沖縄県西原町

西原町民のソウルフード「とりの丸焼き」

2021.01.20

この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。
今回スポットを紹介頂いたのは、沖縄県西原で昔ながらの甕(かめ)仕込み製法を用いた泡盛づくりを行う「石川酒造場」の我部達郎(がべたつろう)さんです。

町のソウルフードを100年先まで残したい

沖縄本島の中部に位置する沖縄県西原町。西原町は観光雑誌などにはあまり掲載されていないため、観光客はほとんど訪れませんが、教育環境の充実や伝統文化などの継承に力を入れる「文教のまち」です。

そんな西原町で、昔ながらの甕(かめ)仕込み製法を用いた泡盛づくりに携わるのは「石川酒造場」の我部達郎(がべたつろう)さん。我部さんは、この西原町で100年先まで残したいものは、老舗レストラン「レストランまちだ」のとりの丸焼きだと言います。

我部さんにとって「とりの丸焼き」はクリスマスだけの特別な料理ではなく、懐かしさの詰まったソウルフード。「最近は沖縄全体で減ってきていますが、レストランまちだのとりの丸焼きは本当においしくて、ずっと残ってほしいですね」と話してくれました。

地元民の憩いの場「レストランまちだ」

観光地化されていない西原町の中でも、さらにのどかな津花波(つはなは)エリアに佇む「レストランまちだ」。1980年にこの場所でプレハブ小屋からスタートし、2020年12月に40周年を迎えました。

店内は西原町ののどかな自然をそのまま活かしたような、温かみのある空間。四方八方に窓があり、どの窓からも自然の緑と陽の光が差し込んできます。自然の健やかさがウッディなインテリアに溶け込み、テレビから聞こえてくるにぎやかな声もあわさって、実家のような居心地の良さを感じます。

奥にはお座敷もあり、近所の家族がわいわい食事をする姿が浮かびます。もしも家の近くにあったら何世代にも渡って訪れる定番のお店になりそう。

豊富なメニューも人気の秘訣。定番メニューの「とりの丸焼き」(1羽:1800円/二分の一:900円)はもちろん、地元客に人気の「日替わりSETメニュー」は2週間に一度メニューを変えているとのこと。それにしても、ハンバーグカツにグルクン(沖縄の県魚)フライ、たまご焼きにスープ・サラダ・ごはんがついて650円はとてもコスパが良いのでは。このコスパと飽きないルーティンのおかげで、何年もの間、毎日のように足を運ぶ常連客もいるそうです。

2代目社長「僕にとっても思い出の食べ物」

レストランまちだを父・町田宗助(まちだそうすけ)さんより8年前に受け継いだという、町田宗大(まちだむねひろ)さん。

実は店舗の上が自宅だという町田さん一家。2代目である宗大さんは当時三重県に住んでいましたが、店を継ぐ人がいないことを知り、幼いころからの思い出が詰まったお店をなくしたくない一心でこの町に戻り、店を継ぐ決心をしました。

3日間かけてつくる「とりの丸焼き」

日替わりメニューの豊富さなど、先代から受け継いだことを忠実に守り抜く宗大さんですが、やはり一番こだわっているのは「とりの丸焼き」。とりの丸焼きを販売し始めた35年前から変わらないレシピを提供しており、レシピ考案には当初店を手伝っていたペルー人が関わっているのだといいます。

とりの丸焼きはもともと南米に由来する外来料理。「移民先の中南米から帰国した沖縄県民がはじめた」という説が有力だそうで、丸鶏の腹ににんにくや野菜を詰め込む南米スタイルが沖縄県民の好みにはまり、徐々に専門店が増えていったのだといいます。

シンプルに鶏のうま味を味わってもらいたい

そのため「腹ににんにく(など)を詰める」ということ以外、店舗によってレシピが異なるのが特徴。他店ではハーブやお酢が効いた味付けをするところもありますが、レストランまちだがこだわるのは「シンプルに鶏本来のうま味を味わってもらうこと」。塩・胡椒・にんにくベースの秘伝のタレを使い、あくまでシンプルに鶏のおいしさが引き立つことに注力しています。

とりの丸焼きづくりは、にんにくの皮をひとつずつ剥いていくところからスタートします。大量のにんにくを使用するため、剥く作業だけでも一苦労。そして丸鶏を秘伝のタレに漬け込みますが、その際に余ったタレをカットしたにんにくと玉ねぎにも混ぜ合わせることで、味が均等に染み込むのだそう。味が染み込んだら玉ねぎとにんにくを丸鶏の腹に詰めて、その後2日間寝かせます。

鶏とにんにくが作用し合い、絶妙なうま味に

写真は2日寝かせ、ローストした後の状態。2日間かけて寝かせることで、にんにくの香りをしっかりと鶏につけることができ、また鶏の脂をにんにくに吸い込ませることでよりジューシーになるのだそうです。専用のロースト機でしっかりとローストされたとりの丸焼きは、香ばしい香りとあふれ出すたっぷりの肉汁が食欲をそそります。

写真は、半分にカットした状態。今にもこぼれだしそうな染み染みのにんにくが、華やかな香りを放っています。これだけ入っているのに、にんにく多めのリクエストをするお客さんもいるとか。

店舗で食べる際もテイクアウトでも、基本的にはカットした状態で提供します。こちらはハーフサイズになりますが、サラダとスープ、白米とアイスティーがついて1100円とお得。

テイクアウトでビールと楽しむのもオツ

テイクアウトは専用の容器とアルミホイルに包まれた状態で提供。アルミホイルを開けた瞬間からにんにくとローストの香ばしい香りが立ち込めて、ビールを飲まずにはいられません。

取材中、明らかに地元民であろう人たちが、ぽつりぽつりと訪れてはテレビを見つつ、ぼんやりと食事を楽しんでいました。その姿はまるで、トイレやお風呂にいくようにルーティン化されている行動のよう。

人々が残したいと感じるのは、味のおいしさだけではなく、そんな風にどこまでも温かい平凡さにもあるのだろうなと感じました。そういえば、地元のあの店、どうしてるかなぁ。

<今回の旅スポット>

レストランまちだ
沖縄県中頭郡西原町津花波151−1
店内食事11:30〜15:00
とりの丸焼き販売11:00〜19:00(売切れ次第終了)
日曜、祝日定休
098-945-9752

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

三好 優実

沖縄支部 沖縄ライター
三好 優実

沖縄県那覇市在住。香川県で生まれ育ったのち、大阪や東京で仕事中心の生活を満喫していましたが、沖縄旅行で「人」の魅力にはまり、仕事をあっさり手放して移住。1年くらいで別の土地に行こうと思いきや、早6年が経過しました。ライター歴は5年。