石川県輪島市

感動の瞬間に行ってみた!白米千枚田編

2022.01.19

『伝統が息づく奥能登の港町・輪島の旅』

そのとき、その瞬間でなければ決して出会えない日本の絶景を紹介する「感動の瞬間」シリーズ。この記事では、日常や普段の旅行ではなかなか見ることのできない感動スポットに、ふるさとLOVERSナビゲーターが旅人となって訪問。その土地に旅がしたくなる周辺情報と一緒に、みなさまをご案内します。今回の感動の瞬間は、石川県輪島市の「白米千枚田」で行われるイルミネーションイベント「あぜのきらめき」がテーマです。

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感動の瞬間×白米千枚田のイルミネーション

感動の瞬間公式サイトより
感動の瞬間公式サイトより

左手の親指を立てて、指先をちょっと曲げてみてください。これが能登半島の形。親指の爪の付け根あたりに、今回の旅の舞台となる石川県輪島市があります。

厳しくも豊かな自然と、昔ながらの暮らしが息づく能登半島の先端部。日本海に面して棚田が広がる白米千枚田(しろよねせんまいだ)は、その象徴ともいえる景観です。今回ご紹介する絶景「あぜのきらめき」は、稲刈り後から早春までの白米千枚田を彩るイルミネーションイベント。「あぜのきらめき」と合わせて訪ねたいスポットを、ふるさとLOVERSナビゲーターの森井がご案内します。

1日目

  15:00 輪島塗のキリコが勢揃い!輪島大祭の熱気を体感

夜のお楽しみ、イルミネーションイベントを前に、まずは輪島港のそばにある「輪島キリコ会館」にやって来ました。キリコとは、能登の祭りで神輿(みこし)のお供をする御神灯(ごしんとう)のこと。能登では夏から秋にかけて各地でキリコ祭りが行われ、地域ごとに大小さまざまなキリコが担ぎ出されます。

展示ホールに入ると思わず「わぁ…」とため声が漏れました。照明を落とした館内にずらりと並ぶ大きなキリコ。これら20基のキリコは、毎年8月下旬に行われる「輪島大祭(わじまたいさい)」で使われるもので、祭り当日には展示ホールからまちへと担ぎ出されます。細かな彫刻に彩られた総輪島塗のキリコは圧巻の美しさです。

能登のキリコ祭りについて、館長の竹中正治(たけなかまさはる)さんに聞きました。「自然とともに生きる能登の人々にとって、海や山など自然に宿る神様は身近な存在です。神様への感謝と祈りが祭りとなり、神様の道中を照らすキリコは地域の絆のシンボルとして受け継がれてきました」。館内に展示される祭りの写真や映像からも、その熱気や躍動感が伝わってくるようです。

施設情報はこちら

施設名

輪島キリコ会館

住所

石川県輪島市マリンタウン6-1

電話番号

0768-22-7100

営業時間

9:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで

休業日

無休

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

  17:30 棚田のあぜを鮮やかに彩るイルミネーション

日が落ちる前に、白米千枚田へとやって来ました。眼下に棚田を望む展望スポットはイルミネーションの点灯を待ちわびる人々でいっぱいです。

日本海へとなだれこむような急斜面に築かれた白米千枚田は、平地が少ない奥能登ならではの景観。農業機械が入らないため、耕作はほぼ手作業で行われています。なかには4株ほどしか植えられない極小の田んぼもあるそうですよ。

こちらが、あぜに設置された通称「ペットボタル」。太陽光で充電し、日没とともに発光する仕組みです。イベント初日におよそ250人のボランティアの手で、25000個のペットボタルがあぜに設置されました。

日が沈んで海と空の色が溶け合うころ、棚田にピンク色の灯りがともり始めます。幾何学模様を描く優しい灯りに大勢のギャラリーが見とれる中、打ち寄せる波音だけが響きます。灯りに縁どられた田んぼの一つひとつに、この景観を受け継いできた人々の思いが詰まっている。そう思うと、このイルミネーションに力強い生命力が宿っているようにも感じられ、胸がじーんと熱くなりました。

灯りの色は15分おきにピンクからグリーン、ゴールド、ブルーへと変わります。

稲刈りを終えた秋冬の棚田を壮大に彩る4色のきらめき。寒さを忘れるほどに美しく幻想的な、奥能登のワンシーンでした。

施設情報はこちら

イベント名

あぜのきらめき

住所

石川県輪島市白米町ハ部99-5

電話番号

0768-23-1146(輪島市観光課)

営業時間

例年10月下旬〜3月半ばごろ、2021年は2022年3月13日まで   日没から4時間点灯

休業日

無休

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

  18:45 輪島の風土と美味を楽しむ宿「海游 能登の庄」

絶景の感動も冷めやらぬまま、今宵の宿「海游 能登の庄(かいゆう のとのしょう)」へ。料理やもてなし、しつらいなどに能登らしさを散りばめ、風土を五感で堪能させてくれる温泉宿です。畳敷きのロビーで宿泊客を迎えるのは、豪華な輪島塗の衝立(ついたて)。地元作家の和紙照明も優しく足元を照らします。

冷えた体を温めてくれるのは、宿の裏山に湧く「ねぶた温泉」。PH10.5という強アルカリ性単純泉で、お湯がぬるぬると肌にまとわりつくようです。聞けばこの温泉、古くから輪島塗職人の漆による肌荒れを癒してきたのだとか。今夜は露天風呂を備えた大浴場へ、明朝は日本海を望む展望風呂で朝風呂を満喫することにしましょう。

