沖縄県恩納村

自然が生んだ圧倒的な造形美「万座毛」

2022.06.07

日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介するコーナー。今回は、沖縄県恩納村にあるリゾートホテル「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」の水越重暁さんに、万座毛をおすすめいただきました。

琉球石灰岩からなる「万人が座するに足る毛」

写真提供/万座毛株式会社
写真提供/万座毛株式会社

琉球王朝第13代国王の尚敬王(しょうけいおう)が、「万人が座するに足る毛(万人が座ることのできる広い野原)」と賞賛し、その名が付いたといわれる「万座毛(まんざもう)」。リゾートエリアとして人気の本島北部・恩納村にあり、沖縄を代表する景勝地です。

万座毛といえば、象の鼻のような形をした岩がよく知られていますが、実はこれは一部に過ぎません。万座毛という場所は、沖縄海岸国定公園に属する海に少し突き出た岬一帯のことを指します。海に面して、高さ約20メートルもの隆起した琉球石灰岩からなるダイナミックな断崖が続き、その上には天然芝の野原、つまり万人が座れるほどの野原が広がっているのです。

20年以上前に見た、忘れられない景色

100年先に残したいものに「万座毛」を挙げてくれたのは、万座毛と同じく恩納村にあるリゾートホテル「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」のセールス&マーケティング営業副部長・水越重暁(みずこししげあき)さん。沖縄県外出身の水越さんは、初めて沖縄に訪れた際に万座毛に足を運び、その圧倒的な海の美しさに魅了されたと言います。

「沖縄県外の人間にとって、万座毛から見る海の青さは衝撃的でした。初来訪から20年以上たった今でも、あの青さが目に焼き付いています」。見た人に強烈な印象を残す万座毛からの風景とは、どんなものなのでしょう?じっくり尋ねてみました。

誰でも見やすく、行きやすい場所へ

数年前まで万座毛は、誰でも無料で自由に入れる景勝地でした。しかし景観の維持や管理安全性の向上、さらなる集客を目的に、2020年「万座毛周辺活性化施設」がオープン。駐車場や飲食店、お土産店が整備され、より快適に万座毛を見学できるようになりました。

今回はこの施設とともに、万座毛の新しい楽しみ方をご紹介します。

館内は広々としていてスタイリッシュ。かつての、露店が立ち並ぶ雑多な入口を知っている身としては、ホテルのようなインテリアに驚きを隠せません。この施設自体も見どころ豊富のようですが、まずは万座毛へ行くことにします。

万座毛へは、1階のチケット売り場で入場料(100円)を払います。もちろんエレベーターも完備されているので、どなたでも安全にアクセスできます。見学者に優しい万座毛へ生まれ変わったようで嬉しい限りです。

歌碑や珍しい植物、道中も楽しい

万座毛への道を進むとまず現れたのが、こちらの記念碑。18世紀始めの王朝時代に活躍した、恩納村生まれの女流歌人「恩納ナビー」の歌碑で、以前は別の場所にありましたが施設完成とともに移設されました。

「波の声もとまれ 風の声もとまり 首里天がなし 美御機拝ま」と歌われており、意味は「波も風も穏やかになってほしい はるばる国王が万座毛に来られるので、その顔を拝みたいものだ」。数百年前から万座毛は、波も風も強い場所であったことがわかります。恩納ナビーも万座毛に立ち、海を見ながら遥か遠くの都に思いを馳せたのでしょうね。

写真提供/万座毛株式会社
写真提供/万座毛株式会社

遊歩道の周りには、万座毛の名前の由来でもある芝生が大きく広がります。海からの強い風にめげず、根を張り巡らせている芝生はすべて天然。施設ができるまでは自由にこの芝生を行き来できたのですが、今は立ち入り禁止です。

この周りの植物は「万座毛石灰岩植物群落」という沖縄県指定の天然記念物に指定されており、「オキナワスミレ」や「イソノギク」などの沖縄固有種が咲いていることも。珍しい植物を探しながら散歩するのも、万座毛の楽しみ方の一つなのでしょう。そして向こうには青々とした原っぱと青い海が見えてきました!はやる気持ちを抑えつつ、あわてず歩みを進めます。

圧巻の雄大さ、透明度

写真提供/万座毛株式会社
写真提供/万座毛株式会社

遊歩道をさらに進み岬の突端にたどり着くと、ついに現れました!これぞ、ザ・万座毛なスポット、通称「象の鼻」。海に突き出ている岩が象の鼻のシルエットに似ていることから、この呼び名が付いたようです。

