山口県

周防灘の離島で生まれた延縄漁

2021.01.15

この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」を紹介します。
今回ご登場いただくのは、山口県周南市でふくに特化した加工場「徳山ふくセンター」を経営する渡邊規夫副社長です。

ふくの「漁獲法」発祥の地

日本の工業地帯「太平洋ベルト」。その山口県における工業の中核として発展したのが、周南市です。そんな周南市を代表するものが「ふく」。山口県では「ふぐ」のことを、幸福を呼び込むという縁起から、「ふく」(福)と呼んでいます。さらに、そのふぐの漁獲法として、周南市で生み出されたのが「ふくの延縄(はえなわ)漁」です。そんなふくに特化した加工場「徳山ふくセンター」を経営する渡邊規夫副社長より、「100年先に残したいもの」として、その「ふくの延縄漁」をご紹介いただきました。

「ふくの延縄漁は、周南市が発祥です。周南に訪れたら、ぜひ、伝統の漁で収穫したふく料理をあじわっていただきたいですね」と渡邊さん。延縄漁の歴史や背景とともに、おいしいふく料理をご紹介します。

周防灘の離島で生まれた伝統漁

周南市は瀬戸内海に臨む工業都市でもあり、一部は瀬戸内海国立公園に指定されている、周南諸島を形成する離島も有しています。国会議事堂に使用された「徳山みかげ」と呼ばれる御影石の採石場である黒髪島。第二次世界大戦で日本海軍が人間魚雷「回天」の基地とした大津島。そして、「ふくの延縄漁」発祥の地である粭島(すくもじま)です。この粭島がある周防灘の海域は、海底が岩盤で潮流が激しく、海藻や稚魚などふくのエサが豊富であるため、古くからふく漁が行なわれてきました。

一人の若者の発想から日本全国へ

明治10年(1877年)、粭島に住む高松伊代作という若者が、鋭い歯を持つふくに糸を切られない、現在の「粭島型」と呼ばれる釣り針を考案。糸がふくの鋭い歯で切られるのを防ぐため、部分的に銅線を使うなど、さまざまな工夫を凝らし、明治後期には、延縄(はえなわ)漁として確立され、その漁法が普及していきました。ふくに傷が付きにくく、品質を高く保つことができるため、日本各地の漁師の間で広まったのです。

一年を通じて「ふく」を味わえる

ふくの延縄漁で水揚げされた「ふく」、せっかくならぜひ味わってみたいですよね。最近は、延縄漁で獲れるふくは少なく、とても希少。徳山ふくセンターが運営する「ふく処 快(かい)」では、普段少しでもお手ごろ価格で楽しめるよう養殖ふくを提供していますが、2週間程度前に予約し希望を伝えることで、延縄漁で水揚げされたふくを楽しむことができます。お店までは周南市の交通の要衝、徳山駅から歩いて10分。港に面する、ちょっとモダンな建物が「快」です。

「秋の彼岸から、春の彼岸まで」といわれたふくの旬ですが、一年を通じて味わっていただきたいという思いで、開業されたそうです。開放的でありながら、個室感覚でも過ごすことができる空間で、オーダーメイドの「今城焼」(いましろやき)の器がさらに、おいしさを際立たせてくれます。

1枚で食べ応え十分!周南のふく刺し

ふくの産地といえば、同じく山口県下関市を浮かべる人も多いのでは。でも周南と下関では、ふくのさばき方とその手法が異なりるため、周南らしいふく刺しを楽しむことができるんです。周南では、ふくの身の切り方が大きく、幅が広く切るのが特徴。ふく刺しを、2~3枚箸ですくって食べることがありますが、周南のふぐ刺しは大きいので、1枚でも食べ応え充分です。淡泊な味わいのふくですが、ぽん酢と細長いネギなどの薬味と一緒に口に含むと、ふくのうま味が感じられます。

「ふくを処理してから、1日、2日ほど寝かせることで肉質が良くなり、うま味が増すんですよ」と、渡邊さん。その丁寧な段取りと仕込みが、うま味を下支えしているんですね。

ふく刺しのほかにおすすめなのが、「ふくの唐揚げ」です。骨身からあふれでるジューシーな味わいと、唐揚げにすると柔らかくなるふくの身が、言葉の表現に困るぐらいの上質なおいしさです。

「ふくはお姫さまのように扱え」というのが口ぐせという、粭島の漁師のふくを愛する心。ふく刺しはもちろんのこと、このふくの唐揚げを通じて、『お姫さまクオリティ』を思う存分堪能してみてください。

施設情報はこちら

施設名
ふく処 快

住所
山口県周南市徳山港町8475-5

電話番号
0834-32-3625

営業時間
17:00~21:30

休業日
日曜

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

JOIN083(ジョイン・ゼロハチサン)

中国支部 ふるさとLOVERSナビゲーター
JOIN083(ジョイン・ゼロハチサン)

本州最西端のスタートアップ拠点・情報発信基地「JOIN083」のメンバーです。地域の魅力と課題を常に発見し、それらを世界に発信し続けるグローカルパーソンです。「地域のために 地域を越えて」を合言葉に、地域と世界の懸け橋となるよう、下関を拠点に日夜活動しています。これからも、「地方推し」は変わりませんよ!