和歌山県和歌山市

野生を楽しむ道の駅「FOOD HUNTER PARK」

2021.09.11

日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介するコーナー。今回は、和歌山市に本社を構える株式会社インテリックスの管理部 経営企画室の木村太郎さんより、「道の駅・四季の郷公園|FOOD HUNTER PARK」をご紹介いただきました。

自然に触れつつ、子どもから大人まで楽しめる道の駅

大阪市の中心街まで車で約60分、関西国際空港までなら約40分と、都心へのアクセスが便利な和歌山県和歌山市。それゆえに、自然に触れる機会が少なくなりがちな和歌山市民にとって貴重な場所として「道の駅・四季の郷公園|FOOD HUNTER PARK」を紹介してくれたのは、株式会社インテリックスの管理部 経営企画室の木村太郎(きむら たろう)さんです。

株式会社インテリックスは、和歌山市に国内最大級の縫製工場を有し、国内初の縫製工場直営のオーダーカーテンショップ「ジャストカーテン」を営む、窓装飾インテリア商品の製造・販売会社です。「窓辺から暮らしに彩りを」のビジョンのもと、一流ホテルから各家庭まで、低価格で高品質なオーダーカーテンを提供しています。

25.5ヘクタールの広大な敷地面積を持つ四季の郷公園は、もともと自然と農業をテーマに1991年に開園された和歌山市営の農業公園でした。「私にとっても、小さい頃に遠足や休日の遊び場として訪れた思い出深い場所です」と木村さん。2020年7月、四季の郷公園が道の駅に認定されると同時に、エントランス部分を中心にリニューアルが施され、道の駅のイメージを覆すユニークな場所に生まれ変わったというのです。

「リニューアル後も家族で度々訪れています。自然と触れ合い、子どもだけでなく大人まで楽しめる場所です」と木村さんにおすすめいただいた「道の駅・四季の郷公園|FOOD HUNTER PARK」を訪れました。

「Be Wild. 野生を楽しもう。」のもと誕生した5エリア

「道の駅・四季の郷公園|FOOD HUNTER PARK」は、木の神様として慕われる五十猛命(いたけるのみこと)を祀る伊太祁曽神社(いたきそじんじゃ)の近くに位置しています。神社側から北に伸びた一本道を進み、その先にある駐車場に車を停めてエントランスに向かうと、「道の駅・四季の郷公園|FOOD HUNTER PARK」の駅長・平松泰行(ひらまつ やすゆき)さんが出迎えてくださいました。

「当施設は『Be Wild. 野生を楽しもう。』をコンセプトに掲げ、自然と寄り添い自然から学ぶこと、できるだけ既存のモノを再活用すること、持続可能な取り組みをめざすことを大切にしています」と平松さん。その想いのもと誕生した、木の庭・火の食堂・水の市場・炎の囲炉裏・土の農園の5エリアをご案内いただきました。

木の庭|大地に根を張るシンボルツリーと風の構造物

まずは、入り口の中央に据えられたシンボルツリーが印象的な、木の庭から。シンボルツリーとなっているのは、紀伊半島をはじめとする温暖な土地に自生する常緑の高木「アコウの木」です。編むように絡み合った幹が大きな石を抱き抱えながら根を張る姿は、自然の持つ力強さをひしひしと感じさせます。

世界各国を旅して植物を収集し、依頼者が希望するコンセプトにぴったりの植物を提案することで有名な「そら植物園株式会社」代表取締役・⻄畠清順さんに、シンボルツリーのセレクトを依頼したそうです。

さらに、入り口の左手にあるスロープを上がり池のそばに近づくと、安永正臣さんと橋本知成さん、2人の作家による風をモチーフにしたモニュメント「風の構造物」が現れます。

飛行機の羽を連想させる人工物が、風を切りながら、時の流れの中で風化していくさまを表現した作品です。いつか風や鳥が植物の種を運び、人工物が自然へと還っていく変化の過程まで伝えることを狙いとしています。

火の食堂|食の原点を味わう炊所・焙所・焼所

次に向かったのは、四季の郷公園にもともとあった木造の建物をリノベーションした、火の食堂。レストラン「炊所(かしぎしょ)」と、カフェ「焙所(あぶりしょ)」、ベーカリー「焼所(くべしょ)」の3つのゾーンで構成されています。中央には、台風によって倒木した大木が利活用され、枝で羽を休める鳥たちのように人々が木のテーブルと椅子でくつろぎ、食事を楽しんでいます。木材は全て和歌山産を使用しているそうです。

