
山梨県富士河口湖町
2020.10.01
この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。
今回登場いただくのは、果樹生産が盛んな「かつらぎ町」でふるさと納税品を管理する「NPO法人かつらぎフルーツ王国振興公社」です。
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一つである丹生都比売(にうつひめ)神社が鎮座し、年間を通じてさまざまな果物が収穫されることから、“世界遺産とフルーツの町”と称される和歌山県伊都郡かつらぎ町。
この町の北部、標高300〜500mの山麓に位置する東谷・平・滝・広口の4つの村から成る四郷(しごう)地区は、正月飾りの縁起物である「串柿(くしがき)」の特産地として有名です。毎年11月初旬から中旬にかけて、見事な琥珀色をした串柿のカーテンが里山一面を覆い尽くします。
約400年前に、豊臣秀吉が正月のお供え物としたことを起源とし、幸せを願った伝統的な串柿や、かつらぎ町の柿が購入できる立ち寄りスポットなどを地元の人々に教えていただきました。
関西の鏡餅には、餅とミカン科の橙(だいだい)だけでなく、串柿も添えられます。これは、戦国武将の豊臣秀吉が、戦の前日に酒盛りで串柿を食べたところ、翌日の体調が良かったことから串柿をお供え物として扱ったことに由来。餅を鏡に、橙をマガ玉に、串柿を剱になぞらえ三種の神器を表しているといわれています。
また、長寿の木である柿は「嘉来(喜び幸せが来る)」の語呂合わせにより、古くから縁起物と考えられています。
そんな串柿は、丁寧な手仕事のもと生産されています。柿の皮を剥いて10個ずつ竹串に通し、10串ずつ紐でまとめ、家の軒先や柿屋と呼ばれる風通しのよい干し場に吊るし自然乾燥させます。その後、プレス機で平らにし、数日おきに天日干しとプレスを繰り返して、柿の色が濃くなり表面に糖の結晶ができたら完成です。
今回お話を伺ったのは、かつらぎフルーツ王国振興公社と連携している「かつらぎ町役場 産業観光課 商工観光係」の山本亜紀子さん。
串柿の里が一望できる絶景スポットについて伺ったところ、「いくつかあるのですが、なかでも平(たいら)というエリアは、観光者向けに普通車やバスの駐車スペースがあるのでおすすめです。また、東谷にある神野(こうの)集落はトレッキングでしか入れないのですが、茅葺き屋根の原風景をバックに一面の串柿を眺めることができてすてきですよ」と教えてくれました。
10個の柿が並んだ串柿をよく見ると、両端に2個ずつと、中央に6個の柿が並ぶように整えられます。そこには「いつもニコニコ(2個2個)仲むつ(中6つ)まじく、共に白髪(糖の結晶の白い粉)の生えるまで」といった家内安全と健康祈願が込められているといわれています。
「最近は核家族向けに5個串もつくられています。両端に1個ずつと、中央に3個並べる数合わせから『一人一人(1個1個)が皆(3個)幸せに』との願いが込められています」と山本さんは話します。
これだけ柿にまつわる話を聞くと、かつらぎ町の瑞々しい柿や干し柿が食べたくなりますよね。そこで、立ち寄りスポットとして紹介したいのが「道の駅 くしがきの里」です。2017年に開通した大阪府と和歌山県を繋ぐ国道480号のトンネル近くにオープンした施設で、串柿を見ることができる平から車で約10分の場所にあります。
かつらぎ町をはじめとする和歌山県産の旬の果物や野菜、加工品などが販売されており、レストランやパン工房も併設しています。串柿をイメージした折り紙が施設内にずらりと飾られているのも見どころです。
「季節に合わせて、ひらたねなし柿やあんぽ柿など、さまざまな種類の柿が売られています。ふるさと納税でも多数の柿を取り扱っているので、遠方の方はふるさと納税ポータルサイト『ふるぽ』もぜひチェックしてみてください」と山本さん。晩秋の風物詩として琥珀色の眺望がいつまでも楽しめるように、お正月には串柿付きの鏡餅を、『ふるぽ』ではかつらぎ町の柿を買い、日本の文化を堪能しつつ地域を応援するのもいいかもしれませんね。
<今回の旅スポット>
道の駅 くしがきの里
和歌山県伊都郡かつらぎ町滝53-1
物産販売施設|平日 9:00~17:00、土・日曜・祝日 9:00~18:00
レストラン |11:00~17:00(14:00~17:00はカフェタイムのみ、L.O.は30分前)
パン工房 |9:00~15:00
※物産販売施設とレストランは月2回水曜、パン工房は毎週水曜休業
0736-25-0088
※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。
近畿支部 ゲストハウスを旅する編集者
前田 有佳利
全国200軒以上のゲストハウスを旅する編集者。WEB「ゲストハウス情報マガジンFootPrints」代表。書籍『ゲストハウスガイド100 -Japan Hostel & Guesthouse Guide-』著者。和歌山市在住。理想の商店街をつくる2日間のマーケットイベント「Arcade」や「和歌山移住計画」のメンバー。