コバルトブルーの深い青と荒々しい琉球石灰岩の崖の取り合わせが、トロピカルな海とはひと味違ったワイルドな情緒を感じさせます。吸い込まれそうなほどの透明感に、怖ささえ感じてしまうほどです。

写真提供/万座毛株式会社
写真提供/万座毛株式会社

象の鼻の反対側に目をやると、これまた絶景が広がっていました。左端には老舗のリゾートホテル、中央付近には沖縄を代表する美しいビーチ・万座ビーチが見えます。

写真の右の方に見える小さな岩は、波の浸食などで形成されノッチと呼ばれる琉球石灰岩です。恩納村ではこのノッチを「トベラ岩」と称し、航海の安全や夫婦円満、子孫繁栄を祈願したと言われています。

写真提供/万座毛株式会社
写真提供/万座毛株式会社

突端からの景色を十分堪能したら、また遊歩道を進みましょう。容赦なく太陽の光が照らしますが、絶え間なく吹く潮風のおかげか、さほど暑く感じません。「爽快」とはまさにこのこと。むしろ涼しいぐらいで、いつまでも歩けそうです。

見逃せない、館内の絶景スポット

写真提供/万座毛株式会社
写真提供/万座毛株式会社

岬を一通りお散歩したら施設見学へ。実はこちらにも絶景スポットがあるのです。3階に設けられた無料の展望デッキからは、遊歩道より高い位置からの眺望が楽しめます。

海の向こうに見えるのは本部半島。その左側には、かすかに伊江島(いえじま)のタッチュー(城山)の姿も。さらにこの展望デッキからは、なんと冬場の間に海を渡るクジラが見えることもあるとか。

展望デッキのある3階から2階へ降りると、まるでショッピングモールのフードコートのような場所がありました。

2階と1階には、沖縄そばなどの沖縄料理を楽しめる飲食店のほか、海ブドウなど恩納村の特産品を購入できるお土産店が並んでおり、万座毛見学者以外でも利用OK。もちろん見学後の休憩にもぴったりです。

写真提供/万座毛株式会社
写真提供/万座毛株式会社

2階には広々としたテーブル席が完備されていますが、さらに万座毛を楽しむならウッドテラスへ。遊歩道では飲食できませんが、テラス席なら好みの恩納村グルメとともに、抜群の景色を味わえます。屋根があるので、日差しが気になる方にもおすすめです。

夕日の名所、万座毛

写真提供/万座毛株式会社
写真提供/万座毛株式会社

万座毛は夕日の名所としても知られ、一年を通して水平線に沈む夕日が見られます。海と空が徐々に赤く染まり、しんと静まりゆく万座毛。太陽が明るく照らす日中とは全く異なる万座毛の美しさに、しばし時を忘れます。

写真提供/万座毛株式会社
写真提供/万座毛株式会社

「万座毛の雄大なパノラマは、何度見ても胸を撃たれます」と、水越さん。「万座毛の近くで働くようになった今でも、時々気分転換に訪れます。思い出の場所が、今では生活の一部になった幸運を感じますね」と、万座毛への想いを語ります。

200年以上も前に琉球王を魅了し、いまだに多くの人の心をつかんで離さない万座毛。沖縄特有の自然環境が作り出したこの名勝は、これから100年、200年先も、人間の営みとは関係なく、美しくこの場所にあり続けることでしょう。

施設情報はこちら

施設名
万座毛周辺活性化施設

住所
沖縄県恩納村字恩納2726

電話番号
098-966-8080

営業時間
4月~10月 8:00~20:00 
11月~3月 8:00~18:00 ※万座毛見学は日没まで

万座毛観覧料
100円(大人・子ども同額)※小学生未満無料

公式サイト
https://www.manzamo.jp/

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

仲濱 淳

沖縄支部 地域ナビゲーター
仲濱 淳

生まれも育ちも埼玉県。東京でテレビ制作会社や出版・イベント会社へ勤務するかたわら、海ナシ県で育ったせいか海への憧れが異常に強く沖縄病に罹患。沖縄の観光系企業への転職を機に13年前に移住し、Webマガジン、情報誌の編集を経て、フリーランスに。うちなーんちゅの夫と娘とともに、海がかろうじて見える那覇に住んでいます。