沖縄県恩納村

村の魅力が詰まった憩いの場「おんなの駅」

2022.05.27

この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たちからお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。今回は、沖縄県恩納村に佇むリゾートホテル「ルネッサンスリゾートオキナワ」の小橋川涼花さんに「おんなの駅 なかゆくい市場(恩納村農水産物販売センター)」を教えていただきました。

世界一サンゴにやさしい村を目指す恩納村

どこまでも続く青い空と海、南国らしい植物やおしゃれなカフェなど、日本屈指のリゾート地である沖縄でも特にリゾート感を満喫できるエリア「恩納村(おんなそん)」。観光地としての賑わいを見せる中、その素晴らしい資源を守っていく活動も盛んに行われ、2018年7月には、”世界一サンゴにやさしい村”を目指す「サンゴの村宣言」を掲げたことでも知られています。

自然と寄り添うリゾートホテルが「100年先に残したいもの」

そんな恩納村の一等地に佇む「ルネッサンス リゾート オキナワ」は、「ネイチャーライブラリー」をコンセプトとした自然と生き物に寄り添うリゾートホテル。最上階の接客を担当するクラブサービスオフィサー・小橋川涼花さんに100年先に残したいものを伺うと「おんなの駅 なかゆくい市場(恩納村農水産物販売センター)」を教えてくれました。

「おんなの駅はホテルから車で5分ほどの場所にあり、新鮮野菜や果物はもちろん、恩納村ならではの商品が豊富に揃っていて、行くたびに『今はどんな商品があるんだろう』とわくわくします。小さなお店が並ぶ屋台のような雰囲気も楽しいですよ」と小橋川さん。その賑わいを求め、早速お邪魔しました。

新鮮野菜や果物がならぶ産直市場

2004(平成16)年8月、恩納村仲泊(なかどまり)に誕生した「おんなの駅 なかゆくい市場」は、正式名称を「恩納村農水産物販売センター」と呼ぶ産直市場です。

仲泊はその名が示すとおり「本島のほぼ真ん中に位置し、旅の途中で泊まる場所」といわれているそう。沖縄の方言である「ゆくい(休憩する)」とからめ、「なかゆくい(中でゆっくりと)する道の駅のような休憩所」でありたいという願いを込めて「おんなの駅」と名付けたのだそうです。

メインである産直市場は、地元農家さんが丹精込めて作った旬の野菜や果物がずらり。所々にスタッフ手描きのポップが愛情たっぷりに立てられており、農家さんの人柄や手のぬくもりが伝わってくるようです。

ほかにも恩納村の特産品やおんなの駅オリジナルの加工品など、ここでしか出会えない商品が数多く販売されています。

たとえばこちらの「MEGUMIトマトスープカレー」は、おんなの駅で野菜部門リピート率No.1の「大城さんの贅沢トマト」と、おんなの駅のコラボ商品。

まるでフルーツのように甘くて濃厚なこだわりトマトを贅沢に使い、鶏肉、スパイスとじっくり煮込んだうま味たっぷりの人気商品です。

県内外から多くのファンが足を運ぶおんなの駅は、もはや恩納村のランドマーク。ですが、オープン当初は毎日閑古鳥が鳴く状態だったそう。立ち上げから携わる水野明美さんは「最初は村内38の契約農家からスタートしました」と当時を振り返ります。

38の契約農家からスタート!二人三脚で歩んだ道のり

「当時の恩納村は農業が盛んではなく、契約農家もほとんどが家庭菜園の規模感でした。だけど小規模だからこそ農薬をほとんど使わないといった、手間暇かけて作られた野菜も多かったんです。そんな野菜をたくさんの人に食べてほしいし売れるものにしたい。恩納村をもっと盛り上げたい。そんな想いから集荷サービスや農業の指導支援などを行うようになりました」

農家さんへの支援を行いながら、公民館などに商品を手売りしてまわることで、徐々に変化があったといいます。「商品が少しずつ売れるようになり、それが農家さんたちの喜びに繋がりました。趣味でやっていたお年寄りの方が見る見る元気になり、試行錯誤しながら野菜作りを探求するようになったんです」

