
静岡県三島市
2023.01.06
そのとき、その瞬間でなければ決して出会えない日本の絶景を紹介する「感動の瞬間」シリーズ。この記事では、日常や普段の旅行ではなかなか見ることのできない感動スポットに、ふるさとLOVERSナビゲーターが旅人となって訪問。その土地に旅がしたくなる周辺情報と一緒に、みなさまをご案内します。今回の感動の瞬間は、新潟県十日町市にある「美人林の紅葉」がテーマです。
1日目
2日目
日本ならではの風景と文化に出合える、里山。全国に里山文化はありますが、自然の雄大さと温泉を体感できるのが、新潟県十日町市の松之山エリアです。スッと高く伸びるブナの紅葉の絨毯や、温泉の成分が抜群に濃い松之山温泉など、この地には今でも受け継がれる自然や文化が残っています。この地域の人たちが大切にしてきた里山文化をテーマに1泊2日の旅に行ってきました。
十日町市に着いたら、まずは腹ごしらえ。十日町といえば、布海苔(ふのり)が入った新潟県発祥のへぎそばが有名です。通常、へぎ(片木)と呼ばれる器で出されることから、へぎそばと呼ばれるようになりました。つるんとした喉越しと弾力のある歯ごたえが特徴で、新潟県民にとっては馴染み深いそばのひとつです。
十日町市内にそば屋さんは数えきれないほどありますが、今回向かったのは地元民から根強い人気を誇る「そばや清兵衛」。一人前のへぎそばに、店主自ら育てた自家栽培の野菜の天ぷらがセットになった「天ぷらそばセット」が一番人気。驚くほどみずみずしく、ツルツルの喉越しが心地よいそばは、今まで食べたそばと異なる味わい。もう一度食べたくなって、翌々週にも足を運んでしまうほどでした!
おいしさの秘密は、100年以上使っている石臼。使っていくうちに石が摩耗し、軽くなったことできめ細やかな粉がひけるようになったとか。そばは、地元農家がつくる「とよむすめ」の中心部だけを使って贅沢に。さらに細かいふるいにかけることで、一層ツルツルとした食感を生み出しています。
つゆは静岡県焼津の鰹節に鯖節をブレンドし、長岡市越路の醤油とざらめ砂糖、みりんを加えて。細かなところにも気を配り、美味しいそばを追求しています。テーブルに置いてある毎朝店主が山から取ってくるクルミを入れると、ひと味違った味わいになりますよ。
そばや清兵衛
新潟県十日町市真田丙1896-2
025-757-1298
11:00〜15:00
水曜
お腹が満たされたら、早めに宿にチェックイン。日本三大薬湯と称される、松之山温泉で疲れた身体をゆっくりと休めましょう。松之山温泉の特徴は、なんといっても温泉の基準値を大幅に上回る成分の濃さ。特に消毒・洗浄効果が期待されるメタホウ酸は基準値の50倍以上もの数字だそうです。
今回宿泊する「ひなの宿 ちとせ」には、露天風呂「月見の湯」があり、外の空気を感じながら温泉を堪能することができます。夜になると湯船から月が見えて、なんとも贅沢な時間!身体の芯から温まることができました。
夕食は、里山料理を中心に。妻有ポークを熟成させた「越乃紅(こしのくれない)」と棚田で収穫されたお米を使った「棚田鍋」や温泉の熱で低温調理した「湯治豚」はここでしか味わえない味。この地域周辺でつくられた日本酒と一緒にいただきます。
ひなの宿 ちとせ
新潟県十日町市松之山湯本49-1
025-596-2525
毎週月・火曜(祝日等の場合は要確認)
朝食を食べたら、ゆったりと時間を過ごしてチェックアウト。途中、紅葉で色づく木々を横目に見ながら車で10分ほどの「美人林」へと向かいます。ブナの木が空に向かってまっすぐ伸びる美しさから、「美人林」と呼ばれるようになりました。樹齢100年ほどのブナの木々がスッと立つのが印象的な美人林。凛とした空気に思わず、背筋が伸びてしまうような空間です。今回訪れたのは11月中旬で、ちょうど紅葉シーズン。足元にはたくさんの落ち葉が広がっていました。
