奈良県

古都にそびえ立つピラミッド、史跡「頭塔」

2022.09.07

日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介するコーナー。今回は、ふるさとLOVERS公式Instagram「旅写真コンテスト」にご応募くださった笠井忠さん(@tadashi_kasai)の100年先に残したいもの、奈良県奈良市にある「頭塔」をご紹介します。

誰かに教えたい旅写真コンテストとは?

誰かに教えたい旅写真コンテストの詳細はこちら
誰かに教えたい旅写真コンテストの詳細はこちら

「大切な人に教えたい」「100年先にまで残したい」。地元や旅先で見つけたとっておきの写真を、Instagram・Twitterでハッシュタグ「#ふるさとLOVERS」をつけて投稿してみませんか。「ふるさとLOVERS」では、「誰かに教えたい旅写真コンテスト」を主宰しています。投稿写真の中から選考の上、「ふるさとLOVERS賞」受賞者には賞品をプレゼント!ぜひご応募ください。

歴史ある社寺や世界遺産が点在する古都・奈良

日本の文化の源流であると同時に、東西の文化が交わる古都・奈良。その歴史は、およそ1300年。観光地としても人気の東大寺や春日大社、興福寺といった世界遺産がある奈良公園の近くに「奈良のピラミッド」と呼ばれる史跡があることをご存知でしょうか。

東大寺の南大門から南へ歩いておよそ15分。奈良市高畑町の住宅街に、突如現れるピラミッドのような史跡、それが頭塔(ずとう)です。誰が、何のために?とは思わずにいられない姿、そして響き。周辺の観光地とは違う、異国情緒ある佇まいに思わず目を見張ります。     
     
2021年に隣接するホテルが解体されたことにより、その不思議な全容が見えるようになりました。階段状の頭塔は一辺32m、高さ10mのピラミッド形をしており、あたかも立体の曼荼羅(まんだら)のように多数の浮彫石仏が配されています。

笠井忠(@tadashi_kasai)さんの投稿
笠井忠(@tadashi_kasai)さんの投稿

今回、そんな頭塔を「100年先に残したい」と、ふるさとLOVERS公式Instagram「旅写真コンテスト」に応募してくれたのは笠井忠(@tadashi_kasai)さん。「奈良市の住宅地にそびえたつ階段状の土塔は、100年先にも残したい貴重な奈良の史跡です」と話します。ふるさとLOVERS地域ナビゲーター仲底が実際に取材してきました!

まずは地元住民でつくった「史跡頭塔保存顕彰会」を訪れて

まず、頭塔を見学するには、事前予約が必要です。頭塔の入り口から歩いて3分のところにある仲村表具店でひと声を。「史跡頭塔保存顕彰会」の看板が目印です。協力金を支払い、鍵を開けてもらいましょう。

案内してくれたのは、仲村由美子さん。もともと保存顕彰会の理事を務めていた先代の夫・忠司さんの遺志を引き継ぎ、現地管理を務めています。忠司さんは腕のいい表具師さんで、歴史を刻んだものへの憧憬があり、頭塔のガイドのほか見学用デッキの保全にも関わっていたようです。由美子さんは長らく家業を支えてこられました。

奈良時代に築かれた、まちなかの土塔へ   

落ち着いた町並みに馴染んでいますが、こちらが頭塔の入り口です。「扉が開いていると、どこからか野生の鹿が入って来るんで」とは、なんとも奈良らしいお話。旧市街である、奈良町近くで生まれ育った由美子さんは「ここはもともと木々に囲まれたこんもりした山で、子どもの遊び場だったんですよ。それがはるばる海外からも見学する人が訪れる場所になってうれしいです」と、笑顔で語ります。

思わず手を合わせたくなる石仏の数々

写真提供/奈良県
写真提供/奈良県

石段を上ると、木の茂みがあり、見学路でぐるっと一周できるようになっています。奇数段に石仏のある七段の塔の全体像は、確かにピラミッド。よく見ると、石仏がこちらを向いて並んでいます。

写真提供/奈良県
写真提供/奈良県

1986年から12年もの発掘調査により、石仏28基が確認されており、奈良時代後期の石仏として美術史上においても貴重なものだとわかりました。石仏の表面には、浮き彫りや線彫りで仏菩薩が表されており、うち22基は国重要文化財に。石仏のうち1基は大和郡山城の石垣に使われています。

これほどたくさんの石仏を一気に見ることははじめてで、それだけでありがたい気分に。思わず手を合わせたくなる雰囲気です。各石仏には瓦屋根がありますが、こちらは雨風から石仏を守るために復元の際につけられたものだとか。

資料によると、神護景雲元(767)年に東大寺の僧・実忠が土塔を築いたとの記録があり、その役割は、大寺院の五重塔などと同じような仏塔であったと考えられています。実忠は「お水取り」の名で知られる修二会(しゅにえ)の創始者であり、東大寺別当の良弁の命により造った塔であるとされています。天平感宝(746)年に権勢を振るった僧・玄昉(げんぼう)の首塚との伝説もあり、「頭塔」の由来とされていましたが、実際には土塔(どとう)がなまって頭塔(ずとう)と呼ばれるようになったようです。

史跡頭塔から望む、奈良市街の風景

かつて雑木林で埋もれていた場所は、2000年に整備され、北半分を当時のように復元し、南半分は「頭塔の森」としてそのままの姿を残しています。見学路の道中、ベンチがあるのでゆっくりとその姿を眺めながら古代ロマンに浸るのもおすすめです     
     
史跡頭塔と共に心に刻みたいのが、大和盆地が広がるこの風景。平城京があった1300年の昔も、ここから都を見下ろせたのでしょう。東大寺からちょうど南に位置する頭塔の高さは「東大寺の大仏さんぐらい 」と聞き、どんな思いで石を積み上げていたのだろうと知りたくなりました。後世に残したいという意志があって、今にある頭塔。悠久の時を感じる場所として、未来につなげたいものです。

施設情報はこちら

施設名
国史跡 頭塔(ずとう)

住所 奈良市高畑町921番地

現地管理人電話番号 0742-26-3171(仲村)
前日までに現地管理人に予約して見学を。※個人宅のため、必ずしもご希望の日時に見学できるとは限りません。また、不在により予約電話が取れないこともあるため、見学希望日時が決まり次第、早めに予約を
 
※年2回の特別公開の時期(春:ゴールデンウィーク、秋:正倉院展の会期中)は、予約なしで見学可能

協力金 1人300円(10名以上の団体は200円)

地域ナビゲーター

仲底 まゆみ

近畿支部 地域ナビゲーター
仲底 まゆみ

大阪生まれ、京都・奈良育ち。古いものと新しいものが混在するまちや、路地裏を歩くのが好き。取材を通して、地域の魅力を引き出すことが目標です。大阪市在住。