静岡県沼津市

ディープな魅力満載の沼津港深海水族館

2021.10.25

日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介するコーナー。今回は、中部ナビゲーター・いちぼし堂 山口 敦子さんご自身の「100年先に残したいもの」をご紹介します。静岡県沼津市の中から推薦するのは、深海を象徴する「沼津港深海水族館ーシーラカンスミュージアムー」です。

グルメだけじゃもったいない!沼津港の新名所 深海水族館

静岡県東部に位置する沼津市の沼津港は、豊富な水揚げ量を誇り、捕れたての新鮮な魚介をひものや海鮮丼、浜焼きなどでバリエーション豊かに味わうことができる観光グルメスポットです。海の幸を堪能して、お土産に海産物を買うのが定番の楽しみ方ですが、それだけで帰ってしまうのはもったいない!深海湾に面した沼津港だから実現できる、世界的にみても珍しい深海に特化した水族館があるんです。

それが、沼津港深海水族館。水槽や展示物を眺めていると、私たちが生活している地上からは見ることができない海の深いところに、こんなに不思議で魅力的な生き物たちがたくさんいるんだ、とワクワクします。静岡県にいながら深海を身近に感じることができる希少な場所、沼津港深海水族館を「100年先に残したいもの」としてご紹介いたします。

こんにちは!ふるさとLOVERS静岡支部ナビゲーターの山口 敦子です。沼津港深海水族館は、バラエティに富んだ深海生物を間近で見ることができる水族館です。特に貴重なシーラカンスの剥製や冷凍標本が5体も展示されているのは、世界でもここだけなんです。

深海生物についての資料や映像が豊富で博物館要素が強く、見応えたっぷり。暗がりに浮かび上がるコズミックブルーの照明やゴツゴツとした岩肌など、深海の世界観を存分に味わえるように、没入感にこだわったつくりになっています。

今回詳しくお話を伺ったのは、沼津港深海水族館 館長の佐藤慎一郎さん。沼津港で100年以上水産業を営んできた佐政水産株式会社の四代目でもあり、この水族館を含む「港八十三番地」をつくった方です。「港八十三番地」は、こだわりの飲食店が立ち並び、イベントやマルシェを開催して人々の交流が生まれるようにつくられた施設。ここに沼津港の恵まれた立地条件を生かして作られたのが、沼津港深海水族館なのです。

キャッチコピーは「深海は見えないから面白い」

深海は見えないから面白い。これは、沼津港深海水族館のキャッチコピーです。水の惑星とよばれる地球。その表面の7割は海で、さらにその98パーセントが深海です。海は200メートルより深くなると太陽の光が届かず、暗く水温が冷たく水圧も高くなり、生き物にとって過酷な環境になります。そのほとんどがベールに包まれ、肉眼で捉えることも、そこへたどり着くこともできない未知の世界なのです。なんだかワクワクしてきますね!

貴重なシーラカンスの剥製と冷凍標本

1階が深海生物の展示、2階がシーラカンス中心の展示に分かれています。目玉は、なんといってもシーラカンス。剥製3体と冷凍標本2体が展示されています。シーラカンスの冷凍標本は、じっと見ていると今にも動き出しそうな迫力があり、こちらが食べられてしまいそうなぐらいの緊張感!

5体は、日本の学術調査隊が南アフリカで捕獲して持ち帰ったもの。そのうち2体は、マイナス20℃の特殊な冷凍展示庫で管理されています。ワシントン条約で商業取引が厳しく規制されている今では、シーラカンスは誰も手に入れることができない貴重な存在なのです。

ところで、シーラカンスは食べられると思いますか?実は脂が強く味がしないので、南アフリカの地元漁師も「食えない魚」と呼び、食用にはされていなかったようです。試食した魚類学者も「歯ブラシを食べているようだ」と言ったほど。シーラカンスの味はさておき、「深海魚は冷たい場所でじーっとしているので、脂がのっていて美味しいんですよ」と佐藤さんが教えてくれました。

私のおすすめは「透明骨格標本」。本来は骨の配置や関節の様子を解剖せず観察するために開発された標本の保存方法で、筋肉を透明化し、硬い骨は赤く、やわらかい骨は青く染めた、水族館スタッフのオリジナル作品なんだとか。さまざまな生き物たちの体の特徴がよくわかり、色鮮やかに染色された規則性のある骨や節の構造は、まるで芸術作品のような美しさです。

手探りの飼育と日々の試行錯誤

「『深海生物の宝庫』と呼ばれる駿河湾では、新種や名前がまだない生き物が水揚げされることも多いのですよ」と佐藤さん。船上で選別された深海生物は、水族館に持ち帰るためにすばやく専用容器に収容されます。深海生物が苦手な太陽の光にさらされる時間を極力短くし、ストレスをかけないため、迅速丁寧な対応が求められます。

深海生物の飼育管理に関する情報が少なく前例もない中で、スタッフの方たちは日々試行錯誤しながら、生き物たちにとっての最適な環境を維持しているのです。

深海魚のアピールで地域ブランドの差別化に挑む

以前は地元の人にさえ見向きもされなかった深海魚ですが、「味はおいしく観賞用としても価値が高い。沼津港のブランドになるのではないか」と考えた佐藤さんは、地元に埋もれた地域資源を活かすため、深海に特化した水族館を作り、全面的に「深海魚」をアピールしていきました。

ダイオウグソクムシやメンダコなど、そのユニークな姿や生態がメディアに注目された効果もあり、来館者は急増。深海を身近に感じ、海や環境保護について興味を持ってくれる人が増えていることがうれしいと佐藤さんはいいます。

次世代に残すためにつくられた「港八十三番地」

佐政水産は沼津港で100年以上にわたり水産業を営んできました。幼いころから市場に出入りし、港に親しんできたという佐藤さんですが、四代目に就任した時は、沼津港も例にもれず、全国的に見られる水揚げ量の低下や漁師の後継者不足による水産業の衰退、港の人口減少というさまざまな問題を抱えていました。そこで、沼津港の雇用を増やすため、地元に愛される施設をめざして港八十三番地をつくりました。個性豊かな飲食店、深海シューティングゲームアトラクション、深海生物のかわいらしいグッズなど、ここでしか楽しめないものがたくさんあり、休日には多くの人で賑わいます。

100年後のために、今できることを

次々と新しいチャレンジを重ねる佐藤さんですが、ものごとが順調にすすまないことも少なからずあったそうです。そのたびに「ここでやめてしまっては今までと何も変わらない。100年後のために今できることをやるしかない」という思いが原動力となり、前にすすむことができたといいます。

今後も、世界から注目を集める駿河湾では、海底の探査や撮影の技術向上により、深海の未知なる部分が次々と解明されていくことでしょう。深海は私たち人間が身一つでたどり着くことはできない世界。だからこそ、沼津港深海水族館は深海の世界観を存分に楽しめる希少な場所なのです。100年先も人々のロマンと好奇心を搔き立てる唯一無二の場所として存在していくことを願っています。

施設情報はこちら

施設名
沼津港深海水族館シーラカンス・ミュージアム

住所
静岡県沼津市千本港町83番地

電話番号
055-954-0606

営業時間
10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで

休館日
年中無休(1月メンテナンス休業あり)

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

地域ナビゲーター

山口 敦子

静岡支部 地域ナビゲーター
山口 敦子

静岡県静岡市在住。好きなことは自然散策、間取り図を眺めること。現在は、「いちぼし堂」でリモートワーク(月に数回出社)実践中。子どもの頃夢中になった宝探しのような視点で、取材先の隠れた魅力を発掘して伝えていきます。