーツで南国らしさもUPしています。紹介してくれた百名伽藍ではウエルカムドリンクとして使用しており、西向さんはレモンを絞ったときのお客さんの反応が楽しみなのだとか。

無添加・無着色でこれだけの鮮やかさが出せるため、お菓子作りやパン・ヨーグルトのトッピングにもぴったりです。

色の変化を楽しんで

誕生したシロップでつくられたドリンクがこちら。早速、色の変化を楽しみましょう!

写真は、少しだけレモンシロップを入れたときの色合い。レモンシロップが落ちたところから徐々に紫色に染まり、うつくしいグラデーションをつくります。バタフライピーに含まれるアントシアニンが酸性に反応することで色が変化するそうで、「飲める科学実験」とも言われているのだとか。ちなみにアントシアニンは抗酸化力が高いため、美容効果も期待できます。

最終的にはレモンが全体に行き渡り、綺麗な紫色に染まります。まるで夕焼け空のように、その変化をじっくりと楽しむために動画を撮る人も多いそうです。

仲善だからこそできる、ものづくりを後世へ

こちらの写真は、仲善本社から見えた敷地内の景色。この広大な敷地には、バタフライピーのほかにもレモングラスやよもぎ、パクチーやバジルなどが育てられています。

素材もスパイスも新鮮で、身体にもやさしいカフェくるくまのごはんが私も大好きで、数回訪れていました。こんなに大きな敷地があるのだし、この場所ですべてを完結させているんだろうなぁと何年も思い込んでいましたが、南城市内の企業と連携しつつ、使命感をもって製品をつくっていたとは。

ふと、百名伽藍・西向さんが「商品としての魅力だけでなく、南城市の農家さんや市内にある障がい者就労支援施設と連携していることも、同じ南城市の企業として誇りに思う」と言っていたことを思い出しました。商品づくりにかける想いはもちろん、カフェくるくまのごはんやこの土地も、すべてがあたたかいこの場所ごと100年先まで残ってほしいなぁと思ったのでした。

施設情報はこちら

施設名
くるくまショップ(農業生産法人株式会社 仲善)

住所
沖縄県南城市知念字知念1190

電話番号
098-949-1222(ショップ)/098-949-1188(代表)

営業時間
平日:11時〜17時 (L.O16時)/土日祝日:10時〜18時( L.O17時)
※時短営業中

休業日
年中無休

http://www.118930.com/

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地域ナビゲーター

三好 優実

沖縄支部 沖縄ライター
三好 優実

沖縄県那覇市在住。香川県で生まれ育ったのち、大阪や東京で仕事中心の生活を満喫していましたが、沖縄旅行で「人」の魅力にはまり、仕事をあっさり手放して移住。1年くらいで別の土地に行こうと思いきや、早6年が経過しました。ライター歴は5年。