香川県坂出市

お遍路道の癒しの名所「ところてん茶屋」

2020.10.01

この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。
今回登場いただくのは、「醤油」を始めとした各種だし・つゆの製造を行う老舗食品メーカー「鎌田醤油株式会社」です。

江戸時代から続く坂出のものづくり

香川県坂出市は、沿岸に広がる工場地帯などの近代的な面がある一方で、美しい島々が連なる瀬戸内海や、讃岐富士と呼ばれる飯野山をはじめとしたのどかな風景など、たくさんの魅力的な顔を持った土地です。また、江戸時代から「讃岐三白(さぬきさんぱく)」と呼ばれ盛んに生産されてきた「綿」・「塩」・「砂糖」のひとつである塩の名産地でもあり、この場所では古くから塩が生かされた加工品が多く誕生してきました。

今回の「100年後まで残したい場所」を紹介してくれるのは、そんな加工品のひとつである「醤油」を始めとした各種だし・つゆの製造を行う老舗食品メーカー「鎌田醤油株式会社」。1789年(寛政元年)創業の鎌田醤油は、230余年もの間世代を超えて愛されてきた地元が誇る老舗で、香川県民の食卓にはなじみ深い存在です。地域に根ざしてきた鎌田醤油が思う、100年後まで残していきたい場所とは一体どんなところなのでしょうか?

250年以上続く老舗茶屋「清水屋」

やってきたのは、坂出市西庄町の「清水屋(きよみずや)」。国道11号から少し入った細道を抜け、山と木々に囲まれた場所にひっそりと佇むところてん茶屋です。夏には涼を求める地元の方や多くの観光客でにぎわい、春や秋にはちょうどいい気候の中、近くの寺院などをのんびり散策できるスポットでもあります。

清水屋は、鎌田醤油と同じく江戸時代の1764年(明和元年)に創業した老舗で、坂出市という街で共に長い歴史を歩んできたいわば同志。同じ街で2世紀を超えて紡がれてきた絆が、そこにはあるようです。

伝説の霊泉「八十八の清水」

茶屋の目の前にある池からは、水が流れる音が聞こえてきます。この水の正体は、「八十八(やそば)の清水」。この地には昔から伝わる霊水が湧いており、古くから地域の方に親しまれ、大切にされてきました。

「八十八」の名の由来は、約1900年前から伝わる「悪魚伝説」から。当時地域を脅かしていた悪魚を退治する際、毒にあてられた88名の兵士がこの水によって蘇生したことにより、「八十八の清水」と呼ばれるようになったのだとか。

この辺りは昔海が近く、材料となる天草が多く採れていたそう。豊富に湧いていたこの清水と、海の恵みがすぐ側にあったことから、清水屋のところてん作りが始まったとされています。

国産天草使用の手作りところてん

清水屋では、注文すると目の前でところてんが出来上がる瞬間を見ることができます。ところてん突きから出てくる様子を見て「おお〜!」と喜ぶお客さんの声に、こちらまで顔がほころんできそう。家庭ではなかなかできない体験は、この場に足を運んだからこそ味わえる特権ですよね。

創業当時から変わらぬ味『八十八名物 ところてん』

透き通ったところてんに酢醤油を垂らしていただくのが、こちらの一番人気「八十八名物ところてん(辛子酢醤油味)」。

そんな清水屋自慢のところてんのこだわりは、「素材」と「昔ながらの製法」。国産の天草にこだわり、高級品とされる春摘みの一番草を使用することで生まれる、ほのかな磯の香りと上質な粘り気が特徴です。平釜を使用した昔ながらの製法によって、創業当時から変わらない味わいも楽しめます。

こちらの「くずもち風ところてん」もぜひご賞味あれ。きな粉と黒みつ・抹茶みつをかけていただくこちらのメニューは、濃厚な甘いみつとキリッとしたところてんの絶妙なバランスがクセになる、デザート感覚で食べられるところてんです。甘いのにヘルシーなところも、罪悪感なく食べられて嬉しいですよね。

継がれてきたおもてなしの心

当時の街道沿いであり、四国遍路のお遍路道でもある場所に位置する清水屋は、峠の休憩所として古くから多くの通行人を接待してきました。かつてはところてんのほかに、スイカや焼酎を八十八の清水で冷やして客をもてなしていたという史実も残っているそう。四国四県、弘法大師・空海ゆかりの八十八ヶ所の寺院を巡礼する四国遍路ですが、現在と比べて交通機関が整わず悪路も多い時代、清水屋の存在が歩き疲れた彼らの心身を癒したことは想像に難くありません。突然の通り雨の中来店したお客さんに傘を自然に差し出す様子を見て、この地で脈々と継がれてきたおもてなしの心に思いを馳せます。

歴史があるこの場所と味を守っていく

世代を超えて継がれていく場所と味、そしてそれを支える人。8代目として清水屋を守り続けているのが、優しい笑顔が素敵な筒井ご夫婦です。
「坂出市は、瀬戸大橋や海が日常の一部になっている素敵な街。史跡が多いのも私たちのおすすめポイントです。坂出を訪れた際は、散策がてらぜひのんびりしていってくださいね」

古い伝統を守りつつも、「新しい学びが欠かせない」と話す筒井さんは、毎年新メニューの開発に取り組んでいるそう。地域の方に広く長く愛され、その歴史を大切にすると同時に未来もしっかり見据えていくその姿は、鎌田醤油の「伝統を守りつつも進化を忘れない」という志と通じるものを感じました。その土地の恵みを受け、生まれ、そして育まれた鎌田醤油と清水屋の歴史は、これからもその思いとともに継がれていくのでしょう。

<今回の旅スポット>

清水屋(きよみずや)
香川県坂出市西庄町759-1
9:00〜夕暮れ(夏季〜18:00、冬季〜16:00)
10月・11月の日曜・祝日、12月〜3月中旬は休業
0877-46-1505

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

山田 芽実

四国支部 香川県ライター
山田 芽実

香川で生まれ育ち、米国・京都・香川・東ティモールを経てまた香川在住。地元の「すてき」をゆるっとズバッと発見中。絵を描いたり、デザインをしたり、写真を撮ったりしています。