
山梨県富士河口湖町
2023.06.05
日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介するコーナー。今回は、山梨県北杜市地域ナビゲーター・小栗志織さんの「100年先に残したいもの」をご紹介します。それは300年以上、酒造りを続ける「山梨銘醸株式会社」です。
日本一の名水の里として知られる山梨県北杜(ほくと)市。市内に3カ所の「日本名水百選」の水を有する町で、ミネラルウォーターの生産量日本一を誇ります。この地の水の良さに惚れ込み、甲州街道台ヶ原の地で300年以上酒造りを行っているのが、銘醸「七賢(しちけん)」の造り手・山梨銘醸株式会社です。
こんにちは、山梨県北杜市在住の地域ナビゲーター・小栗志織です。私が、100年先に残したいと思うのが「山梨銘醸株式会社」。山梨県内には、いくつかの酒蔵が点在しますが、中でも山梨銘醸は、ただお酒を購入するだけではなく、酒蔵そのものの雰囲気や、酒造りの文化に触れることができる場所です。売店には、独自の発酵食品ブランドや白州の地で収穫・加工した特産物を取り扱うコーナーがそろっています。地酒と地域の文化に触れることができるこの場所は、県外から友人が訪れた際にいつも案内する場所の一つ。そして、私自身「何度訪れても素敵…!」と感じる名所です。
山梨銘醸の何よりの特色が、山々に抱かれる環境を活かした酒造り。山梨銘醸は名峰・甲斐駒ケ岳(かいこまがたけ)の雪解け水に惚れ込み、水を活かした酒造りを300年以上も続けています。
銘醸「七賢」で知られる山梨銘醸の酒造りの大きな特徴は、とにかく水にこだわっていることです。「甲斐駒ケ岳(かいこまがたけ)を含む南アルプスは、ユネスコエコパークに認定された世界に誇る『水の山』。北杜市白州町で唯一の酒蔵である当酒蔵は、甲斐駒ケ岳の雪解け水を用いて日本酒をつくる唯一の酒蔵です。初代がこの地の水に惚れ込み酒蔵を構えて以来、13代に渡って酒造りの技が受け継がれてきました」と聞かせてくれるのは、営業の藤山久里子さん。
山梨銘醸を代表する銘酒「七賢」の仕込み水となる甲斐駒ケ岳の伏流水は、雪解け水が長い年月をかけて何層もの花崗岩に磨かれたものです。「透明感があり、なめらかで、柔らかいお水です」と藤山さんはにっこり。
また、地域との繋がりにも重きを置く同酒蔵では、酒米にもなるべく地元のものを使用しているそう。「地元の農家の方とともに『夢山水』や『ひとごこち』といった高品質な酒米をつくり、用いています」と藤山さんは聞かせてくれます。
蔵の中へ入ると、右手に七賢のお酒を購入できるショップ「酒処大中屋」があります。ここには季節の限定酒を含む、常時20種類の日本酒がラインアップ。酒処大中屋でしか購入できない蔵元限定生酒や酒造りの工程から生まれた甘味料「糀糖」を使ったスキンケアブランド「COJIE(コージー)」、発酵食品ブランド「ひとさじ糀」など、お酒以外の商品も充実しています。
酒処大中屋のカウンターでは試飲も可能。味わいが異なるいくつもの日本酒のなかから、好みの1本を選ぶことができるので、ぜひ皆さんも利用してほしいと思います。私はハンドルキーパーであることが多いのですが、普段はあまり日本酒を飲まない友人たちが、少量ずつ色々な日本酒を楽しみながら好みのお酒に出会って嬉しそうにする様子を微笑ましく眺めています。
「純米大吟醸からスパークリング日本酒まで、七賢のお酒の数々をテイスティングいただけます。お好みのテイストを伝えていただければ、スタッフがご案内もいたしますよ」と藤山さんは笑顔で話します。
近年、山梨銘醸では伝統と歴史になぞらえた酒造りのみならず、「高付加価値化」という言葉を掲げて、新しい酒造りにもチャレンジしています。その中の一つが、“乾杯にふさわしい日本の酒”を目指したという「七賢スパークリング」です。
「伝統製法を踏襲しながら、新しいことにも挑戦しているのがスパークリング。ただ開発するだけでなく、フレンチシェフとコラボし食事に合う味わいに仕上げたり、仕込み水の代わりに古酒を用いて日本酒をつくることで古酒に触れる新たな機会を創造したり。日本酒文化を盛りあげるべくさまざまな工夫を凝らしています」。瓶内二次発酵というシャンパンと同じ難しい製法で作られる日本酒スパークリングは、国内外で数々の賞を受賞。日本酒の新しい文化として注目を集めています。
「日本酒とは別の高みを目指しながら、日本酒の文化にも根ざした新しい挑戦で生まれたお酒。私たちが日本の酒の新境地にチャレンジすることで、日本酒の文化に気軽に親しんでほしいという願いが込められています」と藤山さんは話してくれました。
酒造りの歩みとともに刻まれてきた歴史と文化の息吹を重んじながらも、変わりゆく時代と嗜好、ニーズの変化にも柔軟に対応。地の米・地の水、そして地の人が工夫を凝らして造りあげる「七賢」は、本当の地酒といえるのではないでしょうか。
酒蔵「山梨銘醸」は、山梨県に居住する者として、お酒を愛する友人に胸を張って紹介したい場所です。地元の名峰”甲斐駒ケ岳”の水に惚れ込み、自然と共に歩み続ける酒造りのスタンス、醸造されるお酒の味、そして酒蔵の周りの山並みや空気…。ここにしかない、そのどれもがこの先も守り続けられていくことを願います。
施設情報はこちら
施設名
山梨銘醸株式会社「七賢」
住所
山梨県北杜市白州町台ヶ原2283
電話番号
0551-35-2236
営業時間
「酒処大中屋」 9:00〜17:00 (試飲は16:30まで) ※ほか、施設内見学の詳細は公式サイトを確認
公式サイト
https://www.sake-shichiken.co.jp
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
中部支部 コピーライター
小栗 詩織
岐阜県出身、山梨県甲府市在住。フリーランスのコピーライターです。お酒と山登りと海と温泉が好き。フルマラソン完走4回(自己ベスト4時間16分)。一児の母。