醤油醸造の発祥の地であり、鎌倉時代から続く金山寺味噌造りの文化や、世界農業遺産に認定される梅産業を持つなど、日本の食の原点が集まっていると言っても過言ではないほど、食の歴史が深い和歌山。この食堂では、そんな和歌山の食材をふんだんに使用したさまざまな料理を味わうことができます。

炊所の一押しメニューは「四季の恵み定食」です。旬の野菜や魚介類を取り入れているため、季節ごとに内容が変わります。私がいただいた夏編には、「加太ひじきと自家製ツナの梅サラダ」や「金山寺味噌とゴーヤと新生姜の肉巻き」「夏野菜の豚汁」など、爽やかな夏を堪能できるおいしい12皿が揃っていました。

炊所で提供されるごはんは、「おくどさん」と呼ばれる手づくりの大きな竈(かまど)で炊かれているため、ふっくらとした甘味のあるごはん片手に、思わず会話そっちのけで食事のお箸が止まらなくなります。

食堂のプロデューサーは、源じろう(通称)さんこと半田雅義さん。紀北を中心に、複数の空き物件を自らリノベーションし、地元の人々に愛される飲食店を運営しています。株式会社インテリックスの木村さんも「源じろうさんの手掛けられるお店はどれも素敵ですよね」と絶賛されていました。

その源じろうさんの熱烈なラブコールにより、映画『かもめ食堂』やテレビドラマ『深夜食堂』のフードスタイリングにも携わった料理研究家の飯島奈美さんが、炊所のメニュー開発に協力されている点も見逃せません。

炊所は11:00〜14:00のみですが、焙所と焼所は9:00〜17:00でオープンしています。サイフォン式で淹れられた自家焙煎のコーヒーと一緒に、出来立てのドーナッツを食べるひとときは堪りません。毎朝、手づくりの石窯で焼き上げる自家製のパンも絶品。パンを購入するためだけに施設を訪れる人もいるといいます。

平松さんに「もっちりずっしりとした『まるもち食パン』も評判ですが、時間が経ってもしっとり甘い『もっちり食パン』がリピーターの多い隠れた人気メニューです」と教えていただき、食べ比べてみたくなり両方購入。甲乙付けがたいくらい異なる良さがあって、どちらもおいしかったです。

水の市場|和歌山の特産品と自然に優しい仕組み

続いてご案内いただいたのは、水の市場です。和歌山県の農家が手掛ける野菜や果物、和歌山名物の商品、和歌山の生産者とコラボしてつくられた50種類以上のオリジナル商品などが販売されています。本来なら何軒もめぐらないと手に入らない和歌山を代表する品々を、こちらでまとめて購入することができます。

フードロスを防止するために、水の市場で販売している食材は火の食堂で積極的に使用し、さらに「道の駅・四季の郷公園|FOOD HUNTER PARK」が窓口となって和歌山市内各所に販路の拡大も行っています。

商品だけでなく外観にもご注目。隣接する池の気化熱によって起こる風の流れを利用し、屋根のてっぺんからぴょんと生えたシルバーの羽「ウインドカウル」から暖かい空気が抜けることによって、店内の空気を自然循環させる仕組みです。

もう一つの注目ポイントとして「西洋の歴史的建築物で見かける『ガーゴイル』をご存知ですか? 生き物の形を象った彫刻の口から雨水を排出する雨どいです。水の市場でも雨の日を楽しんでいただこうと、雨量により水の描く模様が変化する円錐のガーゴイルを取り付けているんですよ」と平松さんは教えてくれました。

炎の囲炉裏|自然に囲まれ、手ぶらで気軽にBBQ体験

続いて、直径約3mの大きなキャンプファイヤーが特徴的な、炎の囲炉裏へ。クローバーが群生する広い敷地に、アメリカンインディアン式のテント「ティピ」が備え付けられたBBQエリアです。