そうしておんなの駅と農家さんが伴走した結果、現在の契約農家は県内約1000、恩納村だけでも約700もの数となり、多くの人に知られる人気スポットとなりました。

「最初の1年くらい、家の冷蔵庫は売れ残った野菜だらけでしたけどね」と苦笑する水野さん。だけどその時、恩納村の農家さんと一体となり野菜を販売したことが今のおんなの駅の原点なのだと、しみじみ語ってくれました。

ユニークなお店が揃うテナントの数々

そんな愛情詰まったおんなの駅。産直市場だけでなく、外には飲食を楽しめるテナントが個性豊かに立ち並びます。スポット紹介者の小橋川さんが「屋台のようでわくわくする」と表現した言葉どおりの空間。

たとえば恩納村で養殖された海ぶどうや県内で採れた新鮮なお刺身などを販売する「浜の家」は、おんなの駅オープンと同じ2006年からある老舗です。

オープン当初から人気なのが、ムール貝やホタテの「ウニソース仕立」。

大きな海産物に自家製のウニソースがたっぷりとのった贅沢なおつまみが、なんと150円〜というお手頃価格でいただけます。

屋台のような賑わいの中でも「琉氷(りゅうぴん)」は、トロピカルなかき氷と笑顔満天のスタッフがひときわ明るく、南国気分が高まるお店。

オープンしたのは「インスタ映え」という言葉もない2005年。「売れ残りや規格外のフルーツを商品にしたい」と、地元の農家さんとコラボする形ではじまりました。

そうして生まれたのが、氷いっぱいに果物が敷き詰められたトロピカルな巨大かき氷!実はここ、紹介者の小橋川さんが新入社員の頃に、県外から来た同期と一緒にかき氷を食べた思い出の場所でもあります。「かき氷の大きさとトロピカル感に、思わず笑顔になったのを覚えています」と語ってくれたこのサイズ。琉氷では「ハッピーサイズ」と呼び、家族や友人同士でシェアを前提に作られているのだとか。年々、少しずつサイズが大きくなっているそうです。

ほかにもさまざまなお店が五感を楽しませてくれますが、産直市場内にあるパン屋「アチココ」も、恩納村ならではの商品を販売しています。

こちらの「萬座(まんざ)バケット」は、村内の恩納酒造が製造する泡盛「萬座」のもろみ粕を配合して開発したもの。酒造りの過程で廃棄されるもろみ粕ですが、実はクエン酸やアミノ酸がたっぷり含まれているスグレモノ。資源を持続可能にしながらも、身体にやさしくおいしいパン作りを行っています。

恩納村の未来に寄り添い続ける場所として

あちらこちらで笑顔あふれるおんなの駅。水野さんに「100年先まで続いていくとしたら、どのような施設でありたいと思いますか」と訊ねると「これからも農家さんと密な関係を築きながら、恩納村のすばらしい自然を守り続ける存在でありたいです」と話してくれました。

その言葉通り、おんなの駅では産直市場の役割にとどまらず、さまざまな取り組みを行っています。たとえば個人で営む農家とホテルのシェフを繋ぎ合わせてコラボメニューの開発を促したり、恩納村の漁師と恩納酒造所、株式会社ONNA(おんなの駅)が3社共同で、海底で貯蔵した泡盛「珊瑚の海」を商品化・売上の一部を珊瑚再生支援の寄付にあてる活動を行ったり。

生まれる発想はつねに、恩納村とそこに暮らす人に寄り添うもの。「訪れるたびにワクワクする」と小橋川さんが言う正体は、地域とともに新しく、おもしろく、持続可能なまちをめざす活気や思いなのかもしれません。

施設情報はこちら

施設名
おんなの駅 なかゆくい市場(恩納村農水産物販売センター)

住所
沖縄県国頭郡恩納村仲泊1656−9

営業時間
10:00~19:00

※営業時間や休業日は店舗により異なります。
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

三好 優実

沖縄支部 沖縄ライター
三好 優実

沖縄県那覇市在住。香川県で生まれ育ったのち、大阪や東京で仕事中心の生活を満喫していましたが、沖縄旅行で「人」の魅力にはまり、仕事をあっさり手放して移住。1年くらいで別の土地に行こうと思いきや、早6年が経過しました。ライター歴は5年。