広島県廿日市市

皆で守り抜いてきた妹背の滝の美しい景観

2021.08.12

この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。
今回スポットをご紹介頂いたのは、大野沖の海岸で牡蠣の養殖業を営むマルツ水産の代表取締役社長・寺西智和さんです。

地元民に人気の散策&遊び場スポット

広島県廿日市市大野にある「妹背(いもせ)の滝」は、対岸に世界遺産の宮島「嚴島(いつくしま)神社」を臨む、広島県の南西部にある景勝地です。山紫水明な散策スポットとしてはもちろん、滝壺付近は流れも穏やかな浅瀬が広がっており、夏場には川遊びをする親子連れも多く訪れる人気の遊び場でもあります。

広島市街地から車で30分、またすぐそばに高速道路のインターチェンジもあり、駐車場も完備されているのでアクセスも良好です。

当たり前にある風景を100年先も残したい

今回、妹背の滝を「100年先も残したいもの」として推薦してくれたのは、大野沖の海岸で牡蠣の養殖業を営むマルツ水産の代表取締役社長・寺西智和さんです。妹背の滝は、寺西さんの自宅からも近いとあって、子どもの頃からよく遊びに来ていたといいます。

妹背の滝の入り口には、嚴島神社の摂社として推古天皇11年に創祀(そうし/最初にこの地に神様を祀った)されたと伝えられる「大頭(おおがしら)神社」が鎮座しています。

ちなみに写真の右奥に見える細い滝が落差約50メートルの雌滝、そしてその奥にあるのが冒頭の写真の雄滝です。このふたつを合わせて「妹背の滝」と称しますが、それぞれ源流は、雄滝が毛保川、雌滝はその支流の谷川とそれぞれ別の川なのだそう。

寺西さんは毎月1回、必ずこの大頭神社にお参りにくるそうで、お参りした後は滝まで足を運んで、しばらくボーッとした時間を過ごすのが楽しみなのだといいます。

「とにかく滝から流れる水がきれいで、ここに来ると癒されます。地元民にとっては当たり前にある風景だけれど、これからも皆に愛される涼スポットとしてずっと残ってほしいです」と話してくれました。

推古天皇の御代に由緒正しい大頭神社

今回は「妹背の滝」の見どころと「大頭神社」について、禰宜(ねぎ/神職の種類)の松原愛氣(まつばらあいき)さんに案内してもらいました。

まず初めに見せてもらったのが、拝殿に飾られた一枚の絵。これは毎年旧暦9月28日に行われる特殊神事「四鳥(しちょう)の別れ」を描いた絵です。

対岸の宮島弥山から親烏(からす)2羽・小烏2羽の合計4羽の神烏が来訪し、粢団子(しとぎだんご)を上げた後、親烏は紀州熊野に帰り、子烏はさらに1年間弥山に留まって、宮島で1年に1度行われる御鳥喰式に参加するとされています。



大頭神社ではこの神事以外も毎日、拝殿の脇の山を少し登ったところにある祠(ほこら)に粢団子をお供えしているのだとか。

昔からの言い伝えを守り、神事が粛々と続けられていることに感動しました。

興味深い話を聞かせてもらった後は、早速、滝の方へ。こちらの写真が本殿横の散策道沿い、対面の山頂から流れ落ちる雌滝です。見上げるほどの高さから流れ落ちる細長い滝の姿は、なかなか見応えがあります。

そのすぐ先、雄滝の手前に分かれ道があり、「展望台」という看板があります。この日は雨で足元があまりよくなかったのですが、「すごく近いので行って見ましょうか」という松原さんのお言葉に甘えて、案内してもらいました。

確かに、およそ100メートルほどの場所に、秘密基地のような小さな展望台がありました。

展望台に登ると、眼下に落差約30メートルの雄滝が見えます。地元民が「妹背の滝」と言う時は、大抵がこちらの雄滝のことを指しています。

上から覗くように見ると、ここがすぐそばまで車で気軽に来られる場所にあるとはにわかに信じがたいほどの秘境感が味わえます。

では早速降りて、雄滝の方に行ってみるとしましょう。

迫力満点の雄滝。滝壺は子ども達の格好の遊び場

花崗岩(かこうがん)の赤茶色の岩肌が、流れ落ちる滝水を何割り増しにも美しく魅せてくれます。初夏を迎える頃には、川辺は涼を求める親子連れやカップルで賑わいます。大きな岩をベンチや机がわりにしてくつろぐ姿もよく見られます。

清らかな水を満々とたたえる雄滝の滝壺付近の岩場には、小魚や小エビ、ヤゴが潜み、虫好きの子どもたちにとっても、格好の遊び場となっています。

滝に近づくとご覧の通り、大迫力の天然シャワー。こんな近くまで近づくことができる滝は、そうそうないのではないでしょうか!

滝壺から少し離れると、水面の高さがほぼ足首くらいまでの浅瀬が広がり(※場所によっては深みもあり)、夏場には小さなお子さんも水浴びを楽しむ姿が見られます。

ご覧ください。驚くほどの透明感!川底の砂の粒までくっきり見えます。足をつけてみると、想像以上にひんやりとしていて、「超気持ちいい!」。

100年先も守り続けたい、ここにしかない絶景

取材が終わりに近づいた頃、それまで降り続いていていた雨がだんだんと小降りになり、空がにわかに明るくなっていきました。ふと川辺に目を向けると、雨に濡れた木々の雫が薄日を照り返す中、川辺に佇む松原さんの姿がありました。

この美しい景観がここまで見事に残っているのは、多くの地元の人たちの尽力があってこそだと松原さんはいいます。私自身、何度か訪れたことのある場所でしたが、改めて神社の歴史に触れたり一つひとつの景色を丁寧に愛でていくことで、これまで以上に愛着が増しました。そして皆で守り抜いてきたこの美しい自然が、これから100年先もずっと残り続けますようにと、心の底から願わずにはいられませんでした。

施設詳細はこちら

妹背の滝
広島県廿日市市大野滝山
0829-30-3533(はつかいち観光協会大野支部)

大頭神社(おおがしらじんじゃ) 
広島県廿日市市大野5357
0829-55-0378

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

イソナガ アキコ

中国支部 地域ナビゲーター
イソナガ アキコ

広島県廿日市市在住。本とビールと、海が見える屋上が好き。少しゆるめの筋トレで心と体を鍛えつつ、瀬戸内のユニークなスポットと人をもとめて、自分史上最高にアクティブに稼働中。一次情報だけでなく、その奥・先にある魅力をお伝えできるような記事を心がけています。