炎の囲炉裏で使用しているアウトドアグッズのセレクトは、和歌山県かつらぎ町に本社を構える関西最大級のアウトドアショップ「Orange(オレンジ)」の店長・山本健介さんに協力いただいたそうです。

火の囲炉裏の特徴は、事前の予約をすれば、手ぶらでBBQ体験ができること。チャコールグリルやトング、カッティングボード、割りばし、紙皿、紙コップなどの道具一式が用意されます。さらに、和歌山県の特産品である高級和牛・熊野牛のステーキや、ジビエ肉のサルシッチャ(ソーセージ)、野菜セット、カンパーニュなどが揃ったフードセットやドリンクの準備も依頼することができます。

BBQの場所だけ予約して、水の市場で当日自由にフードやドリンクをセレクトするのもOKとのこと。「水の市場でお肉さえ購入いただければ、その他の食材は持ち込んでいただいて大丈夫です」と平松さんは話します。

土の農園|農家さんに教わり、みんなで農業体験

最後にご案内いただいたのは、土の農園です。耕作放棄地や空き家などの地域課題を解決するために地域コミュニティの活性化に取り組む、地元の「NPO法人さんどう」の協力のもと運営される体験農園です。約40区画ある畑を1区画ずつ1年間借り、プロの農家に栽培方法を教わりながら、種まき・苗植えを年2回行い、年間を通じて25種類ほどの無農薬野菜を育てるというものです。農業に必要な道具も種苗も全て用意されています。

加えて、畑の周辺を囲む竹林で行うタケノコ掘りや、収穫した野菜を使った料理教室、近隣の田んぼで行う田植えや稲刈り、カカシづくりなど、農園利用者限定のさまざまなイベントが春夏秋冬で開催されています。

農業利用者と同じ目線で体験して農業の魅力を広く届けるために、「道の駅・四季の郷公園|FOOD HUNTER PARK」としても1区画を借りて野菜を育てているといいます。

「火の食堂や炎の囲炉裏などで出た生ゴミを有機肥料に変え、土の農園で利活用し、そこで収穫できた無農薬野菜をまた食材として提供する。まだ少しずつではありますが、こういった自然に寄り添った循環にも取り組みはじめています」と平松さん。なんと、先ほど食べた「四季の恵み定食」の夏野菜の一部も、農園で収穫されたものだそう! おいしさにとどまらない、さらなるこだわりが潜んでいました。

地域の人々と一緒につくる、持続可能な暮らし

これらの5エリアに加えて、公園の中央にある既存の施設「四季さい館」をイベント会場として生かし、毎月第3土日にキッチンカーが並ぶマルシェや、サックスプレーヤーを招いた音楽イベント、ハーブの知識を学び味わうイベントなど、地域の人々による持ち込み企画を歓迎しながら、多数のコラボ企画を開催しています。

「当施設があるのは、地域の人々のご協力のおかげです。今後も1人1人の個性が表現できる場所としてご活用いただけたら嬉しいですね。豊かな自然を最大限に生かし、子どもから大人まで、自然の魅力や自然に寄り添う暮らしを改めて知り、より楽しく体験いただける場所にしていきたいと思います」と平松さんは微笑みました。

多くの人々の想いと和歌山らしさが詰まった「道の駅・四季の郷公園|FOOD HUNTER PARK」。自然と共にある持続可能な世界を目指し、あなたもここで「Be Wild. 野生を楽しもう。」な体験をしてみませんか?

施設情報はこちら

道の駅・四季の郷公園|FOOD HUNTER PARK
和歌山県和歌山市明王寺479-1

電話番号
・産直棟    :073-499-4370
・兼用ファックス:073-499-4372
・レストラン棟 :073-499-4270

営業時間
平日 10:00~17:00
土日祝 9:00〜17:00
※新型コロナウイルス感染症の影響で変更になる場合があります。

年中無休(12月30日〜1月3日は休み)

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

前田 有佳利

近畿支部 ゲストハウスを旅する編集者
前田 有佳利

全国200軒以上のゲストハウスを旅する編集者。WEB「ゲストハウス情報マガジンFootPrints」代表。書籍『ゲストハウスガイド100 -Japan Hostel & Guesthouse Guide-』著者。和歌山市在住。理想の商店街をつくる2日間のマーケットイベント「Arcade」や「和歌山移住計画」のメンバー。