沖縄県本部町

感動の瞬間に行ってみた!フクギ並木道篇

2022.08.04

『備瀬のフクギ並木に導かれ、ローカルな本部町に出会う旅』

そのとき、その瞬間でなければ決して出会えない日本の絶景を紹介する「感動の瞬間」シリーズ。この記事では、日常や普段の旅行ではなかなか見ることのできない感動スポットに、ふるさとLOVERSナビゲーターが旅人となって訪問。その土地に旅がしたくなる周辺情報と一緒に、みなさまをご案内します。今回の感動の瞬間は、沖縄県国頭郡本部町の「フクギ並木道」です。

おすすめモデルコース

「感動の瞬間×フクギ並木道」

感動の瞬間公式サイトより
感動の瞬間公式サイトより

今からおよそ350年もの昔。琉球王国の敏腕政治家だった蔡温(さいおん)の指揮のもと、「福を呼ぶ木」と言われる縁起のいい木「フクギ」が、備瀬(びせ)という海沿いの集落にびっしりと植えられました。これが後に「備瀬のフクギ並木」と呼ばれ、沖縄随一の癒しスポットになろうとは当の政治家は考えもしなかったに違いありません。

人工的に作られた住民のための林でありながら、幻想的であり、なぜか訪れる人の心をほぐしてくれる備瀬のフクギ並木。その不思議な魅力に導かれ、ふるさとLOVERSナビゲーターの仲濱が本部町(もとぶちょう)の1泊2日の旅へ出発しました。

1日目

  11:30 地元で愛される名店「きしもと食堂」で沖縄そばを堪能

本部町の旅の始まりは、腹ごしらえから。本部町には沖縄そばの店が多く、町を横断する国道84号は「本部そば街道」と呼ばれるほど、沿道に数十件もの専門店が立ち並びます。中でも、ノスタルジックな佇まいがローカル感満点の「きしもと食堂」は、120年近い歴史を持つ老舗。現在の店主の曾祖母に当たる岸本オミトさんが、かつて港町として栄えていた本部に出入りする人々のために食堂を始めました。

かつおの漁獲量が多かった本部は鰹節の産地であり、養豚も盛んでした。それらの食材を生かしてオミトさんが沖縄そばを作り始めたところ、次第に評判を呼び、メニューをそば一本に絞ることに。今でもその味を求める客は県内外から後を絶たず、平日でも昼時は行列必至の人気店です。

昔から変わらない製法で作られる自家製麺は、薪を焼いたあとに残った灰を水に溶かし、その上澄み水と小麦粉を混ぜて作られる木灰(もっかい)麺。灰のミネラルをたっぷり含んだ麺は、かん水では出せない強いコシや独特の歯ごたえ、旨味が感じられます。

味の決め手となる灰も、昔から変わらず自家製。薪のかまどで麺を茹で、その灰を麺作りに使うという、循環型ともいえる製法が続けられています。

「これぞ沖縄そば!」ともいうべき王道のルックスに、安心感さえ抱きます。トッピングの三枚肉は、歯ごたえのしっかりした麺に負けない濃い目の甘辛味。かつお出汁の効いたスープも滋味深く、じんわり体に染み渡ります。

施設情報はこちら

施設名

きしもと食堂

住所

沖縄県国頭郡本部町渡久地5

電話番号

0980-47-2887

営業時間

11:00~17:30(売り切れ次第閉店)

休業日

水曜

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

  13:00 沖縄美ら海水族館の、少し「ツウ」な大人の楽しみ方

写真提供/国営沖縄記念公園(海洋博公園)・沖縄美ら海水族館
写真提供/国営沖縄記念公園(海洋博公園)・沖縄美ら海水族館

沖縄そばで十分お腹を満たしたあとは、沖縄旅行に欠かせない一大観光スポット「沖縄美ら海水族館」へ!有名な水族館なので、すでに行ったことのある方もいるのではないでしょうか。しかし今回は、あまり知られていない「ツウ」な楽しみ方をご紹介!少しの豆知識を持って臨めば、さらに興味深い場所なのです。

写真提供/国営沖縄記念公園(海洋博公園)・沖縄美ら海水族館
写真提供/国営沖縄記念公園(海洋博公園)・沖縄美ら海水族館

水族館に入って最初に現れる「サンゴの海」。なぜこの水槽は、眩しいほどに輝いて見えるのかご存じですか?実は、屋根がない造りのため、沖縄の強い日差しを直接取り込んでいるからなんです。

