岡山県倉敷市『倉敷アイビースクエア』

ノスタルジーを感じる日本遺産に泊まる

2022.04.19

岡山県 × 倉敷アイビースクエア

日本には旅の目的地になるホテルや、ふるさとに帰ったような気持ちになる旅館があります。この記事では、人々の記憶に残る「とっておきの宿」をふるさとLOVERSナビゲーターが訪問し、その魅力をたっぷりとご紹介します。今回は近代建築の名手・浦辺鎮太郎が設計した紡績工場の建物をできる限り残したノスタルジーを感じる「倉敷アイビースクエア」です。

近代建築家・浦辺鎮太郎が設計した紡績工場跡のホテル

岡山県倉敷市の倉敷駅から徒歩約10分。風光明媚な街並み「倉敷美観地区」は多くの観光客でにぎわう岡山で最も人気の高い観光地のひとつです。今回ご紹介する「倉敷アイビースクエア」はその倉敷美観地区にあります。明治時代に紡績業が盛んだった倉敷で、「倉敷紡績所(現クラボウ)」の本社工場として、岡山県出身の建築家・浦辺鎮太郎氏が設計した建物です。平成19年(2007年)に国の「近代化産業遺産」、平成29年(2017年)には文化庁が定める「日本遺産」の構成文化財に認定されています。

文化財として楽しめる宿泊施設だけではなく、備前焼きなどの陶芸体験、倉敷の工芸品や民芸品、銘菓などのお土産を購入できるショップ、地元の旬の食材を使った料理が食べられるレストランやバーなどもある複合施設として、倉敷観光の拠点となっています。

見どころ満載!フォトジェニックな館内

今回はそんな「倉敷アイビースクエア」に泊まってゆっくりと堪能してみました。1973年に建物の意匠を受け継いで複合施設に生まれ変わった「倉敷アイビースクエア」。館内を散策しているとフォトジェニックなスポットがいっぱい!思わずカメラを向けたくなります。まず、エントランスから入ってフロントを見上げてみると吹き抜けのような天井が!昔の建物がそのまま利用され、柱や半円形のドアがとても特徴的でノスタルジーを感じます。

ノスタルジーな雰囲気は、建物のディテールを残しているからこそ醸し出されるもの。例えば「レストラン蔦」の窓ガラスにはまるのは、一枚一枚手吹きの「昭和ガラス」。ガラスの製造技術が足りなかったため、ゆがみや泡などが入っていて、それが現代では味として評価され、希少価値の高いものになっています。取材した日は12月だったため、昭和ガラスに映り込むクリスマスイルミネーションが素敵でした。

こちらは、宿泊した人にしか見ることのできない、館内からみた中庭の様子。中世のヨーロッパを思わせる絵画のような景色に出会えます。まるで絵本のような世界に心が踊ります。

施設の名前の由来でもあるように、建物は蔦(アイビー)で覆われています。工場の時代、空調目的で植えられたという蔦の風景は、春から夏にかけては緑が美しく、秋は紅葉が見事です。訪れた日は、終わりがけの紅葉でしたが、この時期にしか見られないものを発見しました。普段は蔦の葉で覆われて見ることのできないレトロなオブジェが、赤い葉っぱからさりげなく顔をのぞかせている様がかわいらしく、思わずパシャリとシャッターを切りました。

木のぬくもりを感じる明るい部屋

宿泊した部屋はデラックススーペリアツイン。岡山の温暖な気候をイメージした、木の素材が生かされた自然な雰囲気の空間になっています。のこぎり屋根を活かした高い天井が部屋全体を明るくしてくれ、ゆっくり、リラックスした時間を過ごせます。ほかにもエコノミーツイン、スタンダードツイン、ファミリールームといった部屋が用意されています。また、大浴場もあるので、湯船で足を伸ばせたので、旅の疲れもスッキリ!心地よく眠ることができました。

瀬戸内の旬の素材を生かした朝食を

朝食は「レストラン蔦」へ。こちらも紡績工場の面影を残すクラシカルな雰囲気です。先ほど紹介した「昭和ガラス」を眺めながら食事をするのがおすすめ。照明のシェードもレトロで、昔ならではの建物が古き良き時代を感じさせます。

写真提供/ 倉敷アイビースクエア
写真提供/ 倉敷アイビースクエア

朝食はビュッフェ形式で瀬戸内の旬の食材を使った約30種類の和洋折衷の料理が準備されています。また、「ままかり(一般的には”ザッパ”という魚でまま(飯)がなくなり、隣の家からまま(飯)をかり(借り)てまで食べたことが語源となっている)」といった倉敷の郷土料理も登場。

その他、気軽に楽しめるランチや、本格的なコース料理が楽しめるディナーも充実していますが、特にランチでは、倉敷の伝統料理である「隠し寿司(見た目を質素にし、豪華な具材をお重の底に隠してあるお寿司)」が人気です。

施設内で備前焼体験を

宿泊中に楽しみたいのが、「備前焼体験」。「倉敷アイビースクエア」敷地内の工房「愛美工房」で陶芸体験を楽しむことができます。備前焼の聖地「備前市」(倉敷市から車で1時間半程度)まで行くには時間がない旅行客にとってはなんともありがたい!

一番人気のコースは「備前焼体験」。備前粘土を使ってコップやお皿を作ります。時間は11時〜、13時〜、15時〜で所要時間は2時間程度。陶芸が初めてでも、最初にしっかりと説明を受け、最後まで担当スタッフにサポートしてもらえるので安心です。世界に一つだけの備前焼が作れます。焼き上がった作品は、約2カ月後に宅配で届くのでお楽しみに。

他にも、掻き落とし体験(粘土を道具で引っ掻いて模様を出し素朴なタッチに仕上げる)や磁器の絵付け体験(青い絵の具やカラーパステルを使って絵を書く)コースなどがあります。

ノスタルジーなフォトスポットの宝庫

紡績工場当時の面影を残したレンガ壁の外観や、特徴的な半円形の窓。それ以外も施設内のありとあらゆるところにフォトジェニックなスポットがあり、施設内を散策するとまるで宝探しのような気分が味わえます。江戸時代の風情がそのまま残る倉敷美観地区内にあるため、宿泊中もずっとタイムスリップした気分に。季節や時間帯によっても違う表情を見せてくれる「倉敷アイビースクエア」の魅力にきっとどっぷりはまってしまうでしょう。

施設情報はこちら

施設名
「倉敷アイビースクエア」

住所
岡山県倉敷市本町7-2
 
電話番号
086-422-0011

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地域ナビゲーター

松本 紀子

中国支部 フォトグラファー&時々ライター
松本 紀子

岡山県瀬戸内市在住。主にフォトグラファーとして活動していています。岡山県のヒト、モノ、コトの魅力を十分にお伝えできるような写真に気持ちが伝わる文章を添えていきたいです。