
山梨県富士河口湖町
2021.09.19
日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介するコーナー。今回「100年先に残したいもの」ご紹介いただいたのは、徳島県美馬市にある株式会社MIMAチャレンジの翠大知さんです。
徳島県のちょうど真ん中くらいに位置する美馬市脇町。ここには、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている町並みがあります。
「うだつの町並み」と呼ばれるこの通りには、かつてこの地で商人として成功を収めた人々の住宅が建ち並んでおり、江戸中期から昭和初期にかけて築かれた風景がそのまま残されているのです。
この“商人の町”である脇町で地方創生プロジェクトに取り組んでいるのが株式会社MIMAチャレンジ。この地でコワーキングスペースやサテライトオフィス運営、地域の事業継承などを行うMIMAチャレンジの翠さんに「100年先に残したいもの」を伺いました。
「100年先に残したいのは、やはり弊社が活動しているこの『うだつの町並み』です。ここは、かつて城下町として栄え、藍の集散地として発展し、多くの豪商を輩出した町。“うだつが上がった”趣のある古民家が数多く立ち並び、今も多くの人を魅了しています」。
MIMAチャレンジの新入社員としてこの地に来るまでは脇町に縁もゆかりもなかった翠さんですが、町全体で温かく迎え入れてくれたことですぐにこの場所が特別なものになったのだとか。翠さんがそう話すうだつの町並みがどのような場所なのか、少しだけ巡ってみましょう。
先程から何度も出てきているワード「うだつ」というのは、切妻屋根の両端に設けられた独立した小さな屋根のこと。家に掲げられたうだつはもともと、防火壁でしたが装飾的な意味合いが大きくなり、さらに高価なものであったため、古くから成功者の証として知られてきました。有名な「うだつが上がらない」という言葉の語源はこのうだつからきています。
そんなかつての豪商たちの商家が建ち並ぶうだつの町並みですが、今は建物をそのまま受け継ぎ、様々なお店が営業している観光地となっています。当時の豪商の暮らしぶりを見学できる施設もあるのです。
それがこちらの吉田家住宅。吉田直兵衛が寛政4年に創業した藍商「佐直(さなお)」の商家です。今なお堂々とした姿で残る建築の素晴らしさもさることながら、驚くのはその広さ。商売が繁盛していくにつれ、増築を繰り返してどんどん巨大になっていったのだそう。
裏庭もこの通り。もはやどこからどこまでが敷地なのかよく分かりません。管理人さんに聞いてみると「見えているところ全部です」という恐ろしい答えが返ってきました。まさに格差社会の象徴のようなお家に少し落ち込むかもしれませんが(笑)、豪商と呼ばれる人たちの暮らしぶりは一見の価値ありです。特にこれから商売を始める人にとっては、とっても縁起の良い場所。吉田直兵衛の商才や運気にあやかれるかもしれませんよ!
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施設名
吉田家住宅
住所
徳島県美馬市脇町大字脇町53番地
電話番号
0883-53-0960
営業時間
9:00~17:00(最終入館16:30)
休業日
年末年始
うだつの町並みにはカフェやレストランなど飲食店もたくさん。そばごめ雑炊などご当地グルメが人気のお店もありますが、中には洗練されたオシャレイタリアンがいただけるお店も。今回は2020年にオープンしたばかりの「Punta」に行ってみました!
Puntaとは「先端」という意味なのだそう。こちらのイタリアンレストランをプロデュースするのは、ミシュランガイドでビブグルマンの評価を得た東京六本木の「ラ・ブリアンツァ」オーナーシェフ・奥野義幸氏。うだつの町並みの古民家で文字通り先端のイタリアンをいただけるお店になっています。
今回注文したのは、前菜もパスタもメイン料理もデザートも、ぜ〜んぶ好きなものを選べるランチコース「PUNTA Special Menu」です。個人的には前菜で選んだ「タコのパンツァネッラ」が大ヒット。元来タコ好きというのもありますが、前菜と言わずメインでがっつりいただきたい程に絶品でした。これだけでお腹いっぱいになっても悔いなし。
メインの肉料理で注文した牛もも肉は写真で見ても分かるとおり、美しいピンク色の絶妙な焼き加減です。肉料理は全て炭火で焼いているそうで、芳ばしい香りがお口に広がります。
そして何より、この古い町並みの中でこんなイタリアンがいただけるギャップ。それは何だか不思議な空気感を生み出しています。
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施設名
イタリアンレストラン Punta
住所
徳島県美⾺市脇町⼤字脇町39-1
電話番号
0883-52-8137
営業時間
ランチ11:00〜14:30、カフェ14:30〜17:00、ディナー18:00〜22:00
休業日
月曜
最後に訪れたのは、竹を使った工芸品を手作業で作っている「時代屋」。竹製の籠や筆など、様々な作品を販売していますが、中でも代表的なものがこちら。
阿波踊りの竹人形です。阿波踊りの繊細な手先足先の動きが見事に表現されています。竹は曲げたり捻ったりと細かな加工が可能なため、阿波踊りの流れるように美しい舞い姿を再現する素材として向いているのだといいます。脇町だけでなく徳島のお土産としてもGOODですね!
竹を加工して作られた耳かきも発見!竹は竹でも“本煤竹(ほんすすたけ)”を使った耳かきです。本煤竹とは古民家の天井に建材として使用されていた竹のことで、長い年月をかけて囲炉裏の煙で燻され硬質化し、独特の飴色に変色しています。もちろん時代屋のオリジナル商品ですが、現在はネットでのみ販売中です。
今どきなメニューを出すカフェやレストランが増えてきたうだつの町並みの中にあって、時代屋は一層ノスタルジック。その名の通り、古き良き時代を感じさせるアイテムが並んでいました。
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施設名
阿波踊り竹人形の里 時代屋
住所
徳島県美馬市脇町大字脇町124
電話番号
0883-53-1015
営業時間
9:30〜16:00
休業日
不定休
http://www.jidaiya.co.jp/
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
「100年先に残したいもの」ということでご紹介してきましたが、うだつの町並みはもうすでに300年も前から“残されてきたもの”です。それは、この地を発展させようと多くの人々が汗を流してきた歴史。だからこそ、翠さんはこう話します。「先人たちが代々受け継いで現代まで完璧な形で残してきたうだつの町並みを、私たちの事業活動を通じて100年後の未来の子どもたちのために残したいと考えています」
多くの人々が行き来したのは、かつてのこと。今でもなお、人を惹きつける魅力がこの地にはあります。その魅力が受け継がれる限り、100年先にもきっと変わらず存在し続けていることでしょう。そんなうだつが上がる町へ、あなたもうだつを上げる旅に出かけてみてはいかがですか?
四国支部 地域ナビゲーター
千葉 大輔
徳島県徳島市在住。フリーランスのフォトグラファー&ライター。猫好きだけど猫アレルギー。釣り好きの僕にとって海が近い徳島はとっても良い場所です。そんな徳島をみんなに知ってもらいたい! だから、写真や記事を通して徳島のワクワクやドキドキを発信していきます。