広島県三原市

みかんじまで味わうおかあちゃんの島ごはん

2020.12.27

この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。
今回登場いただくのは、島内外のメンバーから構成される「鷺島みかんじまプロジェクト」の中村華奈子さんです。

人口約650人。新幹線駅からいちばん近い離島

広島空港のある三原市からフェリーで約25 分。芸予諸島のひとつである人口約650人の「佐木(さぎ)島」は、「新幹線駅からいちばん近い離島」ともいわれています。車で島内をぐるりと一周しても30分かからないほどの小さな島で、豊かな自然とアットホームなコミュニティが財産です。

かつて島の一大産業だったのは、瀬戸内の温暖な気候が育むみかん栽培。「花の季節には爽やかな香りがあたりを包み、実をつけると山が黄金色に染まってね」と、島の人は話します。しかしそんな美しい景色も、農家の高齢化や後継者不足で少しずつ陰りを見せていきました。

プロジェクト始動で「みかんじま」が復活

「以前の美しい風景とにぎわいを取り戻したい」。そんな想いで立ち上がったのが、島に移住してきた地域おこし協力隊や地域支援員、島内外のメンバーから構成される「鷺島みかんじまプロジェクト」です。中心メンバーのひとり中村華奈子さん(写真右)は、三原観光協会の元職員。仕事で佐木島を訪れ、その魅力的な観光資源を目にし、なんとか生かせないかとプロジェクト発足を提言したそうです。賛同したメンバーが数人集まり、島の人を巻き込んで活動はスタートしました。

みかん栽培の復活を皮切りに、採れたみかんを原料にしたジャム、みかんを餌に育った平飼い鶏が産むブランド卵「瀬戸内柑太郎 島たまご」といった特産品づくりなどに次々と着手。現在、耕作放棄地だった土地には再び柑橘の木が根を張り、冬になると橙色に熟れたきれいな果実を見せてくれます。

人が集い、憩う。地域交流拠点「鷺邸」

プロジェクトメンバーたちが丹精込めて生み出した島の美味を味わいたいなら、食事処&宿泊施設「島時間『鷺邸(さぎてい)』」がおすすめ。地域の人の寄り合いの場、観光客の休憩スポットにもなっています。「オーナーの白須さんを中心に、島のおかあちゃんたちが元気に営業。採れたて野菜や島たまごを使ってさまざまな料理を提供しています。ゆっくりとした島時間を過ごせますよ」と、中村さん。

思い入れのある実家が人々の拠り所になる

そんな言葉につられるように、みかんが旬を迎える12月初旬に鷺邸を訪問。オーナーの白須克子さん(写真左)とスタッフの平木多鶴子さんが、笑顔で出迎えてくれました。
「ここはね、もともと私の実家なの。プロジェクトの皆さんが以前からこの島をよくしようと頑張っていて、そのうち皆で気軽に集まれる場所が欲しいという話になってね。この家を交流拠点にしてはどうかと提案された時は戸惑いもあったけど、住み手のいなくなった家が少しでも役に立つならとオーナーになる気持ちを固めました」。

中に入らせてもらうと、まず感じるのは居心地の良さと懐かしさ。大きな掃き出し窓からはたっぷりと日が差し込み、島のおかあさんたち手作りの手芸品が優しく室内を彩っています。「よかったらおみかんどうぞ。今がいちばん甘いのよ」。そう話しかけてもらっているうち、なんだか田舎のおばあちゃんのうちに遊びに来たような感覚に。

「この家に、以前も来たような気がする」。そんな思いにとらわれるのは、きっと私だけではないはずです。

「島たまご」を使ったたまごかけランチが人気

その後はお目当てのランチをオーダー。一番人気の島たまごを使った「たまごかけランチ」をいただきました。運ばれてきて驚いたのは、普通のたまごかけごはんらしからぬそのルックス! メレンゲ状に泡立てた卵白の上にプリッとした卵黄がのっています。おかずもたっぷりでボリューム満点。

卵をかるく混ぜてスプーンですくうと、サクッとした不思議な手ごたえ。口に含むとスッと溶ける卵白とまろやかな黄身が一度に押し寄せてきます。島で精製する天然塩がうま味を引き立て、濃厚というよりもさっぱりした後味。たまごかけごはん特有のドロッと感が苦手な人にこそぜひ一度食べてほしい。いくらでも食べられそうな軽い食感です。

おかずプレートには、三原の特産であるタコとワケギを和えたぬた、原木椎茸のミンチ詰め、牡蠣フライなどがてんこ盛り。三原名物の水軍焼きから鷺邸オリジナルとして生まれた、農薬不使用のレモンの葉にくるんだハンバーグは、三原市のふるさと大使を務める熊谷喜八シェフの監修だそう。地元の自慢がぎゅっと詰まったラインナップに、「ここを好きになってほしい」というおかあさんたちの愛情が見え隠れしていました。

デザートには小みかんを丸ごとくるんだ手作り大福が登場。糸が添えてあるので大福にまわしかけ、両端を引っ張るようにして切断します。ちょっとつぶれてしまっても、そこはご愛敬。「意外に難しい~!」そうやってささいなことで笑えてくるのも、鷺邸に流れるゆったりとした時間のせいなのかもしれません。

島の温もりに包まれ童心にかえって過ごす時間

「幼い頃、裏山も、目の前の海も、すべてが私の遊び場だったの。ここを訪れる人たちが、この島で暮らすようにのんびりと寛いでくれたらうれしいな」と、白須さん。私もひと時、子どもにかえったような気持ちで、周囲を散策してみました。

鷺邸からまっすぐに坂をくだると、そこは海。プライベートビーチさながらに、サンダルをつっかけて手ぶらで海水浴へ向かうのは夏のとっておきの楽しみ方だそう。戻ってきたら昼寝をして、夜は白須さんが用意してくれるバーベキューに舌鼓を打ったりも。「冬だったら庭先でお餅つきをしたり、みかん狩りをしたり。何かしたいことがあれば、気軽に相談してくださいね」。

いつの間にか日頃の疲れがすっかり吹き飛び、なんだか明るい気持ちで帰路のフェリーへ。
「きっとまた来よう」。素直にそう思えるほど、心が元気を取り戻していました。

〈今回の旅スポット〉

施設名 島時間「鷺邸」
住所 広島県三原市鷺浦町須波113
電話番号 080-5622-9220
営業時間 ランチ 11:00~15:00(完全予約制)
宿泊 チェックイン14:00~17:00、チェックアウト10:00
休業日 不定

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

浅井 ゆかり

中国支部 広島県ライター
浅井 ゆかり

タウン誌をメインに、ジャンル問わず取材執筆(時々撮影)を手がけるフリーライターです。広島に嫁いで十数年になりますが、広島生まれ広島育ちの夫よりこのまちに詳しい自信あり! 取材に応じてくれる人、記事を手にしてくれる人へ、ちょっとした幸せや新鮮な驚きを届けられるようなプラスの言葉を紡いでいきたいです。