沖縄県恩納村

昔の沖縄をいつでも体験できる「琉球村」

2022.05.09

この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。今回スポットをご紹介いただいたのは、沖縄県恩納村にあるリゾートホテル「ホテルモントレ沖縄 スパ&リゾート」の田中司さんです。

琉球王国で育まれた文化を継承する、沖縄随一の人気観光施設

かつて沖縄は、「琉球王国」という400年以上続いた国でした。その王国で育まれた文化を伝承すべく、1982年に誕生した大型観光施設が「琉球村」です。

那覇から車で北上すること約1時間。恩納村(おんなそん)に9万5千平方メートルもの広大な敷地を有する琉球村には、国の登録有形文化財に指定された琉球古民家や泡盛の酒造所、水牛が働く製糖工場などが集まり、琉球王朝時代から続く文化を私たちに伝えてくれます。

「琉球村」を「100年先まで残したい」場所に選んだのは、恩納村を代表するリゾートホテル「ホテルモントレ沖縄 スパ&リゾート」の田中司(たなかつかさ)支配人。「多くの観光客が訪れる恩納村においても、ひと際賑わっているのが琉球村。いつでも沖縄の歴史や自然、芸能を体感できる貴重な場所です」と、魅力を語ります。

沖縄にはたくさんの観光スポットがあるなか、長年高い人気を維持している琉球村。なぜそれほど多くの人を魅了し続けているのか、その理由を探しに行きました。

昔ながらの集落へタイムスリップ

恩納村の森の中に広がる琉球村には、沖縄各所から移築された古民家が立ち並び、昔の沖縄の集落のような風景が再現されています。石垣が連なる路地を歩いていると、タイムスリップしたような感覚に陥るほどです。

園内に点在する古民家は全部で10棟。そのうち8棟が国の登録有形文化財に指定されています。民家は全て内部まで見学でき、コロナ禍以前は多くの民家を利用して、琉球舞踊や沖縄料理造りなどの文化体験メニューが開催されていました。

新型コロナウイルス感染症の影響があり、2022年1月の時点で体験メニューはストップされていますが、ちょっとしたアトラクションは実施中。例えば「旧玉那覇家(きゅうたまなはけ)」は大きな土間を備えており、スタッフさんがお茶を振舞ってくれていました。

「琉装(りゅうそう)」と呼ばれる琉球の伝統衣装に身を包んだスタッフが、「ひじるーちゃーぐぁ、うさがみそーれー(冷たいお茶を召し上がれ)」と、うちなー言葉で話しかけてくれました。

琉球村で働く人は、格好を真似するだけでなく沖縄の歴史もしっかり勉強しなければいけないとのこと。今ではあまり聞かなくなった「うちなー言葉」も難なく話せる方が多いそうです。園内の施設もスタッフも徹底して「昔の沖縄」を演出していることに、感動すら覚えます。

家の中に目を向けると、いたるところにかごや時計などの古道具が飾られ、往時の暮らしがしのばれます。暑い沖縄の夏でも涼しく過ごせる知恵なのでしょう、仕切りのない広々とした造りの畳間に、風がスーッと吹き抜けます。

こちらは広々とした土間。薪をくべて火をつけるかまどは全国的にほとんど同じだと思いますが、右の隅に並んでいる小さな白い器は何かわかりますか?これは、「ヒヌカン(火の神)と呼ばれるかまどの火の神様を祀っている道具。こちらでは、毎月一日と十五日に拝む習わしをしっかり守っているそうです。

琉球村の古民家には、昔の沖縄を学びに沖縄の小学生などが社会科見学に訪れることもあるとのこと。それだけ沖縄でも貴重な場所なのです。

沖縄の伝統文化を体感できる設備

9万平方メートル以上ある園内は、歩いて回るだけでかなりの運動になります。少し疲れを感じたころに見えてきたのは、大きな黒い牛でした。立派な角をはやしていますが、顔は優し気で、ゆったり草をはむ姿に癒されます。

この牛は「水牛」。沖縄では昔、サトウキビから砂糖を作るための道具「砂糖(サーター)車」を水牛に引かせていて、琉球村ではコロナ禍前まではその製糖作業も再現されていました。今は休止中ですが、水牛は働く必要がなくなったせいか、以前よりのんびりと暮らしているそうです。

