兵庫県豊岡市

まち全体で旅人をもてなす城崎温泉

2021.03.21

この記事では、日本各地のナビゲーターが、その土地に暮らす人たち(ふるさとLOVERS)からお聞きした「100年先に残したいもの」をご紹介します。
今回スポットをご紹介頂いたのは、城崎温泉を含む兵庫県豊岡市の活性化に取り組む「一般社団法人豊岡観光イノベーション」の 谷垣千恵さんです。

レトロな木造建築が軒を連ねる人気の湯のまち

絵になる温泉街、写真映えする温泉街として人気の城崎温泉。温泉街の中心を流れる大谿川(おおたにがわ)には錦の鯉がゆったりと泳ぎ、長い柳の枝が川面にくっきりと映っています。護岸には玄武岩がびっしりと積まれ、川の両側に昭和初期の木造建築が立ち並びます。

「どこを切り取っても本当に絵になるんです。町並みを歩くたびにいろんな発見をする湯のまちですね」。約100年前の震災から復興を遂げ、浴客に愛されるこの町並みをさらに「100年先にも残したい」。城崎温泉を含む兵庫県豊岡市の活性化に取り組む「一般社団法人豊岡観光イノベーション」の谷垣千恵さんは言います。浴衣に着替えてまちを歩いてみると、城崎温泉ならではの魅力が早速見つかりました。

歩いてめぐる外湯の楽しみ

城崎を訪れる人の多くは、宿に着いても、客室にこもって休むことをしません。荷解きも早々に、まずは「外湯(そとゆ)めぐり」を楽しむのです。外湯とは、旅館の中にある「内湯」に対して、外にある日帰りの共同浴場のことを指します。高僧による開湯から1300年の歴史を歩み、湯治場(温泉療養のために客が長期滞在する温泉地)として栄えてきた城崎温泉には7つの外湯があります。

城崎温泉駅前の「城崎温泉観光センター」に立ち寄って話を聞くと、4つの泉源から湧いた温泉水をすべての浴場に配湯しているとのこと。実は外湯の効能や泉質に違いはありません。では、なぜ複数の外湯をめぐるのかといえば、洞窟風呂や展望露天風呂などの、趣が異なる浴場を体験できるから。さらに、それぞれの外湯に“ご利益”ともいうべきテーマがあるから。たとえば、地蔵湯は「家内安全・水子供養」、一の湯は「合格祈願・交通安全」といった具合。1日入浴券を使って完全制覇する人もいれば、お目当ての外湯でゆっくり癒される人もいて、楽しみ方はまちまちです。

街歩きガイドも務める、観光センター・井瀬邦夫事務局長のおすすめは、2020年11月にリニューアルオープンした御所(ごしょ)の湯です。その名前は、南北朝時代の歴史物語に、天皇の姉が入湯されたという記述があることに由来します。全面露天に生まれ変わった庭園風呂には、自生種の桜をはじめ但馬の山を思わせる草木が配置され、花見、紅葉狩り、そして雪見と四季を通じて雅やかな入浴時間が過ごせます。

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施設名

御所の湯

住所

兵庫県豊岡市城崎町湯島448

電話番号

0796-32-2230

営業時間

7:00~23:00

休業日

木曜

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

但馬・豊岡の食材をスイーツでいただく

さて、入浴時間が長引いてのぼせてしまった人に朗報です。城崎では温泉街のあちこちで湯上がりの休憩に最適な場所を見つけることができます。御所の湯の目の前にも「城崎ジェラート」の文字が踊っています。ここは、地元に根ざしたスイーツ専門店「城崎スイーツ」の本店で、手作りジェラートをはじめ、もちもちの本わらびもちや焼き菓子を使ったパフェがいただけます。

スイーツの原材料には地元の恵みを厳選しています。焼き菓子に使用する米粉は、農薬や化学肥料に頼らずに栽培された但馬産の「コウノトリ育むお米」。人気の米粉バウムクーヘンはしっとりと優しい味わいです。

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施設名

城崎スイーツ本店

住所

兵庫県豊岡市城崎町湯島527

電話番号

0796-32-4040

営業時間

9:40~17:40

休業日

水曜

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

日本海の絶景とスペシャルティコーヒー

絶景とカフェタイムを堪能するなら、城崎温泉ロープウェイ山頂駅内にある「城崎温泉みはらしテラスカフェ」がおすすめです。ここでは、自家焙煎のスペシャルティコーヒーを提供しています。

ガラス張りの店内から温泉街をふかんすると、城崎の圧倒的な美しさが見えてきます。温泉街の全景にとどまらず、雄大な円山川から日本海までを見渡すことができるこの場所は特別です。上品な味わいの「みはらしテラスブレンド」を口に含み、鼻に抜ける香りを感じながら、絶景を心に焼き付けましょう。

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施設名

城崎珈琲みはらしテラスカフェ

住所

兵庫県豊岡市城崎町湯島806-1 ロープウェイ山頂

電話番号

0796-32-3365

営業時間

10:00~16:00

休業日

第2・第4木曜

 ※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

湯上がりに城崎の地ビールで乾杯

アルコールがお好みなら、「城崎町家地ビールレストランGUBIGABU(グビガブ)」で城崎の地ビールをぐびっと飲むのが至福というもの。温泉街の各所で販売されている城崎の地ビールは、円山川のほとりのビール工房でグビガブが1997年から醸造する麦芽100%の生ビールです。

