山口県

開放感たっぷりの海景色が続く「R191」

2021.12.26

日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介するコーナー。今回スポットをご紹介いただいたのは、山口県で水産加工業を営む株式会社 山賀の山賀竜郎(やまが たつお)社長です。

海へ向かうその道は、非日常への入り口

下関市街地から北上する国道191号線(以下、R191)は、シーサイドビューが楽しめるドライブルートです。道は山口県下関市から島根県益田市を経由して、広島県広島市に至り、山口県の日本海側のまちをすべて横断しています。レトロなオレンジ色の気動車がゆっくり走る山陰線と、付かず離れずな距離を保ちながら併走していて、便数が少ない気動車に出会えるとワクワクします。そんな、ちょっとしたことがうれしくなる、非日常への入り口です。

最近は、沿道の“ローカルエリア”に、魅力あるスポットがジワジワ増加中。豊かな自然と、市街地まで車で数十分という利便性が魅力で、拠点を移す若い世代も増えているようです。

そんな「R191沿いの海の眺め」を、100年先に残したいものとして勧めてくれたのは、水産加工業を営む株式会社 山賀の山賀竜郎(やまが たつお)社長です。

懐かしいあの頃を思い出す、特別なエリア

株式会社山賀は海に面した彦島にあり、フグやノドグロといった下関が誇る海産物を扱っているとあって、海に対する思いは人一倍…と、そういった推薦理由かと思いきや、実はもっと個人的な懐かしさが理由にありました。「私の地元は、R191沿いにある下関市吉見(よしみ)地区なんです。今は水産加工業を経営する身ですが、実家は稲作とみかん園を営む農家。子どもの頃は、クワガタやカブトムシがどれだけとれたか友達と競い合ったり、夏の暑い朝にラジオ体操をしたり。そんなことを思い出しながら車を走らせ、開放的な海を眺めるのが好きですね」。

エピソードに惹かれ、私も実際に山賀社長と同じルートをたどってみたくなりました。目的地には、目の前が海というカフェ「Sig co.(シグコー)」を設定。ナビゲーションシステムに表示されたのは、下関市街地から約45分のルート。絶景を目指して、ドライブ旅のスタートです!

ドライブ途中も“ローカルエリア”の個性が楽しい

市街地を出発すると間もなく、迎えにきたかのようにカモメが青い海とともに現れました。気持ちよくスタートした後は、ふぐの薬味で有名な細ネギを栽培する安岡地区、のどかな田畑が広がる吉見地区、温泉が湧き出る川棚地区と、まちの個性を楽しみながら快適に走ることができます。

「Sig co.」があるのは、もともと漁村エリアだった小串(こぐし)という地区で、下関市民にも多くは知られていない穴場です。近くでは角島(つのしま)の人気が高く、残念ながら通り過ぎてしまうパターンが多いとか。私も、実際に足を運ぶのは初めてです。

鮮やかな青い世界で魅了する「小串マジック」

小串の集落に入ってまっすぐ進むと、青い世界が広がりました。それまで少し曇りがかっていたのに、どんどん晴れて、海と空の絶景を見せつけてくれます。本州の西端に位置する下関市の海沿いならでは! なんともドラマチックな変化で、思わず「小串マジック」と名付けました。

海沿いは小串浜公園広場として整備されています。この日は、きれいに刈り込まれた芝生で、子どもたちがサッカーをしていました。松が涼しい木陰を作り、東屋ではゆっくり保護者の方がくつろいでいます。シンプルに過ごすなにげない時間が、ここには似合うと感じました。

絶景の中にいる感覚に包まれる自然と一体化したカフェ

この旅の目的地「Sig co.」へ到着!絶景を目の前に佇むカフェは、2018年6月のオープン以来、自然と一体化した気持ち良さや、つい写真を撮りたくなるフォトジェニックなスイーツなどの魅力で人気を集めています。