また新鮮な海水を目の前の海から絶えず供給し、自然の海の中に近い状態を再現。その成果か、毎年サンゴの産卵が確認できているというから驚きです。

写真提供/国営沖縄記念公園(海洋博公園)・沖縄美ら海水族館
写真提供/国営沖縄記念公園(海洋博公園)・沖縄美ら海水族館

メインスポット「黒潮の海」に到着しました。青く輝く容量7500m³もの巨大な水槽を目の前にすると、まるで海の中を漂っているような錯覚に陥るほどの臨場感があります。その中を悠々と泳ぐオスのジンベエザメは「ジンタ」という名前で、同種の世界最長飼育記録を更新中。沖縄美ら海水族館には「世界初」も多く、例えばヒメイトマキエイはこちらの大水槽で世界初の展示を、さらにナンヨウマンタは世界で初めて飼育下での繁殖に成功しました。

回遊魚たちのダイナミックな泳ぎをもっとじっくり見るなら、隣接するカフェ「オーシャンブルー」へ。大水槽を目の前に、コーヒー片手に特等席で優雅な鑑賞タイムを過ごしましょう。

施設情報はこちら

施設名

沖縄美ら海水族館

住所

沖縄県国頭郡本部町石川424番地海洋博公園内

電話番号

0980-48-3748

営業時間

通常期 8:30~18:30(入館締切:17:30)  ※繁忙期については公式サイトにてご確認ください

休業日

公式サイトにてご確認ください

公式サイト

https://churaumi.okinawa/

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

  16:30 車で行ける離島「瀬底島」のビーチリゾートでバカンス気分

写真提供/ヒルトン沖縄瀬底リゾート
写真提供/ヒルトン沖縄瀬底リゾート

水族館で沖縄の海の魅力を再認識したら、やはり宿泊場所も海を身近に感じられるホテルがいいですよね!ということで、今夜の宿泊先は、沖縄美ら海水族館から車で約15分の「ヒルトン沖縄瀬底リゾート」です。

数あるホテルからなぜこちらを選んだのか。最大の理由は、そのロケーションの良さにあります。本部町と橋でつながる小さな離島「瀬底島」にある全長およそ800mの白い砂浜・瀬底ビーチ沿いにあり、客室のほとんどがオーシャンビュー。こんな理想的な立地のビーチリゾートほど、南国の旅にふさわしいものはありません。

写真提供/ヒルトン沖縄瀬底リゾート
写真提供/ヒルトン沖縄瀬底リゾート

今晩泊まるお部屋は、各フロアのコーナーに一部屋ずつしかない「キングデラックススイート オーシャンビュー」。角部屋なので、大きな2面のガラス窓からパノラマで海を見渡せます。

70平方メートルの室内はリビングスペース、ベッドスペースが緩やかに分かれているので、好みの場所でリラックスできるのが嬉しいですね。海に近いウッドテラスは、セカンドリビングと呼べそうなほど広く、さらなる開放感が味わえます。

写真提供/ヒルトン沖縄瀬底リゾート
写真提供/ヒルトン沖縄瀬底リゾート

すぐ目の前に美しい海はあれど、マリンアクティビティに参加するには、時間的にも体力的にも厳しい夕方前。そんな時は、プールサイドでゆっくり過ごすのがおすすめです。海と屋外プールに向かって置かれたプールサイドベッドに体を預けて、ゆるやかな潮風に吹かれるひと時。動き回った日中の疲れが自ずと溶けていくようです。

写真提供/ヒルトン沖縄瀬底リゾート
写真提供/ヒルトン沖縄瀬底リゾート

ディナーは、3つのレストランからチョイスを。今回はイタリアンレストラン「セマーレ」でコースをいただきました。

ご当地ブランド牛「もとぶ牛」や、近海で取れた新鮮な魚介類をふんだんに使った料理とともに、専属ソムリエが選んだ4種のワインペアリングを。いつしか日は沈み始め、夕日に海や空、店内までも赤く染まり、島の夜は更けていきました。

2日目

  7:00 瀬底ビーチで身も心も浄化される朝

写真提供/ヒルトン沖縄瀬底リゾート
写真提供/ヒルトン沖縄瀬底リゾート

波音で目覚めた朝は、瀬底ビーチでのサンライズヨガでリフレッシュ。太陽と海の力で浄化された体を、オールデイダイニング「アマハジ」のビュッフェ朝食でさらに満たしましょう。たっぷり身も心も潤い、これから始まる本部の一日に期待が高まります。

施設情報はこちら

施設名

ヒルトン沖縄瀬底リゾート

住所

沖縄県国頭郡本部町瀬底5750

電話番号

0980-47-6300

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

  10:00 「もとぶかりゆし市場」で本部の旬に触れる

ホテルをあとにして、フクギ並木に着く前に少し寄り道。せっかく本部に来たのだから、本部のローカルな特産品をお土産にしましょう。「もとぶかりゆし市場」では、農水産品を中心に本部の「おいしいもの」が揃います。

