
鹿児島県与論町『プリシアリゾートヨロン』
2021.07.06
日本には旅の目的地になるホテルや、ふるさとに帰ったような気持ちになる旅館があります。この記事では、人々の記憶に残る「とっておきの宿」をふるさとLOVERSナビゲーターが訪問し、その魅力をたっぷりとご紹介します。今回訪れたのは、大人の隠れ宿をコンセプトとした愛媛県松山市の旅館「別邸 朧月夜(おぼろづきよ)」です。
全国でも屈指の人気を誇る温泉地、愛媛県松山市の道後温泉。ゲストハウスから高級宿まで多様なタイプの宿泊施設が道後の起伏を生かして林立しています。
今回訪れたのは、緩やかな坂を登った丘の上に名旅館が立ち並ぶエリアにあって、わたしも「一度は泊まってみたい」と憧れていた「別邸 朧月夜(おぼろづきよ)」です。柿渋の控えめなのれんは、これから味わう細やかでさりげないおもてなしの数々の予兆。道後の旅を格別なものにする、大人の隠れ家のようなとっておきの宿をさっそくご案内しましょう!
スタッフさんの歓迎を受けたあと、案内されたのはまずウェルカムドリンクコーナー。そのクオリティの高さに一気にテンションが上がりました。広々としたロビーの一角にコーヒーや数種類の紅茶などソフトドリンクがそろう中、ゴールドのレバーの生ビールサーバーを発見!湯上がりの一杯を想像して、にんまりしてしまいました。
次に、客室へ。和風と近代建築を融合したような意匠を施した廊下の先にあります。全19室7タイプがスイートルーム仕様です。優雅さとモダンな雰囲気が漂いつつも、深呼吸したくなるぐらいの気持ちよさ。中庭の景色が清涼感を与えているからでしょうか、すごくいい空気が流れています。
耳をすますと、外から湯がじゃぶじゃぶと注がれる音が聞こえてきました。なんと、ここ別邸朧月夜は全部屋のテラスに露天風呂がついているのです。もちろんお湯は名湯・道後温泉。無色透明のさらりとしたなめらかな泉質、そして湯上がりのなんともいえない爽快感はぜひ多くの温泉愛好家に知っていただきたい。そんな名湯をこのロケーションで独り占めできるなんて、最高すぎる!!
松山の繁華街まで路面電車で10分ほどの距離にある道後温泉。意外と街中にあるため、自然は少ないのです。ホテル街の中にあって、四季を感じる中庭を眺めながらゆったりと一人、湯浴み時間を過ごすってすごく希少。これだけで十分なのですが、別邸朧月夜には離れの露天風呂もあるんです。
足元を照らすほのかな灯りを頼りに、渡り廊下を歩く。その先に離れの露天風呂があります。目の前に広がる景色に「ああ、この風情こそ旅館の魅力だな」と感じ入りました。離れの風呂をめざすだけで、ゲストが求める非日常感を満たしてくれるんですから。
わたしが入ったのは、しっとりした雰囲気の岩風呂でした。ひとり、ゆったりと浸かるその開放感は部屋の露天風呂とはまた別のよさ。このあたりは本当に静かで、湯の注ぐ音が耳に心地よく、極上の湯浴み時間がすぎていきます。
離れにはもうひとつの露天風呂があり、そちらは檜(ひのき)風呂なんだとか。なんと2つの風呂は朝夕で男女入れ替え制。1泊すればどちらも堪能できるんです。
身体がほぐれ、心身ぽっかぽかになったら、湯上がりの水分補給を。コーヒー牛乳や牛乳が無料で用意されていましたが、40歳も過ぎれば求めるのはシンプルに水。ペットボトルの水じゃなく、道後の名蔵・水口酒造の仕込み水を汲み上げたものが用意されていました。なめらかな冷水がきゅ〜〜っと身体に沁みます。地元の名水を味わってほしいという心意気が、なんともこのお宿らしいサービスです。
道後温泉を堪能したあとは、いよいよお食事の時間です。別邸 朧月夜をおすすめする理由の一つがその料理の評判。料理長が月替わりでこしらえる、愛媛の旬を取り込んだ和食のコースをいただくべく、館内の「料亭二十三夜」へお邪魔しました。
この宿のコンセプト「大人の隠れ宿」を表すように、個室で食事をとることができるのもポイント。中庭を望むプライベートな空間で、ゆったりと食事を楽しめる。食事の理想をここまで叶えてもらってありがたい限りです。
温暖な気候の愛媛は海、山の幸に恵まれ、その地の利をたっぷりと生かし、愛媛でしか味わえない和食の滋味を堪能できます。お刺身の一盛りもこの通り!鮮度のよさが見た目からわかります。絵画のような繊細な盛り付けに、箸をつけていいやら悪いやら…。魚介のうま味、甘味、そして歯触り。瀬戸内海の魚介のおいしさがフルで堪能できる一皿でした。
包丁の繊細な技と季節を取り込んだ美しい皿には、たっぷり鑑賞時間を要しました(笑)。料理長の、食べる人を喜ばせたいという思いが、素材、盛り付け、味わいから沁みるほどに伝わってきます。料理だけでもまた食べに来たい。そう心から思わせてくれる感動のコースは、いい余韻を残して新しい朝へとつなぎます。
翌朝の朝食は、やはり期待通りに抜かりなし!うま味と栄養たっぷりのじゃこ天や海鮮をはじめ、愛媛の食材をたっぷり使った和食です。正直、端から端までおいしい旅館の和膳って今まで経験ないのですが、本当に完ぺき。宿泊の満足度をグッと高める朝食を食べて、宿を去る名残惜しさも最高潮。
極上の宿時間をはぐくむ、別邸 朧月夜の支配人は鈴木良尚(よしなお)さん。「開業した2008年は道後に小宿は少なく、全室露天風呂付きの客室という宿もありませんでした。右も左もわからず、がむしゃらに手探りでやってきました。これからも、われわれの宿がお客様が求めるものの選択肢になることで、少しでも道後をめざす方が増えてほしいと願っています」と、その想いを語ります。
冒頭の生ビールサーバーも、ゲストの要望をかたちにした一つ。さまざまな声を真摯に受け止めながら、心地よさのための細やかな計らいを重ねてきました。道後温泉が人気な理由の一つは、松山に息づくお遍路文化が培った“おもてなし”の心に魅了されるからなのかもしれませんね。決して華美ではなく、野花のようにさりげなく可憐なおもてなし。道後の湯のように心地よい空間にたっぷり浸ることができた別邸 朧月夜。わたしにとって、「あこがれの宿」から「必ずまた行きたい宿」になりました。
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施設名
別邸 朧月夜
住所
〒790-0836 愛媛県松山市道後鷺谷町4-4
電話番号
089-915-2222
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
四国支部 ライター・エディター
ハタノエリ
宮崎県の海のそばで生まれ育ち、高校卒業後は大学、仕事、夫の転勤を理由に
全国各地10カ所以上で暮らしました。2017年、愛媛県松山市に移住。現在は、ライター、エディター、コピーライターとして、取材対象の言外からあふれるものを拾いながら、ひと・もの・ことを、ことばで表現しています。