福岡県福岡市

都心のオアシス「大濠公園」

2023.03.16

日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介するコーナー。今回は、福岡県福岡市にある伊都物語というブランドの牛乳やヨーグルトの製造・販売を行っている「株式会社糸島みるくぷらんと」の広報を担当している高田史代さんに、「大濠公園」をご紹介いただきました。

自然豊かな都心のオアシス。100年先も残したい「大濠公園」

写真提供/大濠・西公園管理事務所
写真提供/大濠・西公園管理事務所

福岡市中心にある市民の憩いの場「大濠(おおほり)公園」。福岡市いちの繁華街・天神地区からほど近い場所にありながら、広大な敷地面積を誇り、さらにその約半分を池が占めるという国内有数の水景公園です。

そんな大濠公園を100年先に残したいと話すのは、福岡市で乳製品の製造・販売を行っている「株式会社糸島みるくぷらんと」の広報担当・高田史代(たかたふみよ)さん。

高田さんは「私自身の就職や子どもの進学の時など、ふと思い返してみたら節目節目に大濠公園を身近に感じる機会が多かったように感じます。職場が大濠公園の近くだったり、通り道として大濠公園内を通ったり…四季の移ろいを感じられる緑や、都会であることをついつい忘れてしまう風景にいつも癒やされていました」と大濠公園の魅力を話してくれました。

大濠公園といえばとにかく広大な敷地面積!

写真提供/大濠・西公園管理事務所
写真提供/大濠・西公園管理事務所

大濠公園は、福岡市中央区にある県営公園。総面積はなんと約39.8万平方メートルあり、そのうち約半分の22.6万平方メートルが池という珍しい公園です。

大濠公園はもともと隣接していた福岡城の外濠でした。江戸時代、黒田長政が築城した際に、当時博多湾の入り江だったこの地を福岡城の外濠として活用したことがルーツ。その後、1927(昭和2)年の博覧会を機に造園工事がほどこされ、1929(昭和4)年に開園し、国の登録記念物にもなっています。中心の広大な池は、福岡城の外濠として活用されていた名残だったんですね。

加えて池の周りには、日本庭園や福岡市美術館、そして能楽堂など、さまざまな施設が充実しているので、楽しみ方がひとつだけじゃないのも魅力。池のほとりにはベンチが点在しているので、木陰で読書に没頭している方の姿もよく見られます。

今回は大濠公園に詳しい、大濠・西公園管理事務所の副所長・進藤晴香さんに、魅力やその楽しみ方についてうかがってみました。

美しい水と緑に包まれた都会のオアシス、大濠公園

福岡市民にとって、憩いの空間である“大濠公園”。福岡市の中心に位置しながら四季折々の植物が植林されているほか、池の水質が保たれているため魚はもちろんたくさんの野鳥が生息しており、見ているだけで癒やされます。また、公園全体が木々に覆われているため、周りの景色や音が遮断され、ここが都心であることを忘れさせてくれる貴重なスポット。池の周りが1周約2kmのランニングコースになっており、ランナーの聖地とも呼ばれています。ランナーが自分たちのペースで景観を楽しみながら、ランニングに励むことができるようになっています。

「ランニングコースは足にかかる負担が少ないゴムチップ舗装を施しています。一般のランナーの方はもちろん、地元の学生たちの部活動の一貫としてもよく利用していただいています。夕方の時間には、背中に学校名がかかれた運動着を着て走っている学生さんがたくさんいますよ」と、進藤さん。地域の方たちにとって、生活に密着している公園だということが伝わってきます。

福岡市美術館や日本庭園など、実は観光地としても注目

先述の通り、大濠公園内にはたくさんの施設が点在しています。日本庭園や福岡市美術館、能楽堂のほかにも、ボートハウスや、児童公園、スターバックスなどカフェスポットも充実。これが、年齢を問わず愛される秘訣です。

その中から今回は、進藤さんに日本庭園を案内していただきました。

「こちらの日本庭園は、島根県にある『足立美術館』の庭園などで知られる現代の作庭家・中根金作氏の設計によるものです。大濠公園の開設50周年を記念してつくられました。池と築山による主庭『大池泉庭』、そのほか枯山水庭や茶室、さらには、『布落ちの滝』『渓流の滝』『三段落ちの滝』という、たたずまいが異なる三つの滝が見られます。日常を忘れて、くつろげる空間になっていますよ」とのこと。

その景観の美しさから、取材当日も、結婚式の前撮りをしているご夫婦がいらっしゃいました。

進藤さんと会話をしながらゆったりと歩いていると、驚かされるのはその広さ。面積はなんと1.2万平方メートルほどで、日本庭園としては県内最大規模なのだとか。

さらに、その広大な敷地内には、ツツジやサツキをはじめとした40種類もの植物、25000株に及ぶ下草が植栽されており、季節によって景観が異なるとのこと。季節ごとに訪れたくなるスポットです。

景観に馴染むように数寄屋造りでつくられた茶会館は、普段は完全予約制ですが、毎月第三火曜日には一般の方にも開放されており、抹茶とお菓子を楽しめます。

これから、さらなる開発が期待できる場所

写真提供/大濠・西公園管理事務所
写真提供/大濠・西公園管理事務所

福岡市は、2014(平成26)年6月に「セントラルパーク構想」を策定しています。セントラルパーク構想とは、大濠公園と、隣接する舞鶴公園の一体的な活用を図り、県民・市民の憩いの場として、公園そのものが広大なミュージアム空間となるような公園づくりを推進するための構想。「現在進行系で少しずつ開発が進んでいます。これからどうなっていくか私たちもまだわかりませんが、より多くの方に愛されるスポットになっていくと思います」と進藤さんは夢を膨らませます。

今回、大濠公園を紹介してくれた高田さんも「特に近年は見るたびに新しいスポットが増えて、ますます賑わっているような印象です」と話していました。現在も老若男女問わずたくさんの方に愛されている大濠公園。これからどんな形に姿を変えていくのか、住民の私も楽しみでたまりません。

施設情報はこちら

施設名
大濠公園

住所
福岡県福岡市中央区大濠公園

地域ナビゲーター

寺尾 えりか

九州支部 地域ナビゲーター
寺尾 えりか

愛媛県出身。東京での出版社勤務を経て、福岡県糸島市に移住しフリーライターに。得意分野は、人物インタビューやものづくり系。福岡に移住してから、福岡のことを少しでも知りたいと思い、伝統工芸・博多人形の教室に通っていました。