入口付近で写真を撮ったら、少し散策してみましょう。「美人林」の標柱より少し奥へ林を進んでいくと、ため池が現れます。この日はあいにくの曇りでしたが、それがまた幻想的な雰囲気を出しており、いつもとは異なる感覚に。ブナがそびえ立つ自然のなかで静かな気持ちになれました。
紅葉の見頃は、例年11月上旬から中旬ごろ。11月上旬は黄色く色づいたブナの葉と足元に落ちた落ち葉のコントラストを、中旬以降は葉が落ちたブナの木から青空を眺めたり、ブナの木が雨に濡れて光る美しい景色を堪能したりと、時期や日によって異なる楽しみ方ができます。天候に恵まれれば、青空と紅葉のコラボレーションを楽しむことも。基本的には日中がおすすめですが、11月中旬以降は朝や夕刻もぜひ。空の色が変わり、日中とは違った景色が見られます。
今でこそ人々を魅了する美人林ですが、かつてブナをすべて伐採してしまったことがありました。地主が東京へ行くため、炭にする必要があったからと伝えられています。しかし、翌春には一斉にブナの新芽が芽生え、ブナ林が再生。現在の美しい姿となったのです。現在は松之山周辺の団体やボランティアの方々が協力し、唐木の片付けや落枝の収集、ため池周りの柵の設置など、一年を通して保護活動をしています。自然の力強さと美しさ、地域の人の強い意志を感じた時間でした。
美人林
新潟県十日町市松之山松口1712-2付近
025-597-3442(松代・松之山温泉観光案内所)
なし
美人林を堪能したら、お土産を買って帰路へ。向かったのは、車で4分ほどの小島屋製菓店です。
ここの人気商品は、柔らかくコシのある餅とまろやかなこし餡が特徴の「志んこ餅(しんこもち)」。もち米ではなく、うるち米をひいた上新粉を使っていることからこの名前がついた、松之山名物のお土産です。小島屋製菓店の「志んこ餅」は毎朝手作り。十日町産のコシヒカリを粉にしてもらって、水を混ぜてこねて蒸して搗(つ)き、少し塩気を効かせたこし餡を包んで作っています。一口いただくと、なめらかな舌触りのお餅と程よい甘さのこし餡がここちよく、気づけば2個一気にいただいてしまっていました!つい次を食べてしまいたくなる魅力的な味わいです。
もともと志んこ餅は、一人のおばあさんが原料からすべて自分で作ったものでした。それを笹に包んで松之山温泉で販売していたといいます。
甘さ抑えめで何個でも食べたくなる、「志んこ餅」。時間が経っても固くなりにくいので、自分用にもお土産用にもぴったりですね。ただし、夕方には売り切れていることもあるので、確実に手に入れたい方は午前中に行くのがおすすめですよ。
小島屋製菓店
新潟県十日町市松之山新山565−1
025-596-2104
7:00〜19:00
第1・3水曜(1・2月は毎週水曜) ※都合により変更あり
https://www.matsunoyama-shinkomochi.com
スッと立つブナの木々が印象的な美人林。凛とした空気に思わず、背筋が伸びてしまうような空間でした。十日町市松之山周辺を巡って感じたのは、土地の自然と文化と向き合って尊重しているということ。だからこそ、美人林や棚田も残る、美しい里山の風景が残されているのではないでしょうか。
今回は紅葉の時期を紹介しましたが、どの季節に訪れても美しい景色を見せてくれる美人林。ぜひ現地に足を運んで、その美しさを肌で感じてみてください。
中部地方 地域ナビゲーター
長谷川 円香
企業広報のお手伝いやものづくり企業の紹介記事、観光記事を執筆。旅での気づきを日常に持ち帰ってもらえるように、地域の人や暮らしも含めて伝えるようにしています。