豊岡・二見の名水を使う地ビールはピルスナー、スタウト、ヴァイツェン、カニ料理に合うカニビールの4種類。グビガブでは4種の飲み比べはもちろん、自家製の燻製おつまみから、フルーティなヴァイツェンを混ぜ込んだパンケーキ、但馬牛のカレーまでいただけて、湯上がりの楽しみの幅がぐんと広がります。

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施設名

城崎町家地ビールレストランGUBIGABU

住所

兵庫県豊岡市城崎町湯島646

電話番号

0796-32-4545

営業時間

11:30~22:00(L.O.21:30)

休業日

木曜、第3水曜

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

麦わらでカラフルな伝統工芸を体験する

温泉街を大谿川に沿って散策すると、メインストリートから一歩入った裏道に、風情あふれる白壁づくりの土蔵が見えてきます。大正14年(1925年)の北但大震災による大火で燃え残った数少ないこの建物は、現在「城崎麦わら細工伝承館」として活用されています。

日本で唯一城崎温泉に伝わる麦わら細工は、染色した天然のハダカムギのわらを広げて平らにし、色紙に張ったり桐箱に張ったりして美しい装飾を生み出す伝統工芸品です。伝承館では数百点に及ぶ作品を鑑賞できるだけでなく、しおりやうちわなどの小物にカラフルな麦わらを張る製作体験もでき、人気を集めています。

江戸時代から伝わる高い技術を継承する職人の1人、神谷俊彰(かみやとしあき)さんに工程を見せていただきました。神谷さんは色鮮やかな麦わらを巧みに組み合わせて、緻密な幾何学模様(小筋張り)を作る名手です。極細の紙テープのように見える色とりどりの1本1本が、開き伸ばしたわらを割いたもの。これをカミソリでカットし、飯粒をヘラでつぶしたのりで直接桐箱に張ったり、和紙に張ってリボン状にしてから桐箱に張ったりします。

写真の赤色のように、同じ色のわらでも張る方向によってまったく別の色に見えて模様が立体的に浮かび上がってくるので不思議です。
城崎麦わら細工伝承館では、あらかじめ用意された麦わらのパーツを使って製作体験ができ、所要時間は15分から30分。精緻な技に魅了され、もう1歩踏み込んで麦わらと格闘してみたい人は「かみや民藝店」での細工体験もおすすめです。

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施設名

城崎麦わら細工伝承館

住所

豊岡市城崎町湯島376番地の1

電話番号

0796-32-0515

営業時間

10:00~16:00 ※入館は閉館の30分前まで

休業日

水曜(祝日の場合は翌日)、年末年始

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

老舗旅館「山本屋」をそぞろ歩きの拠点に

温泉街を歩き、外湯に浸かり、店をのぞき、おいしいものをつまみ食いして、伝統工芸を体験していたら、すぐに時間が足りなくなってしまいます。「ほかの温泉地に比べたら、城崎は宿の滞在時間がだいぶ短いかも」と話すのは、温泉街のちょうど真ん中で350年続く老舗旅館「山本屋」の高宮浩之社長です。

大谿川に面し、「柳湯」と「一の湯」という2つの外湯にはさまれた山本屋は、城崎の外湯めぐりとそぞろ歩きの拠点としてぴったり。だから、積極的に旅館から出て街全体を楽しんでほしいといいます。
とはいえ、もちろん山本屋は老舗らしい上質な旅館です。夕食は地元但馬の優れた食材にこだわった日本食のフルコース。快適な内湯や城崎の地ビールがいただけるバー、茶室もあって、清潔な純和風の客室は申し分のない居心地を提供します。

特別室からは緑あふれる庭が、本館の客室からは柳通りが見え、土壁と障子に囲まれてくつろげる宿です。それでも、色浴衣のレンタルや着付けの手伝いまでして、客を快く外に送り出すのが城崎のもてなしの心。背景には、この街を毎日歩く地元の人が城崎温泉の美しさを誰よりも知っているという事実があります。

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施設名

城崎温泉 山本屋

住所

兵庫県豊岡市城崎町湯島643

電話番号

0796-32-2114

営業時間

チェックイン15時~18時、チェックアウト10時

休業日

不定休

※施設に属する情報に関しましては、予告なく変更となる可能性がございます。ご訪問の際は各施設のホームページ等で最新の情報をご確認いただきますようお願いいたします。

 

柳の下を歩き、ときには花火を見上げ、ときには雪を踏みしめ、店の人や地元の入浴客と言葉を交わすなにげない時間にこそ、旅のおもしろみが詰まっています。出かけるたびに新しい体験ができるから、何度も足を運びたくなるのです。

地域ナビゲーター

堀 まどか

近畿支部 翻訳・通訳案内士
堀 まどか

兵庫県生まれ、在住。阪神間の街と海と山の近さがお気に入り。通訳案内士(英語ガイド)として、また、地域と観光を切り口にしたフォトライターとして西日本のおもしろさを伝えています。好奇心さえあれば、地域の魅力をまだまだ発見できるはず。