朝とれたばかりの野菜は新鮮そのもの。おすすめは、本部町で古くから育てられてきた「もとぶ香ネギ」。その名の通り香りが高く、一年を通して栽培されているので、いつ訪れても青々としたネギを購入できます。

野菜だけでなく加工品も豊富です。目を引く真っ赤な色をしたボトルは、アセロラのシロップやジュース。アセロラ栽培が盛んな本部町では、傷みやすくフレッシュな状態で出荷しづらいアセロラを、さまざまな形で加工しています。

本部の名物「シークヮーサー」の加工品や季節のフルーツなどもずらりと並び、あれもこれもと手が伸びます。もし買いすぎてしまっても、野菜も加工品も市場から直接郵送できますのでご安心を。存分にお土産を買って送って身軽になったら、いよいよ今回の旅の目的地、備瀬のフクギ並木へ向かいます。

施設情報はこちら

施設名

もとぶかりゆし市場

住所

沖縄県国頭郡本部町字大浜881番地1

電話番号

0980-43-0280

営業時間

9:00~19:00

定休日

1/1〜1/3ほか、不定休

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

  11:30 いにしえの英知が詰まった「備瀬のフクギ並木」

市場から車を20分ほど走らせ、昨日訪れた美ら海水族館を通り過ぎてすぐ。備瀬のフクギ並木に到着しました。2万本ものフクギが立ち並ぶ1㎞ほどの並木道は、豊かに茂った葉と木の枝がアーチ状に繋がり、神秘的な緑のトンネルを作り出しています。

真夏でもひんやり涼しいのは、トンネルが強い日差しを遮ってくれるから。優しい木漏れ日の中を歩いているだけで、心が凪いでくるから不思議です。

ふと足元に目を落とすと、ほうきで掃いたような跡。備瀬に住む方々が毎朝掃き清めているそうで、地域で大切に維持されていることが伺えます。

今でこそ多くの人が訪れる観光地ですが、備瀬地区は昔から人々が普通に暮らす生活の場。フクギ並木は、琉球王朝時代の17世紀ごろ、政治家・蔡温が、強い潮風や台風から土地を守るために植林した防風林でした。

植え方にも工夫があります。抜け道、つまり歩道を作ることで適度に風を逃し、強い風でも木が折れない、しなやかな防風林が作り上げられました。さらに枝は薪として利用されるなど、住民の暮らしに欠かせない存在となったフクギ並木ですが、その魅力は実用面だけではありません。

フクギは「福木」と書くため、福を呼ぶ縁起のいい木として大切にされてきました。また、新芽は必ず2つの葉がペアで生えるため、パートナーに幸せをもたらすとも言われているそうです。そんな言い伝えを思いながら並木道を歩けば、さらに神秘的な場所に感じられそうですね。

フクギ並木を抜けると一気に視界が広がり、透明感あふれる美しい海が待っていました。ここは「備瀬崎」と呼ばれる浅瀬の浜で、干潮時には辺り一面に潮だまりが現れます。水深が浅い場所なら肉眼でもカラフルな熱帯魚が見られ、子どもたちの格好の遊び場に。

一方大人にとってこの浜は、入ってじゃぶじゃぶ遊ぶより、岸辺に座ってのんびりしたい場所。ひもすがら釣り糸を垂らす人がいたり、おしゃべりに興じるカップルがいたり。遠方の伊江島の城山(タッチュー)に目をやりながら、ただただ心地よい風に吹かれる。そんな無為でぜいたくな時間が、ここでなら許される気がしました。

施設情報はこちら

施設名

備瀬のフクギ並木

住所

沖縄県国頭郡本部町備瀬

駐車場

あり(備瀬崎は1台500円)

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

備瀬のフクギ並木を歩いていると、そのシンとした静かさや緑の鮮やかさに感動しつつも、民家が林の中そこかしこに立っていることに驚きます。その住宅地の姿は、フクギに優しく守られているようです。水族館などの華やかな観光地がありながらも、地元の暮らしに根付いた、美しく温かい場所がある。その二面性こそ、本部町の魅力だと体感した2日間の旅でした。那覇から少し距離があるからこそローカルな味わいにあふれる本部町へ、ぜひ足を運んでみてくださいね。

地域ナビゲーター

仲濱 淳

沖縄支部 地域ナビゲーター
仲濱 淳

生まれも育ちも埼玉県。東京でテレビ制作会社や出版・イベント会社へ勤務するかたわら、海ナシ県で育ったせいか海への憧れが異常に強く沖縄病に罹患。沖縄の観光系企業への転職を機に13年前に移住し、Webマガジン、情報誌の編集を経て、フリーランスに。うちなーんちゅの夫と娘とともに、海がかろうじて見える那覇に住んでいます。