高知県室戸市

大地誕生の地で室戸キンメ丼を堪能しよう!

2021.09.03

日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介するコーナー。今回は、四国ナビゲーター・川崎萌さんご自身の「100年先に残したいもの」をご紹介します。それは、高知県室戸市の「室戸キンメ丼」です。

今室戸市はキンメ丼ブーム!

この丼の上に鎮座する肉厚で鮮やかなの魚の名前をご存知ですか?これは高知県の東部に位置する室戸岬の近海で水揚げされる「金目鯛」。「鯛」という名前がついていますが、深海魚の仲間で、近年ここ室戸市において空前の「キンメ丼ブーム」なるものを巻き起こしている今回のお話の主人公です。

まだまだ知られていない高知の魅力を届けたい!

皆さん、こんにちは!私は、海と山と川に囲まれた自然豊かな高知県に暮らす四国ナビゲーターの川崎萌です。高知県には自然が豊かだからこそ楽しめるグルメやお酒、レジャースポットが満載です。「高知には何も無い」と嘆く県内の若い人たちや、まだ高知に来たことのない全国の方に、少しでも私の生まれ育った地元高知の魅力をお届けしたいと県内各所へ車を走らせています。

今回紹介する室戸市のキンメ丼もそんな活動の中で出会った絶品グルメのひとつ。室戸市ならではのダイナミックな自然形態だからこそ食べられる金目鯛、みなさんは食べたことがありますか?

ご飯の前に室戸岬を散策しよう!

暖かいイメージの高知県の中でも、特に温暖な亜熱帯気候の特性を持つ室戸市。室戸岬周辺にはハマアザミをはじめ、亜熱帯性の植物が自生しています。中でも特徴的なのがこちらのアコウの木。岩を抱きしめるように根を張り、空を包むように枝を広げる姿はとても神秘的で、しばらく木の前で立ち尽くしてしまうほど。

地球の息吹を感じる場所、室戸岬

室戸岬一帯は「大地誕生の場所」とも言われていて、室戸岬を含む室戸市全域が2011年、世界ジオパークネットワークに加盟しました。

一般的に「ジオパーク」と聞くと、なんとなく自然がたくさんあって重要な地形や地層のある場所というイメージを持ちますが、土地だけでなく、その上に広がる生態系や人々の暮らし、食文化などを大切に守って地域振興に活かす取り組みのことを丸ごと「ジオパーク」というそうです。今回紹介するキンメ丼も、栄養豊富な海洋深層水が育む豊かな漁場で獲れるジオパークの恩恵を受けた室戸市の食文化のひとつなんです。

キンメ丼を食べにいく前にマップでお店をチェック

かつては高知県なら比較的どこでも食べられる鯨料理やカツオが室戸市でも主流でしたが、今や時代は金目鯛。室戸市全域で金目鯛を推していて、「室戸に行ったらキンメ丼」という流れが定着し、室戸のキンメマップなるものまで作られています。提供店や室戸世界ジオパークセンターをはじめ、観光案内所や道の駅で配布しているこのキンメマップ。思わず手にとってしまうかわいさですよね!

室津港を望む港前に佇む料亭へ

今回訪れたのは、キンメ丼を提供しているお店の中でも歴史あるお店「料亭花月」さん。大正14年創業で、現在のお店は昭和42年に移転リニューアルした建物です。歴史を感じる佇まいに緊張しますが、若いお客さんも多いことと、室戸キンメ丼はどこで食べても一律1700円なのでご安心を。

こちらは店内の様子。細やかな格子や欄間の装飾は現代ではお願いできる大工さんも少ないため、大切に使っているそうです。屋号にも掲げている通り、元々は料亭として会食や宴会に来たお客さんをおもてなしする夜のみ営業のお店でしたが、昨今のキンメ丼目当てのお客さんのために昼間も営業するようになり、今ではすっかりお昼がメインになりました。

今回取材に対応していただいたのは店主の山村さんです。一度は地元を離れて東京でサラリーマンをしていたものの、35才のときにUターン。魚の捌き方から料理のノウハウを修行し、現在は三代目店主としてお店を切り盛りしています。

「老舗の味と雰囲気は守りつつ、今の時代に沿った営業をしていかないとね。一時期は昔のようなお客さんの出入りがなく落ち込んだときもありましたが、室戸キンメ丼提供店舗に参入してからは年間に2万3000人のお客さんが足を運んでくれるようになりました。若い人たちへの認知度も上がって、カップルやファミリー層が増え、昔とはまた違ったお店の雰囲気を楽しんでいます」と話してくれました。