豊かな里山里海の幸に恵まれた輪島。夕食にも旬の食材が満載です。新鮮魚介を炭火焼きでいただく囲炉裏懐石のプランが評判で、目の前でサザエがぐつぐつと焼ける音、魚が焼ける香ばしい匂いが食欲をそそります。輪島塗の器のつややかな輝きや、手になじむ温もりにも能登を感じ、どっぷりと旅情に浸りました。

2日目

  7:30 一日のスタートは絶景の朝風呂から

2日目はちょっぴり早起きして展望風呂へ。窓一面に広がる日本海、白波をたてて進む船、水平線に浮かぶ島影。いくら眺めても飽きることのない、能登の海景です。

朝風呂を満喫しておなかが空いたら、お待ちかねの朝食タイム。目の前で作る自家製豆腐やイカの麴漬けなど、滋味豊かな品々が並びます。チェックアウト前には、輪島塗のカップでコーヒーを一服。随所に感じられる能登の温もりに癒され、宿を後にするころには心も体も軽やかになっていました。

施設情報はこちら

施設名

海游 能登の庄

住所

石川県輪島市大野町72

電話番号

0768-22-0213

営業時間

チェックイン14時 チェックアウト11時

休業日

無休

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

  8:30 黄色が鮮やか!朝市名物のえがらまんじゅう

輪島市中心部では毎朝、賑やかな朝市が立ちます。日本三大朝市のひとつ「輪島朝市」は、もともと各地の産物を物々交換していたのがルーツ。なんと平安時代から1200年以上もの歴史があるそうです。

朝市通りには、地元の女性たちが切り盛りする露店がずらりと並びます。地魚の干物や朝獲れ野菜、生花、民芸品など扱う商品はさまざま。観光スポットとして有名ですが、地元の人にもそれぞれ行きつけの露店があり「あら、いい魚あるがいね」「今日はまんで(とても)寒いわぁ」と世間話に花が咲きます。

そんな輪島朝市の名物がこちら、「饅頭処つかもと」のえがらまんじゅうです。クチナシの実で染めたもち米を両面にたっぷりまぶして蒸しあげたもので、ほどよい甘さのこし餡と、つぶつぶとした食感がたまりません!

女将の塚本民子(つかもとたみこ)さんは「息子で3代目になるけど、作り方は初代の頃からずっと変わりません。昔ながらの素朴なおまんじゅうなんですけど、『それがいいんや』って地元の皆さんも言ってくださるんです」とにっこり笑います。

施設情報はこちら

施設名

饅頭処つかもと

住所

石川県輪島市河井町1-90

電話番号

0768-22-0672

営業時間

8:30~売り切れ次第終了

休業日

第2・4水曜

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

  10:00 輪島塗体験でオリジナルの箸を作ろう!

続いてやって来たのは、朝市通りから徒歩3分のところにある「輪島工房長屋」。輪島塗の体験や職人の工房見学ができるスポットです。かつての職人長屋を模した建物が立ち並び、なんだか懐かしい雰囲気。

漆器の最高峰ともいわれる輪島塗は、使い込むほどにその強度と優美さを実感できる伝統工芸品です。施設を運営するまちづくり輪島の丸山理恵(まるやまりえ)さんに話を聞きました。

「輪島塗は普段使いできる堅牢さが特長です。『布着せ(ぬのきせ)』といって、器の縁などに布を貼って補強したり、地元産珪藻土(けいそうど)を焼いて粉末にした『地の粉(じのこ)』を漆に混ぜて下地を塗るなど、とても丈夫に仕上げてあります」。

下地職人さんの工房をのぞくと、作業の手順を丁寧に教えてくれました。木地作りから下地、上塗り、加飾まで124にもおよぶ工程を経て完成する輪島塗。高価ではありますが丈夫で長持ち、修理しながら何世代にもわたって愛用できる漆器です。

輪島工房長屋で体験できるのは、加飾技法である「蒔絵(まきえ)」と「沈金(ちんきん)」の2種類。早速、箸に沈金をほどこす体験に挑戦です。沈金とはノミで模様を彫り、金粉を埋めこんで加飾する技法。細かな作業に集中していると、時間がたつのを忘れてしまいます。

完成品は、沈金なら当日持ち帰りOK。蒔絵は漆が乾燥した後に届けてくれます。自分で作った箸を使うたび、きっと輪島で出会った人や風景を思い出すことでしょう。

施設情報はこちら

施設名

輪島工房長屋

住所

石川県輪島市河井町4-66-1

電話番号

0768-23-0011

営業時間

9:00~17:00 ※体験受付は15:30まで

休業日

水曜

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

半島の先端部という地理的条件ゆえに、独特の祭礼や昔ながらの生活文化が残る輪島市。旅人にとってはどこか懐かしく、そして新鮮な驚きに出合えるまちでもあります。訪れた先々で感じたのは、迎えてくれる地元の人の優しさとおおらかさ。心がふんわり温かくなるような出会いがたくさんありました。海と山が織りなす景観に、里山や里海から届く食材、伝統文化まで、語り尽くせない輪島の魅力。皆さんにもぜひ満喫していただきたいと思います。

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地域ナビゲーター

森井 真規子

中部支部 地域ナビゲーター
森井 真規子

石川県小松市在住のライター。航空自衛隊、海外生活を経て故郷にUターン。金沢のライター事務所で修業を積み、2005年からフリーランスで活動しています。出会う人やモノ、コトのストーリーを丁寧にすくいあげ、分かりやすい言葉で伝えることを心がけています。