次に立ち寄った場所が、1902年創業の「咲元酒造」という老舗泡盛メーカーの酒造所です。那覇からこちらに2020年に移転しました。

かねてより沖縄の文化の一つである泡盛を、自社で製造したいと模索していた琉球村。そんなとき、咲元酒造が出荷量減少や工場の老朽化から廃業を考えているという話が耳に届きます。そこで「ぜひ一緒に」と、咲元酒造へ提携と移転を打診。晴れて2020年に新しい工場が完成し、オリジナルの泡盛製造に力を注ぐことになりました。

臨場感あふれるエイサー演舞

泡盛工場見学の後は、園内の一番端、ジャングルのような林の中を進んだ先にある施設「きじむなぁ劇場」へと向かいました。こちらでは毎日2回、エイサー演舞が開催されています。

エイサーは旧盆に行われる沖縄の伝統行事で、琉球村ではオリジナルのエイサーとともに、琉球舞踊も披露されています。

画像提供:琉球村
画像提供:琉球村

「ドンドン!」と、胸に響く太鼓の音と、「イーヤーサッサ!」という勇壮な囃し言葉、そして大きな太鼓をものともしない軽やかな動き。後ろでは三線が演奏され、否応なしにテンションが上がります。

演舞が終わったら、テンポの早い沖縄民謡に合わせて手を振りかざして踊る手踊り「カチャーシー」が始まります。宴席のクライマックスとして踊られることが多いカチャーシーは、大団円への合図。一緒に踊りだす見物客も多く、賑やかな幕引きとなりました。

琉球村オリジナルのお土産

園内をぐるっと見学し、エイサーを見終わるまでの時間はおよそ1時間半。その後は園外に出て、お土産ショッピングタイムです。このエリアは園内へ入場しなくても自由に無料で利用できます。

沖縄伝統の焼き物「やちむん」工房などのお店だけでなく、陶芸やシーサーの色付けなどの体験施設、レストランがずらり。屋根付きなので、雨の日でも安心して買い物や食事を楽しめます。

琉球村おすすめのお土産は、泡盛コンテスト2019年金賞受賞した3年古酒と5年古酒。先ほど立ち寄った咲元酒造製の古酒で、ここでしか販売していない限定品とのこと。甘く濃厚な飲み口が特徴です。

もう一つのおすすめは、こちらも琉球村オリジナルの絵付けシーサーセット。シーサー、アクリル絵具、筆、パレットなどが一式揃っていて、すぐに自宅で絵付けを楽しめます。お子様の自由研究にぴったりとあって、夏休みは特に大人気。

沖縄文化を次世代へつなぐ架け橋に

建築物から芸能、食べ物、お酒まで、沖縄の伝統文化がギュッと凝縮し、いつでも触れて体験できる琉球村。近年は新型コロナウィルス感染症の影響で観光客が激減し、かつてない危機を迎えましたが、存続をかけてのクラウドファンディングを実施したところ多くの支援が集まったといいます。琉球村に対して強い思いを抱き、期待する人が多い証でもあります。

「ホテルモントレ沖縄 スパ&リゾート」の田中さんも「100年後も賑わい、沖縄の昔からの文化をいつでも体験できる場所であってほしい」と願うこの一大観光施設は、これからも沖縄の豊かな文化を、次世代へつないでくれるに違いありません。

施設情報はこちら

施設名
琉球村

住所
沖縄県恩納村山田1130

電話番号
098-965-1234

営業時間
10:00~16:00(最終入園受付15:00)※時短営業中

休業日
月~金曜 ※新型コロナウイルス感染症の影響で臨時休業日設定中。祝祭日は営業

入園料
16歳以上:1,500円  高校生:1,200円 小中学生:600円 6歳未満:無料

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

仲濱 淳

沖縄支部 地域ナビゲーター
仲濱 淳

生まれも育ちも埼玉県。東京でテレビ制作会社や出版・イベント会社へ勤務するかたわら、海ナシ県で育ったせいか海への憧れが異常に強く沖縄病に罹患。沖縄の観光系企業への転職を機に13年前に移住し、Webマガジン、情報誌の編集を経て、フリーランスに。うちなーんちゅの夫と娘とともに、海がかろうじて見える那覇に住んでいます。