使用するのはその日獲れの金目鯛

本来なら深海を求めて沖合まで船を出して獲れる金目鯛ですが、船を出すと10~15分ほどで深海が現れる室戸の独特の地形により、漁場が近く日戻りで船が帰ってくるので、鮮度抜群の金目鯛が手に入ります。山村さん自らが目の前の漁港へ足を運び、使う魚を競り落します。

室戸沖の金目鯛の漁獲量は西日本1位で、個体も大きく、真鯛よりも高値が付くそう。この日の金目鯛もグビグビ(高知では鮮度のいい魚をグビグビと言います。)でした!

うっすらと脂の乗った金目鯛の甘さを感じるキンメ丼!

見てください、この色鮮やかな丼!正式名称を「室戸キンメ丼」といい、金目鯛の照焼きと地魚の刺身を乗せ、各店舗独自の金目鯛のダシをつけ、高知県産の具材にこだわったものを提供する定義があるとか。花月さんでは、金目鯛のアラを使った汁椀も付いてきます。お料理と一緒に食べ方の紙もいただけるので今回はそれに沿っていただきました。

ちなみに、金目鯛は白身魚ですが、鮮度の良いものを刺身にするとうっすら桜色の身が現れるんですよ!花月さんの提供する刺身もきれいな桜色でした。

まずはそのままいただきます。この日は、金目鯛の他に、ヒラマサとブリが乗っていましたが、地魚は季節によって変わるそうです。照焼きもお刺身もどれを食べても肉厚でプリプリ!うっかり完食してしまいそうになるのを我慢して、丼の半分くらいまで食べて一度箸を置きます。

お次は食べかけの丼にあっつあつの金目鯛のダシを投入~。フワッと鼻を抜けるダシの香りがたまりません。さっとご飯をダシに沈ませて、熱いうちに無心でかき込みます。ダシ茶漬けってこんなにおいしいものだったんですね。残っていたダシも追加してペロリ完食。

帰る前にレジ横にあるくじ引きもぜひ

実は今、室戸市内でキンメ丼と並んで注目を集めているのがお魚のくじ引き。室戸市で水揚げされるブリ、サバ、しゅもくザメなど、魚をモチーフにしたぬいぐるみが当たるくじ引きが市内4ヶ所で一律1000円で引けて、1〜4等までサイズ違いで展開しています。ハズレなしで必ずどのサイズかは当たるので、集めている人も多いはず。花月さんでは金目鯛のくじ引きを用意していて、私は4等でした。ちなみに、家にブリとしゅもくザメがいるのでこの子は3匹目。丼もくじ引きも街ぐるみで盛り上げているのが楽しいですよね。

深海の奇跡を体感しにキンメ丼を食べに来て!

高知切っての港町のひとつ室戸市には沢山の漁港があり、起伏に富んだ海底地形と栄養豊富な海洋深層水に恵まれ、豊かな漁場が育つ街でもあります。かつては捕鯨基地と呼ばれていた場所ですが、今また新たに「室戸ユネスコ世界ジオパーク」として全国から注目を集めるようになりました。そんな室戸市が「金目鯛の水揚げ西日本1位の街」ということはまだまだ全国では知られていませんが、深夜に出港した船が朝方には港に戻り、その日のうちに釣り上げた金目鯛を食べられるのは深海がすぐそばにある室戸ならでは、なのです。 

そして、今だけでなく将来的にずっと漁ができるようにと敢えて漁獲量を調整し、「持続可能な漁」を行うことも室戸ユネスコ世界ジオパークの取り組みの一環です。ただ美味しいだけではない自然と歴史と想いの詰まった「室戸キンメ丼」、わざわざ食べに行く価値大アリです!

施設情報はこちら

施設名
料亭花月

住所
高知県室戸市室津2586

電話番号
0887-22-0115

営業時間
11時~13時30分, 17時~21時(月〜土曜)、11時~13時30分(日曜)


無休

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

川崎 萌

四国支部 マルチフォトライター
川崎 萌

高知県いの町在住。おいしいものを追いかけ、絶景スポットを巡りながら、地元・いの町を中心に高知県の情報発信のお手伝いをしています。専門的なお話や自分の感じたことを、初めて記事に触れる人に分かりやすく伝えることを大切にして取材をしています。