「ここはもともと、古民家でした」と教えてくれたのは、店長の益田英治(ますだえいじ)さん。この場所や建物を生かせたらと話を受けたオーナーがここを訪れた際、美しい夕焼けにひとめぼれ。「店をやろう」と即決し、カフェ事業がスタートしたそうです。店名は、Sig co.。反対から読めば、小串です。「通り過ぎてしまう地区ではなくて、ここをきっかけに人が訪れ、地域活性につながればという思いを込めています」。

この日も、小さなお子さま連れのファミリーや、女子旅風の2人、落ち着いた大人のカップルなど、さまざまな人が心地よい時間を過ごしていました。自然と一体化したSig co.には、海のように大きな受容性があるのかもしれませんね。

一番人気は、爽やかな後口のチーズケーキ

おすすめは、「オレオチーズケーキ」。その名の通り、ココア味のクッキーが存在感たっぷりで、土台にも砕いたクッキーがザクザク入っています。しっとりしたベイクドチーズケーキは優しい甘さで口どけよく、不思議と後口が爽やか。一番人気なのも、うなずけます。

Sig co.ではコーヒーにもこだわっていて、東京の渋谷で展開するブランド「SUPREME(スプリーム)」の豆を使用。このコーヒーに合うように、同系列の焼き菓子店「MAISON BAKE(メゾン ベイク)」で特別にレシピ開発されたのが、この看板スイーツ、オレオチーズケーキだそうです。

太陽の光と海の色を映しこむ自家製レモネード

太陽が出て暑くなってきたこともあり、益田さんがドリンクに選んでくれたのは、自家製レモネード。無農薬の国産レモンを使ったレモンシロップは、酸味と甘みのバランスが良く、海を見ながらついゴクゴク飲んでしまいます。もう一つ注目すべきは、ストロー。「サトウキビの繊維で作られたストローです。丁寧に洗って、土に還すまでを責任を持って行っています」と益田さん。風景から始まったカフェは、環境に優しいスタイルを持っています。

自然のチカラが豊かな場所

小串の魅力を、益田さんに改めて尋ねました。「やっぱり、海ですね。良い意味で、現実から離れられる場所。自然のチカラが豊かだと感じます。夕日がゆっくり落ちていくのを見るのが好きです。毎日見ているのに飽きないし、スマホのフォルダが夕日写真でいっぱいです」。また、R191を通るのも好きだそうで、「ほかに近い出勤ルートはありますが、あえて海ルートを選びますね」とのこと。R191沿いの海には、癒しのチカラが満載のようです。

それぞれの絶景を探しに出かけよう

Sig co.を楽しんだ後、私も帰路のR191沿いでお気に入りの風景を見つけました。この日出会った「田んぼ」と「踏切」と「海」が一つのフレームに収まり、懐かしささえも漂う、今回の旅を表す風景です。海へと続く一本の道が、何かのストーリーを生み出しそうで気になりますが、そのゲートをくぐるのは次の機会にとっておきます。

ちなみに、推薦してくれた山賀社長は「川棚から土井ヶ浜のエリアが特に好き」と教えてくれました。R191は、たくさんの発見と感動に出会う特別なルート。日常を抜け出して、皆さんの絶景を探しに出かけてみてくださいね。

施設情報はこちら

施設名
Sig co.(シグコー)

住所
山口県下関市豊浦町小串2411-24

電話番号
070-3773-5533

営業時間
10:00〜サンセット

休業日
秋〜初夏は水曜、夏期は不定休

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

河津 梨香

中国支部 ふるさとLOVERSナビゲーター
河津 梨香

山口県萩市在住。広島で15年ほど編集やもの書きをし、地域おこし協力隊として山口県に帰ってきました。生活の中にある本質的なものに魅了され、その地域ならではの魅力や人々が紡いできたものを受け継ぎ、実践したいと思っています。萩のそんな部分に光を当てるリトルプレス『つぎはぎ』を、仲間3人と作っています。