北海道東川町

神々の遊ぶ庭と呼ばれる山『大雪山旭岳』

2020.10.15

この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。今回は、北海道ナビゲーターの桑原 雅彦(くわはら まさひこ)さんご自身の「100年先に残したいもの」です。

大雪山の麓の東川町は、名水と写真のまち

北海道のほぼ中央にあり、旭川市に隣接する東川町。大雪山の麓に位置する東川町は、雪解け水などによる水資源が豊富で、ほとんどの住民の方が地下水をポンプでくみ上げ、生活用水として利用しています。しかも、その水は塩素消毒のない大雪山のミネラルウォーターです。また、写真のまちとしても有名で、高校の写真部を対象とした「写真甲子園」や「国際写真フェスティバル」が開催されています。

記憶に残る山、大雪山

はじめまして、北海道のふるさとLOVERSナビゲーターの桑原です。
趣味のひとつが登山で、これまでに多くの山々に登ってきましたが、その中でも強く記憶に残っているのが大雪山。

大雪山はアイヌの人々から「カムイミンタラ=神々の遊ぶ庭」と呼ばれてきました。2000メートル級の山々の連なりが造る大雪山の自然と風景の数々は、30年以上続けてきた登山の中でも、忘れられない思い出になっています。

今回「100年先に残したい場所」として紹介するのは、東川町にある大雪山の「旭岳」。実は大雪山という名の山はなく、北海道の中央にそびえ立つ山々の総称で、標高2291メートルの旭岳が道内の最高峰です。

ロープウェイでアプローチできる最高峰

旭岳は北海道の最高峰でありながら、ロープウェイで5合目まで登ることが可能。そのため登山のスキルがそれほどなくても楽しめる山です。旭岳温泉近くにある山麓駅からロープウェイに乗れば、標高1600メートルの姿見駅までは約10分。ロープウェイを降りれば、そこが神々の遊ぶ庭、天空の別世界となります。

大雪山の中でも、旭岳を紹介する理由は山頂を目指さなくても、大自然と雄大な景色を満喫できること。姿見駅を起点とした一周約1.7キロの散策路をトレッキングすれば、旭岳の神々しい山容、姿見の池や夫婦池などの絶景が楽しめます。

雪と紅葉が楽しめる、10月初旬の旭岳

今回、旭岳に向かったのは10月初旬。北海道の平地では紅葉が始まろうとする時期ですが、ロープウェイの山麓駅周辺では紅葉が真っ盛り。日本の中でも、大雪山は最も早く紅葉が訪れる場所で、9月中旬には木々の葉が赤や黄色に色づき始め、山から降りてくる紅葉を1カ月近くに渡って楽しめます。

大雪山で初雪が観測されるのは例年9月下旬で、10月初旬の旭岳では白く冠雪した山頂と美しい紅葉が同時に見られます。1年の中でもわずかな期間しかない雪と紅葉の光景を目指して、ロープウェイに乗り込みました。 

10分間の空中散歩を終えて、ロープウェイを降りると、そこは森林限界を越えた神々の遊ぶ庭。降り口で、現在の旭岳の様子について簡単なレクチャーを受けた後、散策路を歩き始めました。
散策路には少し急な上り下りもありますが、よく整備されていて歩きやすいので、体力にあまり自信のない方でも1時間程度で周回できるはずです。

当日はあいにくの曇天で、旭岳の白い山頂は雲に隠れたまま。雲が消えることを望みながら歩いていると、周囲に少し雪の残る満月沼が見え始めました。その名の通り丸い沼の向こうに、旭川市の街並みが広がる光景は旭岳の絶景のひとつです。

次に現れたのは、鏡池とすり鉢池。2つの池が仲良く並んでいることから、これらの池は夫婦池の通称で呼ばれることが多いようです。その名の通り、鏡池の水面には旭岳の姿が映し出されていました。

旭岳の周辺に点在する池や沼は、かつての火山活動からの贈り物です。およそ2000年前、旭岳の火山活動が活発だったころに、いくつもの噴火口ができました。そして、噴火の終わった火口がくぼ地となり、雨や雪による水が溜まって、現在の姿見の池や夫婦池になったそうです。

散策路には噴気孔を近くで見られるスポットもありました。荒々しい山肌から、白い水蒸気が激しく吹き上がる様子は「今でも、旭岳は生きている」と実感させられるものでした。

ようやく姿を見せた山頂と姿見の池

噴煙をバックにして、旭岳の散策路の中でも最大の見どころ、姿見の池へ向かいました。天気が良い日にはエメラルドグリーンに見えるという水面ですが、目の前に広がるのは曇天のせいで淡いブルーの姿見の池。

しかし、姿見の池の近くで晴れ間を待っていると、やがて雲の切れ間から陽が差してきて、エメラルドグリーンがかった水面が目の前に現れました。そして、姿見の池の向こうには、これまで隠れていた旭岳の山頂が雄大な姿をみせてくれました。

その後、再び雲が厚くなり、エメラルドグリーンの姿見の池と旭岳の山頂が見られたのは、わずか数分程度。しかし、その光景はアイヌの人々が神々の遊ぶ庭と名付けたのが納得できる美しさでした。

四季を通して楽しめる旭岳

今回は雪と紅葉が同時に楽しめる10月初旬に旭岳を訪れましたが、紅葉が終わった10月中旬以降は白銀の世界に変わります。そして、雪に覆われた旭岳の姿は一段と神々しさを増します。いち早く冬景色を楽しんだ後は、山麓駅のすぐ近くにある旭岳温泉で冷えた体を温めるといいでしょう。

ロープウェイで気軽にアプローチできる旭岳は、四季を通して様々な自然景観が楽しめる山。次の機会には、違う季節に異なる表情の神々の遊ぶ庭の中を歩いてみたいと思っています。

<今回の旅スポット>

大雪山旭岳ロープウェイ
北海道上川郡東川町旭岳温泉
0166-68-9111
※ロープウェイの運行スケジュールはホームページ等でご確認ください。

旭岳ビジターセンター
北海道上川郡東川町旭岳温泉
9:00~17:00
年末年始休館
0166-97-2153

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。 

地域ナビゲーター

桑原 雅彦

北海道支部 フリーライター・編集者
桑原 雅彦

フリーライター、エディター。大学生の時にバイクツーリングで訪れた北の大地に魅せられ、1994年、生まれ育った大阪市から北海道網走市に移住。道内各市町村の観光パンフレットや町勢要覧など、印刷物の制作を主に担当。生産者の方々の熱い想いや、商品の背景にあるストーリーの数々をお伝えしていきたいです。